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2020.7.11

新しい領域へのGiveをスタートすること

小山龍介(りゅうすけ)氏の心に響く言葉より…

これまでの領域から離れて、新しい領域で事業を開始するには、当初、かなりの投資が必要になります。

投資はお金というだけでなく、時間というもっとも貴重な資源の投資が絡みます。

人生の時間は有限であり、一刻も無駄にできません。

お金以上に、そうした時間投資を最小化するための方法がリーンスタートアップでした。

投資というのは、もちろんリターンを期待して行うものなので、投資をするにあたって「儲かるかどうか」「報われるかどうか」が、投資の判断基準になるかと思います。

確率は低いけれども大きなリターンが期待できるからと、ベンチャー事業に投資する人たちもいます。

しかし、問題は「いつ」このリターンを得らえるような投資をするのか、ということです。

このリターンを短期的なものに設定すればするほど、すぐに結果が出ることばかりをやることになるので、領域の広がりは限られてしまいます。

事業の射程がどんどん短くなっていくのです。

将来に向けて大きく発展する事業をやっていきたいと思えば、遠くのターゲットに向けた射程の長い、できるだけ遠い未来にリターンが戻ってくる投資をするべきです。

じっくり時間をかけて取り組む事業です。

時間がかかる事業であればあるほど、他人からキャッチアップされることも難しく、それだけ競争優位が働くともいえます。

別の言い方をすれば、たくさんの時間を投じたあとに、ようやく自分の利益を得ようという考え方です。

この意味で長期的な投資というのは、本質的に贈与性を帯びています。

すぐに利益を期待していないからです。

企業のR&Dも同様です。

既存事業の収益を、企業の未来、社会の未来に向けて贈与している。

そんなふうに考えることもできます。

よく、さきにTakeを考えるのではなく、GiveしたあとにTakeする「Give&Take」という話がありますが、これは贈与の原則を語っているものです。

そしてこれは長期的な人生の投資も同様なのです。

こうした贈与を、昔は自分の所属している企業に対して行っていました。

人生の時間をGiveすることによって終身雇用というTakeがある。

その関係が成り立っているときにはよかったのですが、あのトヨタ自動車でさえ終身雇用制度は難しいと言っているときに、Giveの対象は所属企業だけでよいとは言えなくなってきました。

そんな時代においては、新しい領域へのGiveをスタートすることが重要です。

これは早ければ早いほどいい。

それだけ時間というリソースを長い間、投資できるからです。

『在宅HACKS!―自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方』東洋経済新報社


小山氏は本書の中で、『“場”とGiveの関係』についてこう語っている。


『場の研究所の清水博先生は長年、場を研究されていく中で、その根本原理に与贈循環があると指摘されています。

与贈というのは、贈与をひっくり返した言葉で、贈与の中でも匿名での見返りを求めないものを言います。

この与贈が自分のいる《場》に対して行われると、その《場》が豊かになっていきます。

《場》が豊かになっていくと今度は、その《場》から自分への与贈が居場所というかたちで返ってきます。

循環が起こっているのです。

たとえば、家族のためにケーキを買って帰るとします。

そうすると家族との関係もよくなり、家庭という《場》が豊かになります。

そうすると、自分の居場所もできる。

与贈は居場所づくりの方法なのです。

在宅勤務になると、実はこの居場所づくりを意識的にやる必要が出てきます。

これまでは会社という、自動的に与えられた居場所がありました。

しかし、物理的にその場所から離れたときに、人は会社に居場所があるという実感を失います。

そのことが、やがてメンタルにも響いてくるのです。

今まで意識してこなかった、居場所を作るための取り組みが必要になるのです。

その居場所は、会社の中にとどまりません。

むしろ、会社という小さな枠組みにとらわれることなく、最終的には地球全体が私の居場所と思えるくらいのスケールで、世界と向き合うことも可能です。

そういう視野で活躍する人は、ものすごく大胆なプロジェクトを成し遂げていくでしょう。

在宅勤務は、会社という小さな居場所を失う働き方です。

しかしそのことによって、世界という大きな居場所を獲得する機会を与えてくれる働き方でもあるのです。』

R&D(研究開発)の、「R」は“Research”(研究)、「D」は“Development”(開発)を意味している。

長期の研究開発も、ここでいうGiveということになる。

短期のリターンを期待しないからだ。

年齢を重ねれば重ねるほど、自分の「場」がどれだけ(いくつ)あるかが大事になってくる。

もし、会社しか自分の「場」がないとすると、定年退職してからの人生は暗い。

GiveなしにTakeだけを求めようとする人は、自分の「場」をつくることはできない。

場づくりへの、時間と労力はすべて持ち出しとなるからだ。

その手間をかけることが嫌な人は、「場」づくりはできない。

長期の研究開発と同じで、どれだけ長期にわたって見返りを求めず、Giveし続けたか。

そして常に、新しい領域へのGiveをスタートすること。

自分の「場」という世界を広げたい。



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