2020.7.6 |
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システムには「モチベーション」がない |
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筑波大学准教授、落合陽一氏の心に響く言葉より…
2020年は、私たちの「働き方」について大きな変革を迫られる年になりました。
年初から世界中で猛威をふるった新型コロナウィルスの感染拡大により、多くの企業でリモートワークが実施されました。
そんな中でテレプレゼンステクノロジーの進化により、「どこにいても仕事ができる」ことを実感した方も多いと思います。
新型コロナによる影響は、このような観点から見ると、ヒトとヒトとの「非接触型インターフェース」の浸透を社会に促したといえるでしょう。
また、リモートワークによって使える人的・時間的リソースが限られる中で、「やるべき仕事」が自ずと抽出されてきた面もあります。
無駄な会議、出なくてもいいミーティングは排除され、ビジネスチャットやビデオ会議で課題を共有するなど、テクノロジーで解決できることはそれに任せることが増えてきました。
ジョブディスクリプション(職務内容を詳しく記述した文書)を明確にする必要性を痛感した人も多いのではないでしょうか。
また人材についても同様で、リモートワークのみで済む人材への代替えも検討されてきています。
「人間がやるべきことは何か」…コンピュータやインターネット、AIが進化した今、私たちはこの命題に直面しています。
人の物理接触がデジタルに置き換えられるポストコロナもしくはウィズコロナの世界では、それがいっそう問われることになります。
いまの大学生の親世代が子どもだったときの日本は、真面目に努力していればそれなりに幸福になれる社会でした。
いい学校を出ていい会社に入れば定年まで安定した生活が約束され、定年後も十分な年金をもらうことができたのが、戦後の日本です。
むしろ、その世代の均一性がいまの乗り遅れた日本を作ったとも言えるのです。
なぜなら、コンピュータとインターネットがその社会を大きく変えたからです。
そのとき、インターネットという価値観を理解するのに時間がかかった。
それは大企業のホワイトカラーになれば何となく幸せな人生を送れるような世界ではありません。
そういう世界で幸福感を得るにはどんな生き方をすればよいのか。
それはいまの社会で共有することが難しくなっている。
システムには「モチベーション」がありません。
そこが人間との大きな違いです。
だから、モチベーションのない人間は発達したコンピュータにいつか飲み込まれてしまう。
逆に、「これがやりたい」というモチベーションのある人間は、コンピュータが手助けしてくれます。
「これが好きだ」「この問題を解決したい」という強烈な好奇心が、その人の専門性の源泉になります。
そういうモチベーションがないかぎり、掘り下げるべき専門性は身につきません。
『働き方5.0〜これからの世界をつくる仲間たちへ〜(小学館新書)』
落合氏は「素人のように考え、玄人として実行する」という言葉を紹介している。
『いちばん留意しないといけないのは、素人の心を失わないままに玄人になることです。
それを考えながらキャリアを進めていく必要があると思います。
本気で長く続けること、好奇心とテンションを高めに設定し続けること、要領よく子どもであること。
素人思考を保つためになるべくまっさらな気持ちでモノに向き合えると良いと、思っています。』
このコロナ禍で脚光をあびたウーバーイーツだが、落合氏は「機械に仕事を奪われるどころか、すでに人間がシステムに組み込まれた状態になっている」と指摘する。
『ほとんどの仕事はサーバー上で自動的になされて、品物を届けるところだけ人間が請け負う。
見方によっては機械が人間を道具として使っていると考えることもできます。』
『その一方で、機械では代替えされにくく、付加価値の高い能力を持つ人材もますます強く求められるようになっています。
そういう人材を「クリエイティブ・クラス」と呼びました。
これはもともと米国の社会学者リチャード・フロリダの造語で、創造的な専門性を持つ知的労働者のことです。』
『「天才」は何かひとつのことに対してスペシャルな才能を持っています。
「なんでもこなせる天才」はほとんどいません。
「秀才」は「処理能力の高いホワイトカラー」です。大企業が大量に必要とする人材でした。
なんでもこなせるジェネラリストです。
しかし、今求められているのは「変態性」です。
レンジをある程度広くとった「変態性」が重要です。
たとえば「天才建築家」の職種は建築士に限定されますが、「建物好きの変態」は建築士になれるだけでなく、建築に使う素材や重機などの開発者になれるかもしれませんし、インテリア・コーディネーターや都市計画の専門家になれるかもしれません。
才能という言葉だけでは表しきれない猛烈な執念のようなものが「変態」からはただよってくるのです。』
コンピュータやAIには、「やる気」とか「〇〇をしたい」とか「意欲」等はない。
逆に、それがあったら恐ろしい。
シンギュラリティ(機械が人間の知能を超える)が到来するということだからだ。
つまり、やる気や意欲のない人間(生徒や社員)は、これからは機械に使われる人生を歩むことになるということだ。
コンピュータやAIに指示されて動く人生だ。
だからこそ、これまで以上に、自分の「生き方」や「方向性」が大切になってくる。
自分を、どれだけ高めることができるか、バージョンアップできるかが問われる。
いくつになっても、自分を磨き、高めることができる人でありたい。 |
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