2020.6.24 |
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進行中の未来の姿 |
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ケヴィン・ケリー氏の心に響く言葉より…
私はかつてヒッピーでした。
20歳の頃に持っていたテクノロジーといえばカメラと自転車だけでした。
その頃の私は、テクノロジーは人間性を奪うようなものだと思っていたのです。
1980年代初頭になって、とても小さなアップルコンピュータを手に入れました。
旅の本を販売していて、その通信販売ビジネスを始めてみるために購入したのですが、コンピュータ自体にさほど興味はありませんでした。
しかし、情報をプリンターに送るために安いモデムを手に入れて、電話線に繋げた途端、私の前に異なる世界が出現したのです。
オンラインの世界が開かれ始めた頃でした。
そのオンラインコミュニティという未開の地に私は夢中になり、そのとき私は初めてテクノロジーを人間味のあるものだと感じたのです。
人々が電話線でつながったその生態系は、決して大きな工場のようなハードなものではなく、有機的でソフトなものでした。
そのときから、私はテクノロジーに興味を持つようになりました。
AIはとてつもない発明です。
おそらく人間が作り出した中で最も強力な発明品でしょう。
なぜなら人間そのものを変えてしまうからです。
AIによって私たちは変化し、社会も変化します。
科学的な研究から証明されていることですが、4〜5年を費やして読み書きを習得すると、脳内の回路が変化します。
また、ペルーでの研究結果でわかったことがあります。
あるコミュニティの中で同じ環境で生活をしている人に、読み書きを学んでいる人々と読み書きができない人々がいました。
それぞれの脳波を調べてみたら、読み書きを学ぶことで脳が変化していたのです。
人の脳は知性と関わることで変化するのです。
ですから幼少期からAIに関わると…例えばAIが搭載されているテディベアのぬいぐるみと育てば、その子の脳は変わるでしょう。
それは人間以外の種類の知性とともに育つということです。
今私たちの周りにある知性は他の人間の知性のみですが、何百もの他の種類の知性に囲まれて育てば、おのずと人間の考え方も変わります。
私たちの脳は徐々に少しずつ変化していて、世代ごとの知能は高まっているという考え方もあります。
ですから私は、周りにさまざまな種類の知能がある世界で育てば、人間の考え方も確実に変わると思います。
自分をどう思うか、自分の概念も変わります。
これが私たちを待ち構えている大きな変化です。
AIによる人間への影響はそれだけにとどまりません。
神経生物学者のデイヴィッド・イーグルマン(スタンフォード大学准教授)は「感覚置換」と呼ばれるものを発明しました。
イーグルマンは、私たちの脳は自由に変形し、ある感覚を取り除いて新たな感覚を組み込めば、脳が自動的に再構成されることを発見しました。
そこで彼は音を拾えるベストを開発したのです。
その音は人間の皮膚上で増幅されるため、このベストを着れば耳の聞こえない人々は音が聞こえるようになるのです。
彼らは皮膚を通して音を聞くわけです。
彼はそれをブレスレットに変えて、今では耳の聞こえない人々に販売しています。
身につけると、皮膚と接している部分で音が聞こえるようになるわけです。
彼らは実際に皮膚を通してあなたの話を聞けます。
目の見えない人々にも同様の発明品ができました。
また、味覚に関しても同様のことができます。
皮膚を通して味わうという新しい感覚を持ちうるのです。
そしてさらに彼は口に入れることで、舌でものを見られる装置を開発しました。
舌で音を聞くこともできます。
つまり、AIというテクノロジーによって新しい五感が手に入りうるのです。
例えば、赤外線カメラか紫外線カメラを身につけると情報が皮膚に送られ、新しい周波数でものが見える能力を得られるというように。
カエルやヘビのように周囲を見られるようになるのです。
これはある意味、新しい種類の視覚のようなものです。
『AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望 (NHK出版新書)』
本書には4人のAIの巨人の一言メッセージがある。
◆マックス・テグマーク
AGI(汎用人工知能)が誕生したら、私たちの生活は一変するでしょう。
「いつの世になっても機械より人間のほうが上手くできる仕事はなくならない」と言っている人々は、単純に「AGIは実現しない」と信じているにすぎません。
◆ウェンデル・ウォラック
AIは格差を拡大させる可能性があります。
開発の現状を見れば、その可能性は高いと言わざるを得ないでしょう。
そこで大きな問いが生じます。
皆の利益となるようなAIの使い方はないのでしょうか。
あるなら、どういう使い方でしょうか。
◆ダニエル・デネット
AIが自律性を持てば、私たちに隠しごとをするようになるでしょう。
意識を持ったAIが非常に素直で、誠実で、全く裏表のないものになることは期待できません。
◆ケヴィン・ケリー
AIはすでに創造的になっています。
彼らに創造性がないという考えは完全に間違いです。
ポイントは、彼らの創造性は人間のそれとは違うということです。
それが彼らのメリットです。
すべての物事はネガティブに見れば、ネガティブに見え、ポジティブに見ればポジティブに見える。
AIの未来を正確に予測することは誰もできない。
しかし、今までの人類のテクノロジーの進化を考えると、その変化は常に、より便利で、効率的で、食料は確保され、医療技術は進み、寿命は伸び、エネルギーも無償に近くなっていく、という過程をたどっている。
これが進行中の未来の姿…
「すべては、必要、必然、最善である」(舩井幸雄)
未来は明るい、と思い定めたい。 |
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