2020.6.7 |
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「制約」はチャンス |
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アダム・モーガン&マーク・バーデン氏の心に響く言葉より…
制約の持つポジティブな力は、いたるところで発揮されている。
たとえば、遊びにおいて、ルールという縛りがあればこそ、ゲームは人を夢中にさせる。
縛りをゆるめてしまえば、面白さは色あせてしまうだろう。
ビジネスの世界もまた、制約ゆえの豊かな実りにあふれている。
制約は次の4つの異なるグループに分かれる。
1.「基礎の制約」成功のためには欠かせないとされる基礎的要素に制限がある。
2.「リソースの制約」資金や人材など、重要なリソースに制限がある。
3.「時間の制約」何かをするための時間の長さに制限がある。
4.「方法の制約」何かをする時に、ある決まった方法でおこなわなければならないという形で制限がある。
「基礎の制約」の例としては、(オンラインストアであるために)試し履きをしてもらえない状態で靴屋を始めることが挙げられる。
ザッポスのことだ。
この制約がきっかけとなって、ザッポスは2つの重要な要素を導入した。
1つは「送料はこちらで負担します、返品も簡単です」という販売プロセスと、もう1つは、これもよく知られているが、ザッポス曰く「顧客に感動をもたらすサービス」だ。
「リソースの制約」の例は、サウスウエスト航空だ。
1970年代に所有する4機の航空機のうち1機を売却しなければならなくなったのだが、一方でそれまでに獲得した航路は手放さないと決めた。
航路を維持するため、3機で4航路を運航する方法をあみ出す必要があった。
ここでまた別の制約が生まれる。
「時間の制約」だ。
3機で4航路を運航するためには、空港での折り返し準備時間を10分以内にするほかない。
到着した乗客と荷物を降ろし、機内を清掃し、新たな乗客と荷物を乗せる。
これを10分で行うのだ。
当時のアメリカの国内線の平均折り返し準備時間は1時間。
短縮をやり遂げる方法(たとえば、座席指定なしという当時としては新しい方法の導入)を編み出した結果、4つの航路を維持できたのに加え、他の航空会社ではよくある滑走路での待機時間がなくなり、これが顧客をなびかせた。
この新しい運航方法は、格安航空会社としての長期モデルとなり、その後何年も記録的な収益が続くこととなった。
4番目の「方法の制約」の例が、インドのアラヴィンド眼科病院だ。
この病院を創立した医師は、インドの貧しい人々のために高品質の眼科手術を、欧米に比べては破格の値段で行うという目標を立てた。
ひたすら効率を求めた結果、マクドナルドの研修所で見た流れ作業の訓練方法をまねたというのはよく知られている話だ。
アラヴィンド病院では現在、イギリスの国民保険サービスの下で毎年行われる眼科手術の60パーセントに匹敵する件数の手術が可能だ。
コストは1000分の1。
合併症はイギリスにおける眼科手術での発生率の半分だ。
ここに挙げた定評のある事業はそれぞれ、制約に向き合うことを余儀なくされたおかげで、経営状態の向上や変革を成し遂げることができた。
制約を受け入れ、その中に新たなチャンスを見出したのだ。
『逆転の生み出し方』文響社
本書の中にこんな事例があった。
『イスラエルのネゲヴ砂漠にある農場は経済的な苦境にあった。
農作物を作って売る以外のビジネスに手を伸ばさなければ倒産してしまうという状況に陥った。
そこで、シムハ・プラスという技術者と組み、新しい灌漑システムを販売しようと考えた。
プラスは何年か前に、同時に植えられた木々の中で1本だけが段違いに高く太くそびえていることに気付く。
調べてみると、その大きな木の根元に絶えず滴(しずく)をしたたらせているパイプのわずかな漏(も)れがあった。
実験を繰り返し、一定の時間をおいて適量の水を供給する点滴灌漑には、驚くほどの成長を促す効果があることがわかった。
点滴灌漑を使用し始めたとたん、農場における桃、梨、アンズの収穫量は劇的に向上した。
しかも水の消費量を50パーセントも低下させた。
この新しいシステムを売る会社は今や8億ドル企業だ。』
ビジネスの世界において「制約」を受けない会社など一つもない。
これは、人間の一生においても、同じことが言える。
天変地異や、疫病、戦争、事故や病気といった、まさかの坂(さか)という制約。
そして、人、モノ、金、などの制約。
「制約」こそチャンス、といえる人でありたい。 |
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