2020.5.27 |
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ぜんぶ、すてれば |
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中野善壽(よしひさ)氏の心に響く言葉より…
不確実で変化の激しい時代。
個人の力が試される時代。
人生100年への備えが必要な時代。
日々の膨大な情報に対応し、新しい技術や価値観へのアップデートが求められる。
過去の事例はもはや頼れない。
ロールモデルも、人生プランも、描けない。
自分の意見や考えを持ち、世の中に発信しなければならない。
しかし、実績も経験もなく、自信がない。
先の見えない将来のことを考えると、不安で頭がいっぱいになり、疲弊してしまう。
こんな時代で生き残るには、どのような知識を持ち、いかなる力を身につけなければならないのか。
中野善壽(よしひさ)、75歳。
伊勢丹、鈴屋で新規事業の立ち上げと海外進出を成功させる。
伊勢丹、鈴屋で新規事業の立ち上げと海外進出を成功させる。
その後、台湾へ渡り、大手財閥企業で経営者として活躍。
2011年、寺田倉庫の代表取締役社長兼CEOに就任。
大規模な改革を実施し、老舗の大企業を機動力溢れる組織へと変貌させた。
その手腕と独自の考え方、そして人柄により、各界の著名人に慕われている。
一方で、メディアにはほとんど姿を現さず、社員にさえ、本当に実在するのか疑われていた、異端の人物。
その生き方の根本にあるのは「何も持たない」こと。
家や車、時計は持たない。
お酒やタバコも嗜まない。
お金も若い頃から、生活に必要な分を除いてすべて寄付している。
何も持たないからこそ、過去に縛られず、未来に悩まず、今日を大切に生きることができる。
『ぜんぶ、すてれば』ディスカヴァー
中野氏は、「やりたいことが、なくてもいい。正直であれば、道は開ける」という。
大学を卒業するとき、周りの同級生がさっさと内定を決めて遊んでいる中、就職先を探さず、ただぼーっとしていたという。
理由は、「やりたいことがなかったから」。
その頃、学生寮にいて、花屋の閉店間際に、毎日一輪だけ買いに行っていた。
世間話のついでに、就職のことを聞かれた中野氏は、「やりたいことも特に見つからなくて。なんでもいいんです」と花屋のおばさんに言った。
そこで、紹介してくれたのが新宿にある百貨店、伊勢丹だったそうだ。
中野氏はこう語る。
『「思い切ったことをしたいのに、勇気が出ない」と踏み出せない人は、こんなふうに思ったらいい。
地球のずっと外側、宇宙空間から眺めてみれば、自分の人生なんて、見えるか見えないかの取るに足らないもの。
人が一人、生まれて死ぬまでの時間は、宇宙に流れる時間のほんの一瞬、まばたきにも満たないほどでしょう。
それは誰でもそうであって、この世に存在するものすべてがそう。
大したことはないし、この世に永久に役立つものなんてつくり出せない。
そう思えば、なんでも気楽にやってみてもいいんじゃないかと、踏ん切りがつきませんか。
そう、自分が役に立つ存在になるなんて考えるのは奢りです。
もちろん役に立とうとする努力は大切ですが、今日一日を楽しくありがたく味わって過ごしたい。
仕事で失敗したって、明日死ぬわけじゃない。
なんでも許される若い時ほど、肩の力を抜いて思い切ればいいと思います。』
中野氏は、ミニマリストとして有名だ。
ミニマリストとは、モノを持たずに、必要最小限のモノで暮らす人のことであり、捨て去ることができる人。
「放下著(ほうげじゃく」という禅の言葉がある。
投げ捨ててしまえ、手放してしまえ、ということ。
煩悩(ぼんのう)も、執着も、お金も、地位も、肩書も、モノも。
「何も持たないからこそ、過去に縛られず、未来に悩まず、今日を大切に生きることができる」
この、こんにちただ今を、大切に生きてゆきたい。 |
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