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2020.2.28

メモの効用

明治大学文学部教授、齋藤孝氏の心に響く言葉より…

私の経験上、仕事ができる人ほどひんぱんにメモを取ります。

ある新聞社で優秀だと評判のベテラン記者の取材を受けたことがあるのですが、とにかくよくメモを取る。

それだけじゃなくて私の言葉に素早く相槌を打ち、飲み物などのオーダーも手際よくこなします。

それと対照的だったのが、一緒に来た若い記者。

こちらは全く動かなければメモも取らない。

話を聞いても相槌も打たず笑顔もない。

一体何しに来たのかなという気持ちになります。

会話の中でメモを取るというのは、一つのアピールになります。

「私はあなたの話をしっかり聞いていますよ」という証明であり、相手に敬意を表すサインにもなります。

雑誌でいちいちメモを取る必要はないでしょうが、ビジネスの打ち合わせや、相手の話を聞くときには、メモをしっかりと取ることが大事です。

会社の打ち合わせでもメモを取ることが大前提。

そこで要点をしっかりメモしているか?

上司は部下のそういう部分を見ています。

ビジネスで「この相手を信用して良いかどうか」というのは、「ポイントをつかむことができる人物か否か」で判断される部分がとても大きい。

その2分法を、人は無意識に行っているのです。

仕事を任せられる相手、一緒に仕事ができる相手には、やはり仕事のツボを押さえることができる人を選んでいるはずです。

的確にメモを取ることができる人物は、当然ポイントを押さえることができます。

またそれを周囲にアピールすることもできる。

二つの効用があるのです。

ところが社会に出ると、意外にメモの効用を部下に伝える人が少ないのです。

私はメモの力を非常に重視していますから、教育実習に行く学生には、極力メモを取るようにアドバイスします。

すると実習生が学校に行って校長先生が話しているときなど、ちゃんとメモを取る。

他の実習生はメモを取らず、取っていたのは自分だけで、とても目立ったし評価がよくなって後がやりやすかった、というような話を後から学生がしてくれます。

『人生は機転力で変えられる!』青春出版


齋藤孝氏は実際のメモの取り方についてこう語る。

『◆基本編としては、「キーワードを中心にメモを取る」という方法がある。

話の中で大事だと感じた言葉、印象の強い言葉をキーワードとして書き込む。

そうして書き留めたキーワードを、会話の中で質問として相手に投げかける。

すると相手は、自分の言葉を繰り返し、解釈を添えた上で投げ返されるので、話を真剣に聞いてくれている、理解してくれていると感じる。

◆上級編としては、「自分の発想を書く」という方法。

上級編は相手の言葉をメモするだけではなく、その言葉をもとに思いついた発想や気づきをメモする。

相手の言葉やキーワードを書き込むと同時に、自分の頭の中でそれを具体的に膨らませていく。

会話というのは、抽象化と具体化を行きつ戻りつすること。

抽象的な言葉を、具体的に「つまりこういうことですか?」と投げ返す。

その往復を可能にするのがメモ。』

「メモの魔力」の中で前田裕二氏は、メモはより本質に近づくために取るという。

会話やミーティングの内容を「ファクト」として、かいつまんで書く。

そして、そのキーワードから展開して、「抽象化」する。

その抽象化した気づきを、別の何かに「転用」して実際行動に移すための要素に落とし込むという。

つまり、「ファクト→抽象化→転用」という流れだ。

いずれにしても、メモの達人は単なるメモだけにとどまらず、それが別の何かに昇華する。

あらたなる気づきや、発想、アイデアにつながる。

メモを残さなかったら、どんな素晴らしい気づきも、あっという間に消えてしまう。

「メモは向上心の現れ」(野村克也)

日々向上するため、メモ魔になりたい。



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