2020.2.25 |
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うんと低いところからスタートする |
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萩本欽一氏の心に響く言葉より…
芸能界に入ってから、「この人は生まれながらに才能を持っていたんだな」と思わせる人を何人か見かけました。
仕事を始めたとき、100人の同期がいたら、スタート時点でもう99人を抜いちゃっているような人。
あとの99人は、みんな「才能がある」っていうところへたどりつくのさえ大変なのに、最初からぶっちぎってる人がまれにいるんです。
こういう人は、最初から5年ぐらいの差がありますね。
こういう天才って、真剣に仕事をつづけたらどこまで伸びていくんだろう、とだれでも思うでしょ。
だけど、初めから才能を持っている人って、ほぼ間違いなく伸び悩むんです。
人に教わらなくてもできるんだったら、努力しませんよね。
才能のある人は早くから周囲に認められて育つから、「自分はできる」と自覚しちゃう。
ここで成長は止まっちゃうんです。
普通の人は、「自分はできない」と思うから努力をつづける。
そのうち努力をする習慣がつくので、自分がかなりいい位置まで到達しても、努力をやめようと思わない。
そうするとね、5年後ぐらいから逆転現象が起き始めるんです。
スタート時にほかをぶっちぎってたトップの人は、30人ぐらいに抜かれていく。
あと2年も経つと、また20人に抜かれて、天才的なトップだったのが真ん中ぐらいになっちゃう。
スタートから10年経った頃には、最初のトップはいちばんうしろにいるかもしれないね。
ただし、どんな世界でも本物の「一流」は違います。
並外れた実力や実績を持っている人の言葉を聞いたり行動を見ていると、「自分はすごい」とまるで思っていないように見える。
僕たちから見れば何度も頂点に立っているように見える人って、過去の自分の実績より今挑んでいることに夢中で、「まだやりたいことがある」って言っています。
どこにたどりついても「終着点」とは思わず、いつも遠くを目指しているの。
ノーベル賞をとった人なんかに、こういう人がいるんじゃないかな。
ソフトバンクの孫正義さんや楽天の三木谷浩史さんを見ていても、「まだやりたいことの20%しかやっていない」っていう顔に見えます。
すごいことをやった人なのに、ぜんぜん偉そうにしていないし、僕からすると最高にかっこいい。
世界的な偉業を成し遂げるような人は、体中に才能と知識が詰まっています。
それでも「今自分が知っていることはだれかがすでに考えたことだ」と思うから、さらに世界中のだれもが驚く新しいことを生みだせるんですね。
とはいっても、こんな人は全人口のなかのほんのわずかな人。
普通の僕たちがどんなに頑張っても、彼らを抜くことは不可能です。
だから、みんな自分がいまいるところから少しだけ上を目指して努力していればいいんじゃないかな。
僕もコメディアンの修行を始めたとき、「おまえは才能ないね」って先輩から言われてスタートしたので、先輩の芸を吸収したり、自分で工夫してひたすら走ってました。
テレビの世界に行ったときも、なんにも知らなくてアタマのなかはスカスカだったから、才能があったり賢かったりする人には発想できないようなアイデアを思いつけたような気がします。
うんと低いところからスタートしたほうが、伸び率はぜったいに高い。
だから、「自分はなんにもできない、まったくだめな人間だ」と思っている人はラッキーですよ。
今が底辺なんだから、ここからとんでもないところまで行けるっていう楽しみが味わえるでしょ。
人生って、いちばん下から上を目指して進んでいくことが、結局いちばん楽しいんだと思う。
運の神様は、才能や頭脳のありなしじゃなく、努力の足跡を見てくれています。
『続・ダメなときほど運はたまる (廣済堂新書)』
昔の男が結婚するときのプロポーズの言葉は、「オレと一緒に苦労してくれないか?」だったそうだ。
今の男性が言う言葉は、「僕と幸せになりませんか?」。
苦労が前提なら、ちょっとでもうまくいけばそれがすべて幸せになる。
しかし、幸せが前提なら、少しでも嫌なことがあると、それは約束違反。
どちらが長続きするかは、言うまでもない。
感動やサプライズも同じで、事前にあまり期待を持たせると、誰も感動しないし驚かない。
しかし、まったく期待しなかったときに、ちょっとした思いがけない「いいこと」があると、感激したりする。
ハードルは下げたほうが、うまくいく確率は格段にあがるし、それを楽しめる。
何事も、うんと低いところからスタートする人は運を引き寄せる。 |
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