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2020.2.4

アルゴリズムフェアネス

尾原和啓(かずひろ)氏の心に響く言葉より…

未来にはワクワクが待っている。

私はそう信じています。

世の中には、もしかすると悲観論のほうが多いかもしれません。

人口減少社会や気候変動、排他主義や低成長など、未来への不安を煽るようなニュースが多く流されています。

そうしたなかで楽観論を唱えると、タチの悪いセミナーか宗教でも始めるつもりか、と思われる方もいるかもしれません。

心配はいりません。

本書で紹介したい言葉は一つ。

「アルゴリズムフェアネス」という言葉です。

聞き慣れない言葉でしょうが、世の中の不安を吹き飛ばし、私たちに明るい未来を提供してくれるかもくれないマジックワードなのです。

「アルゴリズム」は、辞書的にいえば、「数学やコンピュータで問題を解くための手順を定式化したもの」です。

もっと簡単に表現すれば、「優劣を決めるもの」と見なしていただけたらと思います。

衣食住すべて、あるいは働き方や新しい友人や恋人まで、問いかければ優先順位つきで回答を返してくれます。

あるいは問いかけなくても、アルゴリズ側が勝手に忖度して、「いま、あなたがほしい情報はこれですよね」「あなたなら、こういう働き方をすればもっと稼げますよ」「あなたは品行方正なので、この保険なら保険料が安くなります」などの提案をしてくれる。

これらはすでに始まっているサービスです。

アルゴリズムのなかで私たちにとって身近な存在といえば、GAFAと呼ばれる巨大IT企業のサービスです。

あるいは中国のアリババやテンセント、日本で先ごろ経営統合を発表したヤフーとLINEなども、それぞれのアルゴリズムを提供しています。

膨大な情報とモノとヒトを出合わせ、結びつけるという意味で、彼らは「プラットフォーム」とも呼ばれています。

それでは、私たちは安心して各社のアルゴリズムの大船に乗っていればよいのかといえば、そうでもありません。

便利すぎるがゆえに、大事なことを見失いかねないのですが、そこに歯止めをかけるのが、本書のキーワードの後半、つまり「フェアネス」です。

フェアネスとは、「公平・公正」という意味です。

ここまで述べてきたアルゴリズムにフェアネスが欠かせないことは、いうまでもありません。

たとえば、どれだけ真っ当に頑張ってもグーグルの検索結果に上位表示されない企業、フェイスブックの投稿が表示されにくい人が生まれてくれば、それはその企業や人の自由が奪われている、ということです。

しかも、これらの自由の剥奪の理由は、ときに明確ではありません。

自らそれを改善するのが難しければ、そうした企業や人は社会の下層で固定されてしまう。

この状態を慶応義塾大学の山本龍彦教授は、「バーチャル・スラム」と表現し、警鐘を鳴らしています。

『アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと』KADOKAWA


尾原氏は本書の中でこう語っている。

『AIが人間の知能を超えるシンギュラリティという言葉や、GAFA、フェイスブックのリブラ、さらには中国の信用スコアなど、大きな未来を示す言葉が日々の紙面を飾るようになって数年。

いつの間にか、GAFAはデータを牛耳ろうとする支配者である、という論調が増えてきました。

もちろん、彼らも営利企業としてほかを出し抜くことはあるかもしれません。

そこで私がいつも思い出すのは、イソップ童話の「すっぱい葡萄」です。

ある日、キツネが美味しそうな葡萄を見つけます。

食べようとして飛び上がるけれど、葡萄はみな高いところにあって届かない。

何度跳んでも届かないので狐は怒りと悔しさで、「どうせこんな葡萄は、すっぱくてまずいだろう。誰が食べてやるものか」と捨て台詞を残して去る、という物語です。

美味しそうな果実に向かい、何度努力しても届かなければ、とることができるだろうかと不安になり、やがてその不安は、自らの跳躍力が足りないから、と自身を傷つける悲しみへと変わります。

そこで人は、自分を落ち着かなくする不安や、自分を傷つける悲しみに耐えきれず、相手が無価値だ、相手が悪い、という怒りに変えてしまいがちなのです。

でも、怒りに任せて相手を切り離してしまっては、私たちが成長したり、葡萄が成熟して実を垂らしてきたとき、その果実を頬張り楽しむことも、その果実にある種を植え、育み、次の誰かに分け与えることもできなくなってしまいます。

だからいま、私たちを不安にさせるような大きな果実が現れたとき、それをすっぱい葡萄にしてはいないか?と自らに問いかけることが大切なのです。』

我々は未知なこと、不安なことにたいして、つい耳をふさいだり、否定してしまいがちだ。

古代から繰り返し言われてきている「最近の若い者は」という言葉と同じだ。

だがしかし、新しいことは、常に若者から始まる。

デジタルネイティブの世代がこれから大半を占めるようになる現代、あらゆる考え方は変わってくる。

アルゴリズムとフェアネスの力を信じ、未来にワクワクする人でありたい。



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