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2019.11.20

好きなことを、世の中に向かって発信する

芸人兼ソロキャンプYouTuber、ヒロシ氏の心に響く言葉より…

僕は「ヒロシです」のネタで有名になった芸人・ヒロシである。

しかし、この本を手に取ってくれた人の多くは、「お久しぶりです」という方ばかりだろう。

というのも、僕は現在、全国区のバラエティ番組に出ることは滅多にないからだ。

芸歴でいえば、ブラックマヨネーズさんやスピードワゴンさんと同じ、年齢であれば、バナナマンの日村勇紀さんやよゐこのお二人などがいっしょだが、彼らのマスメディアでの活躍からすれば、僕のメディア登場回数は、ないにも等しい。

2004年に「ヒロシです」のネタでブレイクした僕だが、その後、自分のネタ作りに対するこだわりから「天狗になった」と周囲に誤解されたり、トーク力やリアクションを返す能力が極端にないことから、テレビ出演は徐々に減っていった。

何よりも大きな影響があったのは、幼い頃からのあがり症だ。

同じ芸人の方と肩を並べてテレビに出ることに恐怖を覚えた僕は、精神的に病んでしまい、当時所属していた事務所に自分から「テレビに出ません」と告げることになる。

以来、仕事は激減し、僕は自分が住んでいたマンションから飛び降り自殺を図る寸前まで追い込まれた。

医師から「パニック障害」と診断された。

その後は、メディアでの活動をほそぼそ続けながら、ライブに活動の軸を移したり、パンクバンドの可能性を考えたりと、試行錯誤を繰り返した。

テレビ出演をほぼしなくなり、おそらく僕のことを、多くの人は「テレビで見かけなくなった一発屋芸人」と思っているだろう。

確かに僕は有名なバラエティ番組に出ていない。

しかし、別の場所で断続的に露出を繰り返している。

それが「ヒロシちゃんねる」だ。

これは、僕が自ら、趣味であるソロキャンプ動画の撮影・編集を行い、その映像をアップするYouTubeのチャンネルだ。

つまり、僕はYouTuberとしても活動しているのである。

芸人の中にも、YouTubeで動画をアップする人はいる。

加えて、大手芸能プロダクションも所属芸人にYouTubeでの活動を促すなど、積極的に行うようになってきた。

しかし、そういった動画と僕の動画では、大きく違うところがある。

まず、僕の動画だが、他の芸人みたいにネタの披露は行われない。

つまり、動画を見ても、「ヒロシです」のネタは見られないのだ。

僕の動画は、僕の個人的な趣味であるソロキャンプ、つまり“ひとりでキャンプする様子”を僕自身が撮っているものだ。

補足説明すると、小学生時代から好きだったキャンプだが、以前は僕もグループで行っていた。

しかし、皆で肉を焼き、ワイワイ賑やかに楽しい時間を過ごすことに違和感を感じていたのだ。

僕は皆でワイワイ過ごすのがそもそも苦手なのだ。

そこで、ひとりでキャンプを始めるのだが、日が落ちた山中でひとりテントを張ってキャンプするのは、慣れるまでは結構怖い。

そのため、同じくひとりでキャンプをしたいという仲間で集い、それぞれが同じ場所で寄り添いながらも個々でソロキャンプをすることを、趣味で始めた。

その様子を記録に残そうと思って始めたのが「ヒロシちゃんねる」である。

要は後日、仲間内で見て、それをツマミにソフトドリンクを飲む(僕は酒が飲めない)ために撮ったのが、動画の主な目的だった。

加えて、自分が撮影者ということもあり、ヒロシ本人が映らない動画が多いという特徴もある。

これは幼い頃からのあがり症ということも関係している。

芸人にもかかわらず顔を出したりするのがそこまで好きではないからだ。

つまり、ソロキャンプ好きな中年独身男性が、ただその様子を取っているだけのものと思ってくれて構わない。

さらに、CMや商品PRがメインのスポンサーありきの番組でもない。

この他にも、撮影時間や演習方法などが、視聴回数が稼げるといわれるセオリーとずれているなど、ツッコミどころも満載だ。

僕の動画は、再生回数が増える仕掛けがまるで施されていないのだ。

しかし、そんな番組のチャンネル登録者数は25万人を超え、現在も少しずつだが増え続けている。

比較するならば、元SMAPの草g剛さんは85万人、ロバートの秋山さんは41万人、日本エレキテル連合さんが14万にん、バイきんぐさんが5.4万人、所ジョージさんが3.7万にん(2018年11月現在)といったところだ。

YouTubeで活動しているというと、「人気がなくなりテレビに出られなくなったからだろう?」といわれる。

しかし前述した通り、僕はYouTubeを始める前から、そもそもテレビに出なくなっていた。

また、YouTubeの視聴回数が増えると、「芸能人だから増えたのだろう?」とも指摘されることがある。

これは「人気がなくなり」といった前の指摘と矛盾するのだが、加えていうならば、お笑いネタを披露しないばかりか、ヒロシ本人がそもそもあまり映っていない。

芸能人の特権を使えていないのだ。

それに、芸能人のYouTubeのチャンネル登録者や視聴回数は、素人からプロのYouTuberになった人のそれに比べて、圧倒的に少ない。

というのも、そもそもお茶の間を笑わす大衆性があまり求められない市場なのだ。

ただし、僕は、自らのチャンネルの登録者が芸能人の中では多い、といったくだらない自慢をしたいわけではない。

僕がいいたかったことは、2000年代中頃のブレイク全盛期、月4000万円を稼ぎ出した頃に比べれば収入は少ないが、それでも僕は、あの頃よりも気持ちよく仕事をすることができている。

大手芸能プロダクションの所属をやめ、自分で小さな会社を立ち上げ、マネージャーと2人だけでコツコツ仕事をしている。

決して自慢できるものではないが、好きなことをして、自分が満足できるお金を稼ぎ、日々を過ごしている。

しかも、収入は多少のアップダウンはあるものの、基本的に増えている。

これを書いている前月の収入は、YouTubeの広告だけで80万円だ。

僕は、ブレイクしていた頃よりも、随分幸せなのだ。

今回僕は、あるメッセージを伝えるために本を刊行する決意をした。

それは、好きなことをして生きていく、そんな“人生100年時代”の新たな働き方を提案したいということだ。

僕は、飽き性だし、不甲斐ないし、お笑いのネタを見てもわかるように、本当にネガティブだ。

何か特別な能力を持っているわけでもない。

それに、こんな性格だ。

芸能界の人脈だってご想像通り、全く持っていない。

しかし、こんな僕でも、ソロキャンプという好きなことを突き詰めたおかげで、今では、それが仕事の中心になっている。

しかも、今の僕のお客さんは芸人の僕に興味があるというよりも、キャンプというコンテンツに興味がある人たちだ。

芸人・ヒロシのファンとは、かなり離れた客層になるだろう。

僕からいえることは、つまりこういうことだ。

こんな僕でもできたんだから、あなただってできる。

現時点で有名である必要はない。

何か特別の能力や資格が必要なわけでもない。

つまり、全くゼロからのスタートでいい。

やることは、あなたの好きなこと、それを自分の中から見つけ出し、極めることだ。

そして、その好きなことを、世の中に向かって発信することだ。

『働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける』講談社


堀江貴文氏のこんな言葉がある。(好きなことだけで生きていく/ポプラ新書)より

『既存のレールに乗って生きていくことは、これからの時代、通用しなくなる。

僕が言う1%の人にならなければ、本当の意味で仕事に没頭することはできなくなる。

あらゆる分野において皆さんの想像以上のスピードでテクノロジーが発達しAIが進み、これまで普通にあった職業がなくなる。

稼げなくなる。

与えられた仕事だけこなしていれば安泰の時代はもうすぐ終わる。

そんなことはありえないと思っているあなたが一番危険だ。

自分から動き、何かを見つけ、仕事を生みだしていかなければならない。

そうしないと人生を楽しむことができなくなるということをわかってほしい。』

仕事でも、個人として生きていくにも、「他と違う」という希少性は大事だ。

デジタル社会になればなるほど、「他にはない」生き方や、考え方、商品、で稼いでいける可能性がある。

なぜなら、大多数という万人にうける必要はないからだ。

一部の熱狂的ファン、マニアに好かれればいい。

ネット社会になると、一部のマニアといっても、世界を相手にすればかなりの数が集まる。

まさに、ランチェスター戦略でいうところの限定市場(狭い市場・ニッチな市場)の中でトップを目指すことだ。

特に、フリーランスや個人事業主にはこの戦略は有効だ。

これをランチェスターでは「弱者の戦略」という。

好きなことを、世の中に向かって継続的に発信してみたい。



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