2019.10.31 |
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麹町中学校の型破り校長 非常識な教え |
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麹町中学校校長、工藤勇一氏の心に響く言葉より…
この世の中を幸せに生きてほしい。
親であれば、子どもに求める望みは変わりません。
現在、AIやIOTなど科学技術の進展は著しく、経済構造は大きく様変わりしています。
子どもたちの時代は、ひとつの会社に就職して定年まで勤め上げるような社会ではありません。
そのような時代の変革期にあたって、ますます大切になってくるのは自分で考えて、判断し、行動できる力「自律」ではないでしょうか。
どんな親もその力を身につけてほしいと考えているはずです。
しかし、子どもの将来のために少しでもよい環境に置いてあげたいと願い、親は早いうちから理想に引っ張り上げようとしがちです。
幼児期からのSTEM教育、英語教育、プログラミング教育といった習い事など、こうした「子どものために」という熱心な取り組みが、逆に自律を身につけるチャンスを奪っているとしたら…。
子どもはそもそも主体的な生き物です。
一方的な押し付けは、主体性を鍛える機会を奪い続けます。
すると、与えてもらうことに慣れた子が育っていきます。
その子たちの多くは、次第に与えてもらう「質」の不満を言うようになります。
面倒見が悪い、教え方が悪い、教材が悪い…。
うまくいかないことが起こると先生や学校のせいにします。
「誰かのせい」「組織のせい」にする。
よくご存じですね、こんな子どもが成長した「当事者意識のない大人」の集まりが、今の私たち日本の姿なのかもしれません。
私は、6年前に千代田区立麹町中学校に校長として赴任してから、学校のさまざまな「当たり前」をやめました。
麹町中の教育改革は、従来の教育からすると、「非常識」なことばかりです。
●宿題禁止
●定期テスト廃止
●頭髪、服装の校則を撤廃
●固定担任制を廃止
さらに「協調性こそが大事なのではない」「みんな仲良くしなくてもいい」「心は変えなくていい、行動を変えよう」と教える。
文化祭の開催を生徒に全面的に任せる。
今の教育で「常識」とされていることは、私に言わせれば、子どもの自律を奪うものばかり。
なぜなら親も教員も教育の最上位の目的を見失い、目の前の手段ばかりが目的と化しているからです。
その結果、子どもの主体性や意欲、創造力といった能力がつぶされています。
麹町中学校の最上位の目標は、「自律した子ども」を育てること。
それは、言い換えれば「人のせいにしない子ども」です。
その上で、「人間はみな違うし、対立が起こるのは当たり前である」「違いを乗り越えるためにどうしたらいいか」を教えます。
「世の中まんざらでもない。結構大人って素敵だ!」
生徒たちにそう思ってもらうことが、麹町中学校の最上位の目標です。
麹町中学校の学校改革の成果は、年を追うごとに現れてきました。
「異例ずくめ!」「公立でここまでの改革ができるなんて!」
多くのメディアが取り上げてくださいました。
文部科学省や全国の教育関係者が毎日のように視察に訪れるなど、注目度も上がっています。
2020年入学の学校説明会には、定員の3倍を超す参加者が押し寄せ、座席が足りなくなるなど大混乱になりました。
麹町中学は、ある意味、私立校の「滑り止め」のような存在です。
私立受験に失敗し、自己肯定感を傷つけられた子どもが大勢集まってきます。
入学後、一年生のうちは、子ども同士をめぐる問題は毎日のように起こります。
しかし、はじめのうちは劣等感を抱き、無気力で依存心のつよい生徒たちも、3年生に上がる頃には、主体性に満ちた生徒に変貌します。
学級の中心的人物としてたくましく活躍してくれるようにもなります。
発達に特性のある子も、そうでない子も「出る杭が打たれない」空間を全員で作りあげていくのです。
『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え (SB新書)』
TA(交流分析)はアメリカの精神科医エリック・バーン博士によって創始された心理療法や治療の心理学的理論だ。
より実践的で、専門家でない一般の人たちも学べるわかりやすい理論なので、「口語体の心理学」とも言われている。
「過去と他人は変えられない。変えられるのは今ここの自分から」という考え方から出発するTAのゴール(最上位目標)は、個人の「自律性」を高めること。
まさに、麹町中学校の理念と同じだ。
自律的な人間は、自分の思考や感情、行動に責任を持つことができる。
つまり、人のせいにしない。
エリック・バーンは自律性を得るためには、「自発性」「気づき」「親密さ」が重要であるという。
TAでいう親密さとは、「私もあなたもOK」という基本的な姿勢に立って、相手を認め、ほめたり(ストローク)、共感するという真の意味でのコミュニケーションのことを言う。
「当事者意識のある大人」
子どもがあこがれるような、自律した大人を目指したい。 |
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