2019.10.15 |
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生産性を上げることが日本再生につながる |
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小西美術工藝社社長、デービッド・アトキンソン氏の心に響く言葉より…
私が「新しい日本」にとってもっとも必要だと考えているのは、「中小企業崇拝」の廃止です。
日本にとって最大の問題は生産性が低いことですが、「生産性問題は中小企業問題」だと考えるからです。
日本では、技術がありながら、社員が少ない小規模の「町工場」のような中小企業を応援することが、日本経済を元気にするのだと語られています。
先ごろ人気を博したドラマ「下町ロケット」などはその典型例です。
ただ、残念ながらこれは1975年に始まった旧グランドデザインに基づいた古い考え方と言わざるを得ません。
これからの「人口減少社会」では「すべての中小企業を守る」「中小企業護送船団方式」という考え方は通用しません。
むしろ、「すべての中小企業を守る」ことに固執するようでは、中小企業を救うどころか、逆に多くの人を不幸にしてしまうのです。
この「中小企業崇拝」ともいうべき思想が、日本経済の低成長、さらには日本社会の様々な問題の根底にある。
これこそが、私が日本のデフレや生産性の低さを分析していく中で、最近たどり着いた結論なのです。
そう言うと不愉快になる方もおられるでしょう。
しかし、グランドデザインというのは基本的に、これまでの制度のすべてを検証し、根本から再検討して、これまでの常識とは異なる新しい姿をつくっていくということです。
具体策ですが、そもそも、日本経済は世界第3位なのに、あまりにも世界で戦える大企業が少なすぎますので、それを増やす必要があります。
そのような大企業は、リーディングカンパニーとして生産性向上を牽引するのはもちろんですが、世界から最先端の技術や考え方を日本国内へと持ち込む「伝道師」の役割も果たします。
同時に、小さい規模の企業があまりに多すぎることが産業構造を非効率にしていますので、それらを統合して零細企業で働く労働者を集約しなくてはいけません。
生産性を2060年までに1.7倍も上げなければ、日本の社会保障システムが破綻してしまうからです。
以上のことからも、中堅企業で働く労働者を集約して、企業規模を大きくしなければいけないのは明らかですが、そのようにすると、企業の数が大きく減ることになります。
企業の数を減らすと、失業者も増えるのではないかと心配する人が出てきます。
しかしそれは明らかに論理が飛躍しています。
1998年、私がまだゴールドマン・サックスにいた頃、当時19行ほどあった主要銀行について、「日本の主要銀行、2〜3しか必要ない」という過激なタイトルのレポートを出しました。
このレポートを出した当時、私とゴールドマン・サックスには凄まじい批判が寄せられました。
ただ、事実としてこのレポートを出した後に19行あった銀行は現在は大手3行にほぼ集約されました。
当時、日本の主要銀行のシステム投資は売り上げの1割でしたが、19行がまったく同じ基幹システムをつくってもきわめて非効率で低次元なシステムしか作れません。
これを集約することによって、設備投資の効果を飛躍的に上げることが狙いであり、事実そうなりました。
『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか (講談社+α新書)』
デービッド・アトキンソン氏は、本書の中でこう語る。
◆生産性を見てみると、1990年は世界9位でしたが、いまは28位まで下がって、先進国として最低水準となっています。この20年間、先進国の給料は約1.8倍となっているのに対して、日本は9%の減少です。
◆これから日本の総人口は31.5%減ります(2015年から2060年までの予測値)が、さらに15歳以上64歳以下というもっとも大事な生産年齢人口に目を向けると42.5%も減ります。日本の減少ペースはどの先進国よりも速く、どの先進国よりも大きな減り幅となっています。
◆先進国の場合、GDP総額のランキングは人口のランキングによって決まっています。日本のGDP(2018年)はドイツの1.28倍の規模ですが、これは日本の技術や勤勉性がドイツより優れているからではなく、単純に国民の数が約1.5倍だからなのです。
(以上、本書より)
日本の中小企業は約358万(99.7%)で、うち小規模事業者は305万(87.9%)。
一方、大企業は1万1千(0.3%)《2016年中小企業庁調べ》となっていて、圧倒的に小規模事業者が多い。
小規模事業者の定義は、製造業では従業員20人以下で、商業・サービス業では従業員5人以下だ。
ちなみに、中小企業者の定義は、製造業では資本金が3億以下又は従業員300人以下で、サービス業では資本金が5千万以下で、従業員100人以下。
生産性を上げるにはある程度、企業規模を大きくするしかないというデータが出ているという。
銀行の合併のように、何社かが一緒になれば、本部費等が低減でき、システム開発費とかが捻出できるようになるからだ。
そして、直接的には最低賃金を上げること。
このことに耐えきれない会社は市場から消えるか、どこかと合併するしかない。
生産性を上げ、日本再生に寄与したい。 |
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