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2019.8.20

「苦み」や「渋み」のわかる大人

明治大学教授、齋藤孝氏の心に響く言葉より…

有史以前から、人類は本能的に甘い食べものが好きだったと思います。

一方、現代の私たちは、苦みや渋みをおいしさの一部と感じています。

これは本能というより、文化です。

例えば、子どもは渋いお茶を好みません。

しかし大人になると、あの渋みがいいと感じます。

あるいはわさびや唐辛子、タバスコなどの辛みも同様でしょう。

つまり甘み以外を受け入れることで、味覚の範囲が格段に広がります。

私自身、大学進学で東京に出てくるまで、コーヒーを飲めませんでした。

あの苦さをおいしいとは思えませんでした。

ところが、あるとき神保町にある「茶房 神田伯剌西爾(ぶらじる)」という名店に出合い、コーヒーに対する認識が一変します。

マンデリンという苦みの極致のような一杯をいただいたところ、実においしいと感じたのです。

以来すっかり病みつきになり、むしろ苦ければ苦いほどおいしいと感じるようになりました。

コーヒーの香りを嗅ぐだけで、脳内に今までなかった刺激が快感とともに広がります。

おかげで、例えば読書会なども本郷界隈ではなく、わざわざ神保町まで移動して開いたほどです。

これは、人類が苦みを文化として取り入れてきた経緯を、私が個人史として追体験したということだと思います。

こういう味覚の変化は、誰でも少なからず経験しているのではないでしょうか。

ちなみに、シヴェルブッシュ「楽園・味覚・理性」は味覚の面白い文化史です。

以上を一事が万事と捉えるなら、人生もまた、多様な味覚を受け入れることが大事ということになります。

「甘み」だけではなく、「苦み」や「渋み」を味わうことこそ成長の糧になるはずです。

戦国時代の武将・山中鹿介は、「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」という有名な言葉を残しています。

七難八苦を与えられたとき、それを乗り越える工夫をすることで自分の可動域が広がる。

それこそ喜びであるということです。

だとすれば、年齢を重ねるほど相応の経験も増えるので、可動域も広がるはずです。

しかも判断力もある程度備わっているので、むしろ安心して広げられます。

実際、仕事の上でそれを実践している人も少なからずいます。

私の知り合いのイラストレーターさんは、面倒そうな仕事ほど優先的に引き受け、単純な仕事は断ることもあるそうです。

それによってチャレンジすることが楽しいそうです。

これを繰り返していけば、たしかに仕事の領域はどんどん広がっていくでしょう。

『可動域を広げよ (日経プレミアシリーズ)』日経新聞出版社


伊藤肇氏の『帝王学ノート』( PHP文庫)の中にこんな文章がある。

『安岡先生から「茶は三煎して味わう」と教えられた。

浄境に栽培された芽茶(めちゃ)に 最初はややぬるめの湯をかけて、 芽茶のもつ甘さを味わう。

この甘いという味は、味の初歩的なもので、 幼児にも未開人にもよくわかる。

だから、人間も未熟なうちは 「あいつはまだ甘い」ということになる。

次の第二煎は、 少し熱くした湯でタンニンのもつ渋さを味わう。

この渋いという味は甘さよりは一歩進んでおり、 人間も中年近くなってやっと、「渋い魅力がでてきた」といわれるようになる。

第三煎は熱湯を注いで、 カフェインのもつほろ苦さを味わう。

この苦いという味は、人生も五十をすぎないと、 ちょっとわかってこない。

蕗(ふき)のトウで酒を楽しむ年代である。

ところが、この茶の心得のない人間は、 せっかくの芽茶にいきなり熱湯をかけるから、 甘さも、渋さも苦さもごちゃごちゃに出てしまって、 風味もあらばこそ、 単にニガニガしい味になってしまう。

すなわち、メチャクチャ(芽茶苦茶)の語源である。

青年とは、ある意味において、「甘さ」の段階しかわからない連中のことだ。

当然、「甘さ」を基盤にして勝手なことをいうが、 これを「渋さ」も「苦さ」も十分しっている 大人が叱ろうとしない。

変にものわかりのいいオジさんになっているところに 現代社会の大きな欠陥がある。

青年とおとなとは厳しさを通じて 結びつかなければならない。

青年を甘やかすようなおとながいたら、 青年は警戒すべきである。』

甘やかされて育った子どもはたいてい、「わがままになる」「他人のせいする」「打たれ弱い」「辛いことや嫌なことから逃げる」「まわりへの気配りや気遣いができない」「自分の要求が通らないとすねたり、すぐ泣いたり、怒ったりする」等々の特徴がある。

いい年をしたオジサン、オバサンにもそういう人は少なからずいる。

つまり、自分本位の人だ。

昨今の、すぐキレるオジサンや老人も同じ。

酸いも甘いも噛み分ける人、人情の機微(きび)に通じている人…

「苦み」や「渋み」のわかる大人になりたい。



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