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2019.8.12

リカレント教育の必要性

大前研一氏の心に響く言葉より…

2018年頃から「リカレント教育」という言葉をようやく日本でも耳にするようになった。

リカレント教育とは、基礎学習を終えた社会人が、自身のキャリアのために10年ごとなどに学び直しを繰り返し行うことである。

なぜ、リカレント教育に本気で取り組まなくてはいけないのか。

これを理解するためには、今、日本が置かれている経済状況の劇的な変化を理解しなくてはならない。

20世紀の日本社会は、大学などで高等教育を受ければ生涯働き続けることができた。

「教育」「勤労」「引退」の3つのフェーズを経験すれば事足りる「単線型」のライフモデルだ。

社会人になって学ぶべき知識は、会社が研修やOJTで与えてくれたので、受動的な姿勢でもなんとか定年までやっていけた。

しかも、手厚い退職金や社会保障を受けることができたため、積極的に学び直しを行わなくても、老後も安泰だったのだ。

しかし、今はそうはいかない。

社会全体の急速なデジタル化により、産業構造そのものに破壊的な変革が加速して起こる、いわゆる「デジタル・ディスラプションの時代」に突入したからだ。

社会全体のデジタル化により既存の産業が破壊される時代においては、大学や大学院で学んだ知識であったとしても一瞬で陳腐化してしまう。

それだけで定年まで乗り切ろうとする発想では生き残れない。

老後の生活費が公的年金だけでは不足することを考えると、生涯にわたり稼ぎ続けることができる力を、誰もが身につけなくてはならない時代になったといえる。

そこで必要となるのが、「仕事」と「学び」を何度も繰り返す「マルチステージ型」のライフモデルだ。

個人が自律的に学ぶだけでなく、そこで得た知識を周囲と分かち合う能動的な姿勢が求められる。

このようなダイナミックな時代の変化を、ビジネスパーソンだけでなく企業経営者も頭に入れておく必要がある。

20世紀の経営資源は「ヒト、モノ、カネ」だったが、21世紀の企業に必要なのは、「ヒト、ヒト、ヒト」。

モノやカネがコモディティ化し質の高い人材を確保することこそが最も重要な経営戦略になる。

このように21世紀は、たった一人の個人がブレークスル―を起こすことが可能な時代である。

企業にとってはより多くのエクセレント・パーソン(傑出した個人)を獲得できるか、個人にとってはエクセレント・パーソンになれるかどうかが生き残るためのカギとなる。

ところが、現状の教育システムは、相変わらず20世紀型の答えを教える方法を踏襲していて、答えのない時代にはほとんど役に立たない。

21世紀型の人材観を軸とした教育方針や企業の人材戦略に変えなければ、企業も個人も滅びてしまう。

『大前研一 稼ぐ力をつける「リカレント教育」(誰にも頼れない時代に就職してから学び直すべき4つの力) (OHMAE KENICHI RECRUIT EDITION)』プレジデント社


大前研一氏は、本書の中で「雇用」についてこう語る。

『デジタル時代に対応する人材を育てるためには「雇用規制の緩和」と「社会保障の充実」をセットで実施する必要がある。

ドイツは、この二つの改革を同時に実施することで継続的な経済成長を実現してきた。

解雇規制の緩和が必要なのは、「使えない人材がいつまでも会社に残る」問題を解消するためだ。

解雇規制が強すぎると、意識の低い人は(安心して)ますます学び直しを行わず、ひいてはこれが企業の競争力を落とし、日本全体のプレゼンス低下につながりかねない。

企業が使えない人材を放出することができれば、空いた席に優秀な人材を引き入れることもでき、浮いた給料を社員教育に充てることができる。

ただ、解雇規制を緩和するだけでは不十分である。

「社会保障の充実」も同時に実現させ、解雇された後に学び直し、再チャレンジできる環境を整えなくてはならない。

具体的には失業給付を充実させ、失業期間にきちんと職業訓練が受けられるような仕組みづくりが求められる。

ところが日本政府は、逆のことを行っている。

パートや非常勤をフルタイムかの正社員にしてほしいと経済界に要請するなど、ますます解雇しづらい状況をつくり出そうとしているからだ。

労働者の雇用や権利をひたすら守り、休暇を増やして給料を上げるだけでは、労働コストの安い新興国などに、21世紀の仕事はすべて奪われてしまう。

日本企業が新卒一括採用を基本とした採用制度を相変わらず維持していることにも問題がある。

新卒と中途採用者の動向を見ると、新卒採用の方が中途採用よりも2.5倍程多いが、私はこれからはすべて中途採用に変えるべきと考えている。

新卒採用を行っても、3年後には3割以上が辞めてしまう現状があるにもかかわらず、新卒採用を基本として研修まで施すのは相当無駄がある。

それよりは、企業に対して免疫力のある中途応募者を中心に採用し、その上でしっかりと教育を施した方がこれからの時代は、よほど賢明ではないだろうか。』

デジタル革命によって、社会の変化がどんどん加速している。

それに伴って、モノも技術も、考え方も幾何級数的にどんどん変化している。

その変化に対応するには、自ら勉強し、体験し、己を高めていくしかない。

特に、年配者にとっては、このことは必須だ。

考え方が変わらなければ、単なる意固地で偏屈な老人となり、周囲から嫌われ、疎(うと)まれるだけだ。

大変革を乗り切るため…

リカレント教育の必要性を今一度再認識したい。



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