2019.8.10 |
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「地理思考」とは |
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角田陽一郎氏の心に響く言葉より…
人類の歩みを俯瞰(ふかん)するという試みは、約40年前にも行われていました。
アルビン・トフラーというアメリカの未来学者が『第三の波』という本を出版したのが1980年のことです。
トフラーは、人類が最初に迎えた革命として「農業革命」を挙げています。
この農業革命によって、人類は狩猟に頼る生活から、自らの手で食料を作り出しコントロールできるようになったからです。
それ以来、人類は獲物を求めて転々と場所を移動する狩猟生活から、一ヵ所に定住する農耕社会を築いたことで、トフラーはこれを第一の波と位置づけました。
農業革命とは、人類が生きていくために、「モノを生み出す進化」でした。
農業は人類が労働によってモノを作り始めた原点です。
この農業革命によって、世界に2つの概念が生まれました。
1つは国(国家)です。
農業が行われるようになったことで、人類は狩猟のための移動をやめ、土地に定住するようになり、土地が価値を持ち始めたのです。
そしてその土地に人が集まるようになり、国という概念が生まれました。
もう1つは、民衆を束ねるうえで規範となる「宗教」と「思想」です。
為政者は政治の基礎に宗教を置き、さらに同じ思想によって人々を動かしていったのです。
そしてこの宗教や思想の違いが原因で大規模な戦争も始まります。
いわゆる、国盗(くにと)り合戦が世界で繰り広げられていったわけです。
続く第2の波は18世紀後半かららの「産業革命」です。
機械の発明によって、人類が機械を使い始めたのです。
それまで手作業で行われていたものづくりが機械生産に切り替わり、短時間で大量にモノを生産できるようになったことで、やがて大量生産、大量消費の時代に突入します。
大量生産、大量消費社会でもっとも重視されたのが「効率」です。
より短時間でモノを作り、短時間で販売することによって利益を最大化する競争が世界に巻き起こりました。
効率重視の考え方によって、人間が機械の都合に合わせて働くようになり、次第に人間性が阻害されていきました。
それがいまの「働き方改革」論議に見られる社会問題につながるわけです。
産業革命によって効率化を優先するようになった人類は、働き方も効率優先で考えるようになりました。
そこで生まれたのが会社という組織です。
つまり、人間を効率的に動かすための器として会社は生まれたわけです。
この会社の誕生によって、人間の生活は「食べるために働く」から「働くために食べる」へと転換してしまいました。
産業革命は教育という概念も生みました。
工場で人間に効率よく働いてもらうには、知識と技術と経験が必要だからです。
そこで産業革命以後、「子ども」が誕生しました。
実は、産業革命の前まで「子ども」という概念はなかったのです。
ただ“小さい大人”がいただけでした。
ところが学校を作ったことによって、一定期間社会から切り離された状態で、読み書き、計算などの教育を受ける者(=子ども)が誕生したというわけです。
つまり子どもの教育制度の原点は、労働の効率化にあったのです。
こうして一定のスキルと知識を身につけた者を、会社に集めて効率よく働かせる仕組みができあがっていきました。
産業革命は「イデオロギー」という概念も生み出しました。
イデオロギーとは資本主義、社会主義、民主主義といった「〇〇主義」といわれるもので、国家はこのイデオロギーをもとに体制を築いていきます。
そしてトフラーは、いま、人類に3つ目の波が押し寄せてきていることを示しました。
それが「情報革命」です。
情報化の波によって、人類はもう一度革命を体験すると予言しているのです。
資本主義に変わる新しいイデオロギーとは何なのかといった議論も現在世界中で行われているわけですが、まさにそのタイミングで人類は情報革命を迎えたわけです。
ちなみに1980年といえば、まだインターネットという言葉すらなかった時代です。
にもかかわらずトフラーはコンピューターの発展が社会のあらゆる仕組みを変えるだろうと断言し、クラウド上に写真を保存して色々な人とシェアする「Instagram」的なものの登場も予言していました。
重要なことは、トフラーが唱えた「第三の波」は、第二の波の産業革命よりも、人類社会に大きなインパクトを与えるということです。
情報革命の何が産業革命よりすごいのか。
産業革命とは何だったのかというと、機械の力によって「モノを生み出す作業」をより効率的に進めるものでした。
素晴らしい効率化ですが、モノに価値があるという意味では、あくまで農業革命の延長線上でしかなったのです。
一方、いま起こっている情報革命とは、モノから情報への価値の転換です。
それは価値の機軸の転換、すなわり「概念革命」です。
だからこそ、情報革命は産業革命よりもはるかに大きなインパクトを世界にもたらすのです。
『人生が変わるすごい「地理」 【学問】の力で働き方と生き方の【答え】が出る!』KADOKAWA
角田氏は「地理思考」についてこう書いている。(本書より)
『人生で起こることのほとんどは、自分の思い通りにはならない。
若いときは「若い」と言う理由で。
年をとると、「年をとった」という理由で。
ペーペーのときは「ペーペー」という理由で。
偉くなると、「偉いんだから」という理由で。
お金がなくては思い通りにはできないし、お金があっても、お金ではできないこともある。
ここに、そんな思い通りにならない環境の最たるものがある。
それは地理。
人類は、誕生以来、つねに環境との因果応報(地理・ちのことわり)を学ぶことで、進化・発展してきた。
つまり、人類と地理の関係を学べば、そしてその地理から授かった環境への知見を人生にフィードバックすれば、あなたは、人生の成功の鍵を手に入れることになる。
つまり、「地理思考」とは、現代の“孫子の兵法”ともいえる、最強の「人生の指南本」である。』
「一所懸命(いっしょけんめい)」という言葉がある。
日本の中世(鎌倉時代)において武士が、先祖代々受け継いできた領地を、命を懸けて守り抜くということ。
それが、命がけでことにあたる、という意味となった。
そして、その「一所懸命」がのちに「一生懸命」になったと言われる。
これから人口が劇的に減っていく日本。
地理的思考から言えば、今までは人口が多かったから日本の競争力も高かったし、先進国でいられた。
しかし、これからはそうはいかない。
「一所懸命」に、国内市場だけを相手にしているなら、必ずジリ貧となってしまう。
もっと地理的思考で世界に目を向け…
世界を俯瞰する力を身につけたい。 |
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