2019.7.3 |
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何を描きたいかは、描きはじめてみなければわからない |
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ロルフ・ドベリ氏の心に響く言葉より…
あなたにこっそり、「文章を書くための最大の秘訣」をお教えしよう。
たとえあなたが文筆業にたずさわっていなくても、この知識は役に立つ。
その秘訣とは、何を書くかというアイデアは、「考えているとき」にではなく、「書いている最中」に浮かぶということだ。
この法則は、人間が行う、ありとあらゆる領域の活動に当てはまる。
たとえば、ある製品が市場に受け入れられるかどうか、企業家にそれがわかるのは、市場調査によってではなく、製品をつくって市場に出してみてからだ。
セールスマンが完璧なセールストークができるようになるのは、セールス方式の研究を通してではなく、話術を何度も磨きあげ、数えきれないほど断られた経験があってこそ。
親は子育ての指南書を読むことによってではなく、日々自分の子どもを育てながら教育者としての能力を育んでいく。
音楽家は楽器の演奏方法を頭で考えるのではなく、実際に演奏しながらその楽器の名手になっていく。
それはどうしてか?
なぜなら、世界は不透明だからだ。
くもりガラスのようにぼんやりしていて、見通しがきかない。
先行きを完全に予測できる人はいない。
最高の教養を身につけている人でも、先が読めるのは、特定方向の数メートル先までだ。
予測できる境界線の先を見たければその場にとどまるのではなく、前に進まなくてはならない。
つまり、「考える」だけではだめで、「行動」しなければならないのだ。
私の友人の話をしよう。
彼は、すでに10年以上、起業しようと試行錯誤を重ねている。
頭のいい男で、大手製薬会社の管理職というよいポストにつき、MBAも取得している。
起業についての本を何百冊も読み、扱う商品を考えるのに何千時間も費やし、市場調査の資料を山のように集め、これまでに20を超えるビジネスプランを書き上げている。
だが、まだひとつも形になっていない。
彼の思考はいつも、「起業のアイデアに将来性はある。だがうまくいくかどうかは、計画をスムーズに実行に移せるかどうか、そして予想されるライバル企業がどう動くかにかかっている」というところまでは進むのだが、そこでストップしてしまう。
彼の思考はすでに、これ以上長く思い悩んでも1ミリも先に進まないポイントに達してしまっているのである。
いくら考えて、もう新たなことに思いいたらない。
このポイントを、ここでは「思考の飽和点」と呼ぶことにしよう。
頭の中で検討を重ねることに、意味がないわけではない。
短期間でも集中して考えれば、とてつもなく大きな気づきがある。
しかし、時間とともに新たに得られる認識はどんどん小さくなり、すぐに思考は「飽和点」に達してしまう。
頭の中で熟考しても、懐中電灯で照らす程度の範囲にしか考えはおよばないが、行動を起こせばサーチライトであたりを照らし出したかのように、一気にいろいろなものが見えるようになる。
その強い光は、考えただけでは見通せない世界の奥まで行き届く。
それに、いったん先を見通せる新しい場所にたどり着いてしまえば、懐中電灯を使った頭の中での熟考もまた力を発揮するようになる。
『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』サンマーク出版
ロルフ・ドベリ氏は本書の中で、こう語る。
『パブロ・ピカソは「新しいことに挑戦する勇気』がいかに大切かを、きちんと理解していた。
ピカソはこう言っている「何を描きたいかは、描きはじめてみなければわからない」。
同じことは、人生にも当てはまる。
人生において自分が何を求めているかを知るには、何かを始めてみるのが一番だ。
考えているだけではよい人生は手に入らない。』
「事上磨錬(じじょうまれん)」(伝収録)という教えがある。
中国、明の学者、王陽明の言葉だ。
事上磨錬とは、実際の行動や実践活動を通して、知識や心、精神を磨くこと。
実行の中にのみ、学問がある、と。
つまり、知っていても行わなければ、知らないのと同じことだ。
「何を描きたいかは、描きはじめてみなければわからない」
つまり、やってみなければ何もわからない、ということだ。
これから世の中はますます「VUCA(ブーカ)」の時代となる。
それは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という、予測困難な時代だということ。
予測困難な時代を生きるには、試してみること、実践してみること、行動してみることが絶対に必要だ。
「やってみなければわからない」、と…
どんなときも、行動する人でありたい。 |
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