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2019.6.21

怒りをコントロールする

禅僧、南直哉氏の心に響く言葉より…

ある老師が、以前こんなことを言いました。

「直哉、俺も90歳を過ぎて、だいたいのことは解脱したと思っていた。

もう、うまいものを食べたいとも思わないし、女に惚れることもない。

だけどな、怒るのだけはダメだった。

この歳になっても頭にくるんだよ。

怒りからは解脱できない。

仏の道は遠いな」

念のために言うと、老師が「頭にくる」のは、個人的なことではありません。

この老師は、寺で戦災孤児の救済活動をするなど、ボランティアの草分けのような活動を続けた人です。

彼の怒りは、社会的な問題や悲惨な状況にある人たちに対して、世間があまりにも無関心だということに向けられたものです。
老師にとってこの怒りは重要な意味があり、また、これまでの活動を支える大事なエネルギーにもなってきたのでしょう。

そんな「怒り」であれば、捨てる必要はないと私は思います。

その感情が激したときに、その枠の中でこぼれないようにすればいいだけの話です。

しかし一般的に見れば、怒りが手こずる感情のひとつであるのは間違いありません。

なにしろ、90歳の禅僧まで、捨てられないと言ったのですから。

「もう怒らないと決めたのに、小さなことで部下を怒鳴ってしまうのです」

「子どもが言うことを聞かないので、怒りが溜まっていつもイライラしています」

こんな悩みをよく聞きます。

ついカッとなってしまうのは、「怒ればなんとかなる」といった妙な思い込みがあるからです。

冷静になれば、いくら怒鳴っても相手は委縮するか反発するだけだとわかるでしょう。

怒る行為に効用があるとしたら、ただひとつ。

「問題がここにある」と過激に指摘することだけです。

しかし、怒りにまかせて問題を指摘したところで、相手は決して納得しません。

また、問題が解決することもありません。

もし、誰かがあなたに怒りをぶつけてきたときは、「この人はなんの問題を指摘しているのだろう」と考えれば、それで十分です。

たとえば、上司が「結論から言え!」と部下を叱ったとします。

それは、「報告がまわりくどい」と問題を指摘しただけです。

だから、叱られたほうは、次からは、端的に現状報告をすればいいわけです。

短気な上司がどんなに激昂しても、「この人は、怒れば問題が解決すると思っているのだな」と、指摘された問題だけ捉えて、余計な怒りは受け流せばいいのです。

そもそも人が怒るのは、「自分が正しい」と信じているからです。

しかし、その「正しいこと」すらあいまいなものであって、変化するものです。

それがわかっていれば、一時的にムッとすることがあっても、さほど激しい怒りにはならないはずです。

「自分の言っていることはどんな場合も正しい」と思い込むのは、仏教からもっとも遠い感情です。

だから、「怒る」行為をとても嫌います。

苦しみを生み、悟りを妨げる三つの毒「三毒」《貪瞋痴(とんじんち)/貪(むさぼ)り、怒り、愚かさ》のひとつに数えられるほどです。

「あっ、また怒ってしまった」と思った時点で、もう一度本当に自分が正しいのか、再検討する余地があると考えてください。

およそ物事は、ある一定の条件でしか成立していません。

怒りに翻弄されたくなかったら、この考え方を頭にたたき込んでいたほうがいいでしょう。

ちなみに、当座の怒りを鎮めるには、怒りの相手から物理的に離れることをお勧めします。

また、立っているのではなく、床に直接座ってしまうことが効果的です(椅子よりはるかに効果的)。

『禅僧が教える 心がラクになる生き方』アスコム


「怒りは相手を苦しめるのではなく、自分を苦しめる」

という仏教の教えがある。

怒りは、まことにやっかいだ。

いくつになってもコントロールが難しい。

そして、怒ってしまったあとは必ず、悔やむ。

力で圧倒し、相手に分からせようとしたり、自分の正しさを押しつけようとする。

そして、「自分を認めて欲しい」、「なぜわかってくれないのだ」という気持ちが、ゆがんだかたちで出てしまったのが怒り。

「アンガーマネジメント」という1970年代にアメリカで始まった心理トレーニングの方法がある。

これは、怒らないことではなく「怒りをコントロールすること」であり、「怒りと上手につき合うこと」。

それはたとえば、「衝動をコントロール」すること。

衝動をコントロールするとは、「最初の6秒をやりすごす」こと。

よく、「腹が立ったら十、数えよ」などといわれるが、間を置け、ということ。

いくつになっても、怒りをコントロールする努力を重ねたい。



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