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2019.6.9

変化しない者は生き延びられない

早稲田大学ビジネススクール教授、内田和成氏の心に響く言葉より…

いま、業界そのものが消えてなくなったり、あるいは他の業界と融合してしまったりする事態が、そこかしこで起きています。

あなたの事業も、いまのままの業態で将来も安泰だといいきれますか。

もはや当たり前となった、業界の垣根を越えた顧客の奪い合い(異業種競争)。

販売チャネルやコスト構造、得意とする技術や業態、ブランドイメージがまったく異なる相手と戦う場面はますばかりです。

異業種競争は、これまでの競争戦略では説明できません。

従来の競争戦略は「同じ業界内での競争」を前提としたものであり、そこで起きる新規参入や取引先との力関係を説明したものだからです。

これまでの競争のルールが通用しない例を紹介しましょう。

世界最大のサーバー貸し出し事業者は、アマゾンです。

同社が提供する「Amazon Web Services(AWS)」はクラウドサービスにおいて世界で最も大きなシェアを占めています。

そして、それを追いかけているのがマイクロソフトやグーグルです。

かつて、サーバー貸し出し事業ではIBMやヒューレット・パッカード(HP)などのハードメーカーが主役でした。

では、短期間に、なぜ、主要プレーヤーが入れ替わってしまったのでしょうか。

理由は、アマゾンやグーグルが、世界中に展開している自社のデータセンターやそこにおいてあるサーバーをユーザーに貸し出すというサービスを始めたからです。

アマゾンやグーグルはすでに自社で巨大な設備を持っており、その一部を中小企業などに貸し出すのです。

そのため、ゼロからの投資ではありません。

むしろ、外部に貸し出すことで、設備投資においては「規模のメリット」を享受できます。

また、外部に貸し出すことで需要を平準化できるため、より効率的に運用することができるようになります。

こうした利点を活かして、アマゾンは、きわめて安価なクラウドサービスの提供を始めたのです。

これが中小企業などのニーズをとらえ、シェアが急伸しました。

余っている設備の有効活用ですから、安いに決まっています。

着々と実績を積んだ結果、大手ユーザーの信頼を勝ち得て、いまではNTTドコモやソニー銀行などもユーザーになっています。

これまで十分な利益を享受していたビジネスに、まったく異なる世界から価格破壊者が現れて、競争のルールが一変してしまったのです。

さらにアマゾンは、自社の倉庫でも、新たな仕組みをつくり上げようとしています。

それは、「ロケーション管理」という考え方がない、まったく新しいタイプの自動倉庫です。

ロケーションとは、倉庫内の保管場所を示す住所のようなものです。

通常は、倉庫内で欲しいものをすぐに探しだせるようにするためにロケーションを決めて、エリアごとに似た分野の商品をピッキングしやすいように管理する必要があります。

しかし、アマゾンの自動倉庫では、まったくそうした管理がされていません。

同じモノが複数の場所に別々に置かれていることもあります。

似た分野の商品をピッキングしやすくするためのエリア分けもされていません。

その代わりに、コンピューターやロボットによる自動化が徹底されています。

たとえ複数の場所に同じモノがあったとしても、自動的にそれらを集めてきて出荷できるようになっているのです。

これは、従来の倉庫業の常識を覆すものです。

この仕組みであれば、熟練者でなくても誰でも倉庫管理に携わることができるようになります。

また、アマゾンでは、こうした仕組みを武器にして、在庫保管や受注、配送業務などの請負サービスをすでに始めています。

将来は、前述したクラウドサービスのように、既存の物流業や倉庫業の競争のルールを破壊してしまう可能性もあります。

このように、いつどんな手法で誰が攻めてくるかわからないのが異業種競争です。

新たに持ち込まれた戦い方が競争のルールを破壊してしまえば、それまでの企業の勝ちパターンは簡単に失われてしまいます。

しかし、新たな勝ちパターンをつくるという側に立てば、新規事業やイノベーションを起こすための視点を持つことができます。

自社の事業領域をさらに広げたいと考えている人にとって、いま起きている戦いはチャンスです。

『ゲーム・チェンジャーの競争戦略 ルール、相手、土俵を変える (日経ビジネス人文庫)』


ITやAIの進化により、ありとあらゆるビジネスの、競争のやり方やルール、そしてその土俵そのものが変わってきている。

相撲の土俵の上で戦っていると思ったら、気がついたらサッカー場で戦っていた、というくらいの大変化だ。

まさにルールのない異業種格闘技であり、体重や体格の制限もない無差別級での戦いだ。

これからは、これまでにないビジネスをどう作っていくか、生み出せるかがカギとなってくる。

そして、業界の常識を打ち破り、競争のルールを変えることができるのか。

内田氏は本書の中でこう語る。

『異業種競争は、今後もさらに激化していくでしょう。

そうした点では、何でもありの時代です。

変化すれば生き残れるかというと、それほど甘くないかもしれません。

しかし、「変化しない者は生き延びられない」ということだけは確かです。』

あらゆる競争のルールが変わる時代…

「変化しない者は生き延びられない」という言葉を胸に刻みたい。



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