2019.5.2 |
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デジタルデバイド |
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大前研一氏の心に響く言葉より…
いま40代・50代の人たちは、2040年に老後があると思ってはいけない。
60代・70代になっても仕事をやりまくっている自分をイメージし、そういう方向にマインドセットしていかねばならない。
もちろん、健康維持のためにも体を動かし続けて強化していく必要がある。
つまり、考え方の基本的な枠組みを変えていくべきなのだ。
さらに付け加えれば、21世紀は「答えがない時代」である。
いま学校の教科書に書かれているような「すでに分かっている事実」についての問いは、パソコンやスマートフォンで検索すれば、「答え」などすぐに見つかる。
もはや試験で暗記知識を問うことに意味はなくなり、シンギュラリティが訪れる2040年は、その領域が飛躍的に拡大しているだろう。
一方、「地球温暖化をどう止めるか」「少子高齢化が進む日本で経済的繁栄をどう維持するか」といった、「あらかじめ決まった答えがない問題」に対しては、答えをみんなで見つけていかねばならない。
そうした未来社会の姿を考える時、いま40代・50代のサラリーマンは、死ぬ瞬間に「楽しくて充実した人生だった」と言えることを目標に、そこから逆算して残りの会社人生と定年退職後の人生を設計すべきだと思う。
定年退職するのが60〜65歳、死ぬのが80〜85歳とすれば、定年退職後の人生は20年もある。
しかも、これから年金の支給開始年齢が引き上げられたり、支給額が減らされるなど、社会保障がどんどん削られていくことは確実なので、多少の蓄えがあっても20年はもたないだろう。
もし資産に余裕があって平穏無事な引退生活を送ることができたとしても、日がな一日ごろ寝をしながらテレビを見ていたり、朝夕に犬と散歩をしたり、たまに旅行に出かけたりする程度だったら“いける屍(しかばね)”のようなものであり、精神も肉体も文字通り老化して、死ぬ瞬間に「楽しくて充実した人生だった」とは言えないと思う。
したがって、定年退職後も“引退モード”に入るのではなく、「現役時代よりも加速する」というメンタリティを持ち、キャッシュを稼ぎながらやりたいことをやって人生を能動的に楽しまなければならない。
そのためには、会社に勤めている間に定年退職してから手掛ける仕事(できれば起業が望ましい)の「予行演習」をしておく必要がある。
それを40歳で始めれば、3〜4年かけて実現できる新規事業などに60歳までの20年間で5〜6回チャレンジできる。
50歳で始めたとしても、2〜3回は可能である。
そのチャレンジに全部失敗したら、定年退職後も稼ぐことは諦めておとなしく引退し、隠居したほうが賢明だろう。
サラリーマンは45歳までに出世していなかったら、もうその会社で出世する見込みはほとんどない。
出世していたとしても、それはたまたま運の良い部門の仕事を担当したり、上司に目をかけられたりしたことによる「他人任せ」の人生だ。
自分の人生は自分自身で操縦桿を握ってコントロールすべきであり、そのためには40代・50代で定年退職後に手がける仕事や起業の予行演習を重ねておかねばならない。
その結果、60代・70代になって自力でキャッシュを稼ぐことができるようになれば、会社の出世競争で負けたとしても、人生の競争では勝てるのだ。
定年退職後もキャッシュを稼ぎ続けることを目指す場合、心得ておかねばならないビジネスの対前提がある。
それは、20世紀と21世紀では経済を動かす根本的なルールが一変した、ということだ。
21世紀の「見えない大陸(インビジブル・コンチネント)」の経済原則は、実体経済の空間に加えてサイバー経済の空間、ボーダレス経済の空間、マルチプル経済の空間という4つの要素で成り立ち、富はプラットフォーム(共通な場を形成する役割を果たすスタンダード)から生まれる。
いま世界で繁栄しているのは、国ではなく「地域」である。
いわゆる「メガリージョン」や「メガシティ」で、その象徴はアメリカのシリコンバレーとサンフランシスコ・ベイエリアだ。
中国では、40年前は人口30万人の寒村だった深?(しんせん)がICT(情報通信技術)の一大拠点になって人口1400万人のメガシティに急成長し、周辺の香港や珠海(しゅかい)などを巻き込みながら、さらに発展を続けている。
「都市国家」の代表であるシンガポールも、金融業、ICT、生化学などを中心に世界中から繁栄を呼び込んでいる。
「国土の均衡ある発展」という幻想に取り憑(つ)かれた日本は、未だに「地方創生」とか「東京一極集中の是正」を叫ぶ人が多いが、世界でそんなことができたところはない。
イギリスでもフランスでも、ロンドンやパリの一極集中を是正できた政治家はいない。
メガリージョンやメガシティの成長を支えているのは、国家や政府ではなく企業であり、企業を牽引する「個人」である。
傑出した個人「I」がつながって組織「We」をさらに強くするのが21世紀の特徴なのだ。
ICT時代のネットワーク社会では「I」よりも「We」のほうが、必ず優れている。
それが「集団知」というものであり、集団知が重層化すればするほどその組織は強くなる。
旧態依然のピラミッド型組織や政府主導の護送船団方式の成長モデルは、もはや通用しないのだ。
時価総額10億ドル(約1100億円)をこえる非上場の「ユニコーン企業」として名前が挙がるのは、アメリカと中国を中心に世界に約300社ある中で、日本企業はAIの研究・開発を手がけるプリファード・ネットワークス1社だけというお粗末な状況だ。
日本企業は、従来のカルチャーと給与制度を大きく変え、傑出した人材を世界中から集められるようにしなければならない。
そして一人一人の個人は、かつてリクルートが採用していた、いわゆる「38歳定年制」を自分に課したつもりで、世界のどこに行っても通用する新しいスキルを磨いていくべきである。
日本の社会保障制度は、「団塊の世代」のすべての人が75歳以上の後期高齢者になる2025年に医療と介護の社会的費用がピークを迎え、ほぼ確実に破綻の危機を迎えるといわれている。
となれば、いま40代・50代の人たちに限らず、すべてのサラリーマンが定年退職後も「稼ぐ」必要があると肝に銘じ、現役時代から入念な準備をしておかねばならない。
2040年の日本に「老後」は存在しないのだ。
『50代からの「稼ぐ力」:会社にも年金にも頼らず生きる方法』小学館
大前研一氏は「稼ぐ力」を身につけるには、「デジタルの河」を渡れ、という。
『クラウドコンピューティングやクラウドソーシングと言われても、ITにそれほど詳しくない向きは、思わず頭を抱えてしまうかもしれない。
事実、現代のデジタル社会では、「デジタルデバイド」(情報格差)がますます広がっており、IT技術を使いこなせる人は“向こう岸”に渡れるが、使いこなせない人は“こちら岸”に取り残されてしまっている。
自分と同じ世代を見渡しても、ほとんどが“こちら岸”だろう。
であるならば、なおさらチャンスである。
意を決して、自分から“向こう岸”に渡り、必死に勉強してみると、新たなセグメントが見えてきた。
このことで得た結論は、“こちら岸”で経験して蓄積された知識や思考は“向こう岸”でも十分に役に立つ、ということである。
自分より若い人間がいくらIT技術に強かったとしても、彼らには蓄積された経験がない。
“向こう岸”に渡ったことで、その経験が強みになったのだ。
渡ってみれば分かるが、“こちら岸”と“向こう岸”を隔てている溝は、深くも広くもない。
では、なぜデジタルデバイドが広がっているのかと言えば、シニア世代が今までの経験に胡坐(あぐら)をかき、新しいことに挑まないからだ。
経験を持ったシニア世代こそ、積極的にサイバー空間を目指すべきなのである。
とどのつまり、サイバー空間は“慣れ”でしかない。
たとえば、今の高校生に「〇時〇分に〇〇駅北口に集合」と言えば、さっとスマホを取り出し、「ナビタイム」や「乗換案内」などのアプリで、すぐに生き方を調べるだろう。
要らなくなった物を「メルカリ」で売る。
「LINE」でいろいろな人とつながる。
こうしたことが疑いもなく享受され、何かしたいとなったら、彼らはまず「グーグル」や「ヤフー」で検索したり、スマホのアプリを探したりするのだ。
そして、ほぼすべてのほしい物や情報を、サイバー空間で手に入れる。
彼らは生まれながらにしてサイバー空間の住人なのだ。
シニア世代は、これからもお金を稼ぎ出そうと思うならば、遅かれ早かれ、サイバーの世界に飛び込むしか手がないのである。
最初は主張旅費精算にソフトを導入する、といった程度でかまわない。
自分の会社を「サイバー化する」という気概で、何か一つでもよいから取り組んでみるのだ。
あなたがリーダーとして、「自社サイバー化」の旗振りをしたとしよう。
プロジェクトが軌道に乗った暁には、あなたはすでに“向こう岸”の優秀な人間になっているはずだ。』
今、40代、50代の人も、あるいは60代の人であっても、「デジタルが苦手」などと言っている場合ではない。
文系であろうと、理系であろうと、デジタルを使いこなさなければ、これからの世の中を渡っていけないからだ。
簡単な例で言うなら…
スケジュールを手帳ではなく「Googleカレンダー」等を使っていて、それを共有している人がいるか。
フェイスブックやブログなどのSNSや、LINEやフェイスタイムやGメールやメッセンジャーを使いこなしているか。
新聞や情報はスマホで常時取っていて、重要なメモはEvernote等に入れているか。
マネーフォワードなどの家計簿ソフトを使ったり、電子決済をスマホでしているか。
アップルウオッチ等のスマートウオッチや最新のウエアラブル端末あるいは、アレクサ(スマートスピーカー)等を使っているか。
飛行機やホテルや新幹線の予約がスマホでできるか。
ウーバーや、Airbnbなど、話題のアプリがスマホに入っているか。
等々、書き出せばきりがないが、50歳を過ぎるとこれらのことに興味がない人は驚くほど多い。
「デジタルデバイド」(情報格差)は今後ますます広がっていく。
いくつになっても、好奇心を持ち、新しいことにチャレンジする。
苦手意識を持たず…
何らかの形でデジタルに触れ、チャレンジする習慣を持ちたい。 |
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