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2019.3.14

後ろ姿を見せること


精神科医・医学博士、斎藤茂太氏の心に響く言葉より…

「父親不在」と言われてだいぶ経ちます。

しかし、「母親不在」という言葉はあまり聞きません。

仕事で忙しい父親が帰宅したときには、小さな子どもはすでに就眠しており、子どもが朝、目が覚めたときには、父親はすでに出勤して家にいない。

父親が、子どもとお互いに顔を合わせるのは、休日くらい。

その休日に、父親が「接待ゴルフ」で外出してしまっては、子どもは、父親の実像を知らないまま成長することになってしまう。

バブル経済期の、ごくありふれたサラリーマン家庭の日常風景です。

10年程前になると思うが、『父性の復権』(林道義・中公新書)という本がベストセラーになりました。

これは、現在、日本では健全な父の権威が家庭から消滅の危機に瀕しているので、ここで取り戻しておかないと、将来面倒なことになる、そんな問題提起が多くの読者に支持された結果でしょう。

いまでも、父親の実像を知らないということでは、そんなに変わっていないのではないか。

実像を知らない子どもは、父親の勤める会社の名前を知るのが、精一杯というところでしょう。

子どもにとって、父親は極めて不透明な存在なのです。

家族のなかから、会話などのコミュニケーションが欠ければ、どんなことになるか、もはや言うまでもありません。

指針となるべきお手本がなければ、苦労するのは子ども自身です。

父性の復権から察すれば、母親が健在なだけに、どうやら父性が、家族をしっかりさせるキーポイントのような気がします。

男女平等の社会と言っても、父親の役割は、きわめて重要なのです。

こういう状況では、父親を尊敬しなさい、と言ってもとうてい無理で、現実を見失ってこころに傷を負っている子どもたちが、後を絶たない訳を垣間見るような気がしました。

やはり父親の真の姿をきちんと子どもに伝えるべきなのです。

そのためにも、父親は、機会を見つけて、自分の仕事の話をしてやるべきです。

実際に我が子を職場に連れていければ最高ですが、そうそう簡単にはできない、日本の特殊事情もありますので、まずは、仕事の内容、仕事で苦労するとき、嬉しいとき、やりがい、などいろいろあるはずです。

子どもは、父親の本当の姿を知って、家族の一員として自分を実感するはずです。

『人生に必要な100の言葉』青春出版社


松下幸之助氏は成功する人が備えていなければならないものとして次の3つをあげたそうだ。(大事なものは見えにくい・鷲田清一)より

それは、「愛嬌」と「運が強そうなこと」と「後ろ姿」。

愛嬌とは、可愛(かわい)げのあることであり、これは男女を問わず必要なこと。

可愛げがなければ、上の人が引っ張り上げてくれない。

また、運がなさそうな人に、大事な仕事を任せる人はいない。

そして、人は「後ろ姿」を見て育つ。

100の言葉で説明するより、その人の後ろ姿を見せるほうが説得力がある。

リーダーは後ろ姿で決まるからだ。

後ろ姿を見せる必要があるのは、家庭でも同じ。

父親の生きざま、母親の生きざまを見せること。

ロールモデルとは、お手本になる人のことだが、子どものロールモデルが両親だとしたら、これは親にとって最高のほめ言葉だ。

後ろ姿で人生を語りたい。


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