2019.2.1 |
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「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す |
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中野明氏の心に響く言葉より…
テレビ局の元プロデューサーで、現在は現役を引退している私の知人が、こんな言葉をつぶやいたことがあります。
「私たちの時代は本当に良かった。先輩のやり方を真似ていれば、万事うまくいきましたからねぇ…」
いまこの本を手に取っている人がこの言葉を聞いたとしたら、なんともうらやましい話だなぁ、と感じるに違いありません。
というのも、現代は過去の延長でものごとを判断したり行動していては、思うような成果が出ない時代に突入しているからです。
たとえば、かつては「モノ作りは日本のお家芸」などと言われたものです。
しかしいまやモノ作りの拠点は海外に移転し、「お家芸」などと言うのがおこがましい時代です。
落日の典型が家電業界や家庭向けゲーム業界でしょうか。
すでにサンヨーの名は世の中から消え、シャープの経営危機は続いています。
あのソニーでさえ輝きを失い、任天堂の売り上げはつい先頃まで下降するジェットコースターのごときものでした。
先の知人が所属していたテレビ放送業界も例外ではありません。
ネット回線を利用した画像配信サービスのネットフリックスがいよいよ日本に上陸し、視聴者が観たいときに自由にテレビ番組や映画を観ることができるようになると業界の再編は必至です。
もはや先輩のやり方を真似ているだけではどうにもなりません。
組織は右肩上がりで成長し、人は年功序列で出世して、やがて悠々自適の老後を送れる世界など、もはや幻想です。
不毛な消耗戦から脱却するに当たって注目を集めているのがイノベーション、つまり革新的な手段や方法です。
そもそもイノベーションの重要性を最初に説いたのは、経済の動態的な発展とその要因について研究した経済学者ヨーゼフ・シュンペーターです。
シュンペーターはこの非連続的な発展、従来の軌跡とは異なる軌跡上での発展こそが、経済の動態的発展だと考えました。
そしてシュンペーターは、この非連続的な経済発展の原動力になるものこそがイノベーションだと考えたのです。
イノベーションは、既存の人やモノの結合を解体して、従来とは異なる新たな結合の実現、すなわち「新結合」によって達成されます。
この活動は古い秩序を破壊して新しい価値を創造することです。
ですからイノベーションとは「創造的破壊」でもあるわけです。
そしてこれが「ゼロ」から「1」をつくる本当の意味です。
つまり「ゼロ」とは「無価値なもの」、「1」とは「価値あるもの」の象徴的な表現にほかなりません。
不毛な消耗戦からの脱却に求められているのは、既存路線の延長線上での連続的発展ではありません。
従来の秩序からズレたところ、いわば従来と異なる軌跡の上に新たな価値を創造する非連続的な発展です。
そして、その有力な手法の1つが「デザイン思考」なのです。
「デザイン思考」とは、《イノベーションを生み出すために、卓越したデザイナーの思考法を活用すること》。
『超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す』Gakken
「デザイン思考」について本書の中にこう書いてある。
『■ 1のものを100にする試みではなく、ゼロから1を生みだす試み
■ 「開発者の視点」でなく、「生活者の視点」からの問題解決
■前例や合議よりも、希望と願望を優先させたプランニング
■失敗の繰り返しを前提とした前向きなアプローチ
■「こうあるべきだ」でなく「あったらいいな」という、人々の共感を大切にするマインド
論理思考ではフォローできない、人間重視・生活重視の思考、それこそが「デザイン思考」なのです!』
そのために必要なのが、「共感力」。
一旦自分の意見や主張を捨て、問題や課題と寄り添い、それに共感する姿勢。
次に必要なのが、「フレーミング力」。
視点を変え、視点をズラして、真の問題は何かを探る力。
そして、大事なのは「常にトライする力」。
失敗をおそれず、まずやってみる、そして成功するまでそれを修正し続ける力。
ポジティブ思考で、量をこなし、失敗しながら進む。
すぐれたアイデアや発想のコツは、組み合わせにあり、それをあきらめず、考え続けた人だけに降りてくる。
「デザイン思考」でゼロから1をつくり出したい。 |
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