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2019.1.3

何かを成し遂げた人は、みな感激性が高い

安岡正篤師の心に響く言葉より…

《早く老いることの原因は、肉体より精神にあります。

精神に感激性のなくなることにあります。

物に感じなくなる、身辺の雑事、日常の俗務以外に感じなくなる、向上の大事に感激性を持たなくなる、これが一番いけません。》(安岡正篤)

明治時代は我が国おいて最も若い感性にあふれた時期でした。

黒船の来航をきっかけに長く続いた幕藩体制が崩壊し、近代日本の黎明期(れいめいき)となったのが明治です。

この時代の指導者はすぐに感激して泣いたと安岡は指摘しています。

「明治の人達、といっても詔勅に関係ある人達ですから、当代一流の人物ばかりでありますが、みなよく泣いておる」

「兎(と)に角(かく)昔はよく泣いておる。天下国家を論じては泣き、書を読んでは泣いておる」(論語に学ぶ・安岡正篤)

この時代の指導者たちの感激性は天下や国家を論じ、何をなすべきかという「義(すべきこと)」に重きを置いたところにあります。

彼らの精神的な感激性が世俗的な欲求から解脱させていました。

しかし、時代がくらるにつれて義は廃れ、利害や打算を胸に私利私欲に走るという小粒な指導層が現われます。

すると「利(り・お金)」のために特権を使うようになり、これを法律で取り締まろうとする現代では誰も泣かなくなりました。

この感激性が薄れた時代とは「民族精神の悲しむべき衰退に外ならない」(同書)と安岡はいいます。

『安岡正篤 運命を思いどおりに変える言葉』(池田光)イースト・プレス


行徳哲男師にこんな言葉がある。(感奮語録)より

『孔子は喜怒哀楽の激しい人だった。

「憤(いきどおり)を発して食を忘れ、楽しみて以(もっ)て憂(うれい)を忘れ」と《論語》にもあるとおり、弟子の顔回が殺されたときには辺りはばからず泣きわめいた。

そのときの様子は「慟哭(どうこく)」という言葉のいわれになっているほどである。

四大聖人の一人と崇(あが)められるほどの孔子ですらこれほど感情を露(あらわ)にした。

喜怒哀楽してこそ悟りなのではないか。

喜怒哀楽は人間の一番自然な姿である。

自然とは自然(じねん)であり、自ら燃ゆるである。

つまり、自らのエネルギーが起爆する状態が自然なのである。

喜怒哀楽を失うことは不自然な状態。

自然しない状態である。』

そして、こうも語る。

『感動なき民族は滅びる。

感激なき人間は二十一世紀に生き残ることはできない。』

感激性を失ったとき、人としての魅力は失われる。

およそ、つまらない、木偶(でく)のような、感性なき人間に何の魅力があろうか。

かつて、江戸城を無血開城に導き、命懸けで江戸を火の海から救ったのは、幕府としてたった一人で敵陣の官軍に乗り込んだ、山岡鉄舟だ。

鉄舟は西郷隆盛に対し、涙を流してその是非を説いたという。

涙ながらの説得に、最後は、西郷も目に涙を浮かべてその申し出を了(りょう)とした。

鉄舟も西郷もまた、涙の人であった。

「何かを成し遂げた人は、みな感激性が高い」

感激性の高い人間でありたい。



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