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2018.12.1

来た船に乗ってしまう

明治大学教授、齋藤孝氏の心に響く言葉より…

私はチャンスの女神は前髪しかない、という絵を見たことがあります。

たしかに前髪しかなくて、後頭部は見事にはげていました。

チャンスの女神の後ろがはげている絵があまりに強烈で忘れられなくて、何かあるたびに、あの絵がまざまざとまぶたに浮かんできます。

私はひょんなことから朝の報道番組を毎日帯で担当するオファーを引き受けました。

私のように朝起きるのが苦手な上、ただでさえ忙しい人間にとって、朝の番組は絶対に引き受けてはならないものでした。

それにこれ以上仕事を増やさなくても、うまく回っているのですから、番組のオファーを断ってもまったくかまわなかったのです。

でもその時浮かんだのが、後頭部がはげた女神の絵でした。

オファーにはタイミングがあって、その時しかできない経験があります。

私は小学校の頃から、日本を明るく前向きにしたいと漠然と思ってきたので、番組を通してそれが表現できる機会が与えられたのなら、チャンスを生かそうと思いました。

別に成功も失敗もありません。

チャンスがあればやってみる。

そうすれば経験知が新たに加わります。

経験は余裕につながります。

ですからチャンスがあった時は、好き嫌いとか、得手不得手で判断せず、とにかくやってみるのがいいと思います。

結婚も同じです。

自分を好きだと言ってくれる人がいれば、それはひとつの機会です。

この人と結婚してうまくいくのかとか、親はどんな人たちなんだろうなど、いろいろ深く考えてしまうと二の足を踏んでしまい、婚期を逸してしまうこともあります。

あまり深く考えずに、機会としてとらえていく身軽さがあると、いいのではないでしょうか。

要するに、深く考えてすぎて結局行動しないよりは、来た船に乗ってしまうほうがいいのです。

受験生が第一志望の大学に行きたいと思っていたのに、第二志望の大学に来てしまったとします。

その時感じる挫折やコンプレックスなどいろいろあることでしょう。

でも入学した大学という船に乗ったのですから、その場所で活躍しようと思えばいいわけです。

何事にも「その時来た船」があります。

「好き」という感情から出発しないで、結婚相手を年収や学歴、身長、健康状態などさまざまな条件をあてはめて選ぶのであれば、かえって選択ができにくくなってしまいます。

そうではなくて、もっとトータルに「縁」というものをきっかけにして気軽にとらえていくのが「運」がいい人になるコツなのではないでしょうか。

『運の教科書: 「うまくいく人」はこう考える (単行本)』筑摩書房


小林正観さんは、人からの「頼まれごと」を気持ちよく引き受け続けていくと、そこに人生における自分の役割が見えてくる、という。

「頼まれごと」とは、齋藤孝氏のいう「その時来た船」だ。

逆に言うなら、人からの「頼まれごと」をなんだかんだ文句を言って引き受けなかったり、嫌々渋々引き受けるような人にはだんだんと「頼まれごと」はやってこなくなる。

つまり、「その時来た船」と言うチャンスがやってこなくなる。

『思考の向きが前向きでポジティブだと、失敗してもすぐ次にチャレンジするので、チャンスが多くなります。

一方ネガティブな人はチャレンジするのに消極的ですからチャンスが少なくなるので、いよいよ落ち込んでいくというサイクルになります』(齋藤孝)

失敗の数をかぞえるのではなく、チャレンジの数をかぞえた方がいい。

それが「頼まれごと」。

あまり深く考えず、来た船に乗ってしまう人はチャンスが多い。

多くチャレンジをし続ける人でありたい。



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