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2018.11.13

大人の対応力

明治大学教授、齋藤孝氏の心に響く言葉より…

今、世の中はどんどん軽やかな文化になりつつあります。

よく、日本から「大人」がいなくなったという話も聞きますが、私はそうは思いません。

全体的に若々しくなった、ということなのです。

昔と比べて、電車のマナーは格段によくなってきていますし、公共機関のサービスの質もどんどん上がっています。

もちろん例外もありますが、それらは常識が行き渡り、社会が成熟している証拠でしょう。

つまり、全体的に人々が“きちんと”してきているわけです。

かつての大人(中高年)には、どこか不機嫌そうでいかつく、重たいイメージがありました。

昔の文豪であれば、不機嫌そうにしていても周囲が気を遣ってくれるかもしれませんが、今はそういう時代ではありません。

つまり、重く威圧的な大人は、時代とマッチしないのです。

不機嫌そうにしているだけで職場の雰囲気を重くしますし、その不機嫌さ自体が、ある種のハラスメントにつながりかねない世の中です。

軽やかなスピードがあって、いつも笑顔で上機嫌。

周りの雰囲気をやわらかくし、趣味や愚痴を言われてもおおらかにふんわりと受け流す。

修羅場のようなシチュエーションでも、それ自体を面白がる余裕を持ち、白黒はっきりつけようとせず、むやみに一喜一憂しない。

そんな人物こそが、今の時代に求められるスマートな「大人」だといえるでしょう。

ところが、これだけ社会が成熟し“きちんと”しているにもかかわらず、かつてと比べて、ストレス耐性が弱くなっているという事実があります。

昔ならざらにあったようなことでも心の傷となり、ひどい場合はトラウマとなって病院に通う人も少なくありません。

そこで求められるのが、「大人の対応力」です。

「大人の対応力」とは、いわばディフェンス力。

言い換えれば、自分が傷つかないように対応できる力のことです。

自分をきちんとコントロールできる大人は、多少の攻撃にあっても傷つくことがありません。

なぜなら、どんな場面においても、フレキシブルに対応できる力があるからです。

決してカッとせず、ムッとせず、力まず、やらわかい選択肢を考えます。

当然、不用意に他人を傷つけることもありません。

自分自身をコントロールして、きちんと大人の対応をしておけば、「あいつにこんなことを言われてしまった!」「どうしてあのとき、あんなことを言ってしまったんだろう」と、根に持つようなこともなくなります。

なぜなら、本当の「大人」は、後で愚痴をこぼさずにすむように、その場でしっかり臨機応変に対応できる力を持っているからです。

大変な苦労をしている人ほど、自分が大きな歯車の中で、いろいろな人や物の助けがあってこそ生きていけるのだと感謝しているものです。

そして、どんなことがあっても「たいしたことないよ」と涼しい顔で言う強さを持ちあわせています。

とても格好いいですね。

こういう人は経験が豊富なので、たいていのことには動じないのです。

これぞ、「大人」の本来の姿ではないでしょうか。

『大人の対応力』ワニブックス


欽ちゃん(萩本欽一)はカッとなることについてこう語っている。(「まけるが勝ち、勝ち、勝ち!」廣済堂新書)より

『「負けるが勝ち」よくこう言いますよね。

僕もそう信じています。

でも、なんで負けるほうが勝ちなんだと思いますか?

僕なりの理由はこう。“負けたほうが運がたまるから”。

誰も必ず人と意見が衝突することがあるけれど、そういうとき「自分のほうが正しい」とか「議論に勝ちたい」って、つい思っちゃいますよね。

でも、そう思ったら負け。

勝とうとすると自分の運が減っていくんです。

カッとなって「てめえ、ばか野郎!」なんて相手に言うと、それだけで運が10ポイントも減点されちゃう。

「てめえ」でマイナス2ポイント、「ばか野郎」で8ポイントの減点。

売り言葉に買い言葉で1時間も相手を罵っていると、それだけで2000〜3000ポイントも運が減ります。

このマイナス分は、なかなか取り戻せないですよ。

だから言い合いになったときは、自分が正しくないかということより、運を減らさないことを大事に考えたほうがいいの』

まさに、大人の対応だ。

カッしたり、ムッとしたりしないため、大人の対応力を身につけたい。



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