2018.10.22 |
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ドラッカー全教え |
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ウィリアム・A・コーエン氏の心に響く言葉より…
ピーター・ドラッカーは現代経営学の父というだけの人物ではない。
彼は、現代的マーケティングの分野を切り拓いたひとりでもある。
40年以上にわたり、「企業が中心とすべきは顧客である」と経営者に説きつづけたのだ。
企業活動はすべて、顧客のニーズに対応し、それを満たすものでなければならない。
そして、顧客価値を生み出すのがマーケティングの目的である、と。
私は、ピーターが企業に問いかける4つの質問がすごいと思った。
● 自社の中核をなす事業はなにか。
● 顧客はだれか。
● 顧客はなにに価値を見いだすのか。
● 中核事業でどういう成果をあげるのか。
質問は、もちろん、のちにもうひとつ増えて5つとなる。
追加の質問は、当初、「それについてなにをするのか」だったが、最終的には「どう実現していくのか」に落ち着いた。
ピーターは、P&Gやインテルといった企業のCEOと会うたび、この問いを投げかけていた。
そして、この質問に答えようとすると、多くの発見が得られると彼らは口をそろえたように言う。
私も、コンサルティングをする際、同じような質問をしている。
ピーターの本や言葉は、マーケティングや顧客についての金言にあふれている。
その一部を紹介し、若干の解説をしたいと思う。
「企業の目的は顧客の創造である」と彼は語っている。
「企業の目的とは利益の創造であり」という当時の常識と真っ向からぶつかる見解だ。
当時の経営者が常識としていた考えは、利益をどう生み出すのかという大事な部分が抜け落ちた空論だとピーターは見ていたのだ。
大事なのは顧客を生みだすこと。
そのために、企業は、競合他社より高い価値(=便益から費用を引いたもの)を提供できなければならない。
利益をもたらしてくれるのは顧客のみなのだから。
「企業の基本的機能はイノベーションとマーケティングのふたつだけで、ほかはすべてコストだ」とも語っている。
もちろん、その他の機能もなければ企業が回らないし、そのような機能による貢献があるのもわかた上で、彼は、このふたつを特に取りあげたのだ。
イノベーションとは、消費者の好みや技術が変化していくなかで企業が立ち止まるわけにいかないことを意味している。
マーケティングがしっかりしていなければ、製品について顧客に学んでもらうことができない。
つまり、その機能や価格や存在場所などを知ってもらえない。
イノベーションだけでもマーケティングだけでも企業が成功することはなく、成功には両者を兼ね備えている必要がある。
マーケティングと営業の違いも彼は明確にした。
「マーケティングの目的は営業を不要にすることだ」という彼の言葉は、経営者にとって驚きだった。
顧客の欲求を深く理解し、販売促進などしなくても顧客が列をなして買うほどの製品を作るのが大事だというのが彼の考えである。
車などの製品をまず設計し、そのあと、だれにどう売り込むのかを考えるようではだめだ、まずターゲットする顧客と製品の目的をしっかり把握し、その顧客が満足する車を設計するほうが合理的というわけだ。
『ドラッカー全教え ~自分の頭で考える技術~』大和書房
本書の中でこんな逸話が紹介されていた。
『ゼネラル・エレクトリック(GE)「伝説の経営者」と呼ばれるジャック・ウエルチが経営コンサルタントのドラッカーと対面したのは、CEO就任直後、1981年のことである。
そのときドラッカーはふたつの問いを発しただけだったが、その結果、GEの未来が大きく変わった。
たった2つの問いが、ウエルチのCEO在任中に数千億ドル規模の違いを生み出したのだ。
ちなみに質問は次の2つである。
●GEという会社をこれから作るのだとしたら、いまのような事業としますか。
●ひとつめの問いに対する答えがノーの場合、どうされますか。
この問いに対するウエルチの回答は、市場で1位か2位になれないのであれば、その事業は立て直すか売却するか整理するしかない、だった。
その結果、株式価値が4000%も上昇するなど、GEの経営であれほどの成功を収められた主因はこの経営戦略にあった』
核心をつく質問は、会社を変え、人の生き方さえ変える力がある。
その質問により、自分の脳の検索エンジンがフル稼働し、その答えを自ら探しはじめるからだ。
そして、自分の頭で考える技術が身につく。
自ら考え続ければ、オリジナルな新しい発想が生まれ、そこにイノベーションが生まれる。
自分の頭で考える技術を身につけたい。 |
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