2018.9.11 |
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全産業「デジタル化」時代 |
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ブロードバンドタワーCEO、藤原洋氏の心に響く言葉より…
私は、海外の10ヵ国以上の「産」「学」「官」の立場の人びとと交流する機会もあり、そうしたなかで認識したのが、「インターネットの登場後、日本だけが負けている」ということでした。
それを端的に表しているのがGDPです。
日本だけが先進諸国のなかでGDPが増えていないどころか、減っているのです。
では、なぜ日本が一人負けしているかといえば、生産者と消費者が直結する「インターネット型産業」に構造変化すべきだったのに、多くの産業分野において、旧態依然とした「ピラミッド型下請け構造」をさまざまな規制によって保護してきたからです。
その結果、多くの産業が衰退してしまい、グローバルな競争で負けています。
これに危機感をもった日本政府は、岩盤規制の改革を打ち出しましたが、その岩盤は非常に分厚く、残念ながらいまだに、規制改革がスピード感をもって進んでいるという状況にはありません。
ちなみに、岩盤規制とは、所管官庁・族議員・業界団体が三位一体となり、改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない規制のことです。
1980年代以降、経済成長の観点から多様な分野で規制緩和が行われてきましたが、既得権益をもつ関係者の反対にあって問題の解決が後回しにされた規制として、医療、農業、教育、雇用などの分野に見受けられます。
岩盤規制によって規制改革が進まないなかで何が起きるかといえば、外来種による日本市場の席巻です。
アマゾンは、日本の流通市場をすでに席巻しています。
それは、日本の消費者が、古い体質の日本企業よりもアマゾンを支持しているからです。
日本企業が、業界保護のために、ネットかリアルかの問題を議論しているうちに、アマゾンは、何でも買える、しかも安く買える時代を創ってしまいました。
インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」であり、従属関係はどこにもありません。
これらを情報システムの方法論に過ぎないと限定的に考えてきたのが日本の組織であり企業なのです。
この点に「日本が負けている理由」があります。
これは、情報通信産業だけでなく、あらゆる企業に大きな変化をもたらすものだったのです。
日本社会は、この本質を捉えきれずに省庁や業界の縦割り構造と相俟(あいま)って、インターネットに適合した制度改革を怠ってしまいました。
その結果、インターネットという技術革新の恩恵に浴することができず、前述した通り、これまでの20年間、主要国のなかで日本のGDPだけが減少し、他国の後塵を拝したわけです。
日本だけが、インターネットによる変化に十分に対応できなかったことこそが、「失われた20年」の原因の本質なのです。
組織や取引形態そのものをインターネット時代に合致したものに変えていく、つまり、組織そのものを従来の「ピラミッド型組織」から「自律・分散・協調型組織」につくり変えることが、日本企業にとっては急務となります。
その目的は、急激な変化への対応スピードのアップとスケーラブル(大規模化も小規模化も容易)であり、自律することで、各参加者(企業)が独立して活躍できるとともに、創造的かつ新しい挑戦ができることが大切です。
自律・分散・協調型組織の運営においては、全体の基本的な共通戦略がまず重要で、その共通戦略を組織全体で共有するためのコミュニケーションを活性化させることも同時に必要になるでしょう。
『全産業「デジタル化」時代の日本創生戦略』PHP
インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」だという。
それは、生産者と消費者との間がなくなり、直接つながるということ。
つまり、中抜きされ、中間搾取(言い方はきついが)がなくなるということでもある。
平成元年の世界時価総額ランキングがあるが、そのときの1位から5位は上から順に、NTT、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行で、やっと6位にアメリカのIBMが入ってくるという日本の総勝ち状態だった。
しかし30年後の、平成30年のランキングでは、1位から6位までがアメリカ企業となり、上から順に、アップル、アマゾン、アルファベット、マイクロソフト、フェイスブック、バークシャー・ハサウェイ。
しかも、その時価総額は30年前の日本の企業の10倍以上になっていて、35位にようやくトヨタが入ってくるが、中国企業や台湾やスイスの企業にも抜かれている。
失われた20年と言われるゆえんだ。
《全産業「デジタル化」時代》
インターネットの本質をつかみ、この大変革の時代を乗り切りたい。 |
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