2018.8.29 |
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好意の返報性 |
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精神科医・作家、樺沢紫苑氏の心に響く言葉より…
以前、私はある病院で認知症専門外来をやっていました。
この外来は、通称「もの忘れ外来」と呼ばれているところで「最近、もの忘れが進んできたのですが」という方が来られるほか、認知症患者の介護をしている家族も相談に訪れます。
介護に抵抗したり、興奮したりする認知症の患者さんの介護は、想像を絶するほど苦しいものです。
その介護が今後何年続くかわからないという不安もあります。
認知症のお舅さんを介護しているお嫁さんから、相談を受けました。
いくら介護をしても、悪口や嫌味、悪態ばかり。
黙って介護されていればなんとか頑張れるものの、精神的にも限界だと。
そこで私は彼女に「そんなあなたの、介護したくなりという気持ちが、お舅さんに伝わっているのではないでしょうか?」と質問しました。
彼女は無言になってしまいました。
介護でも「返報性の法則」は存在します。
イヤイヤ介護していると、それは介護される側にすべて筒抜けになります。
結果として、それが介護への抵抗、悪口や悪態、興奮や暴力など、「悪意の返報性」としてかえってくるのです。
介護する人が心から明るい気持ちで介護していると、介護される側も明るい気持ちになって、気持ちよく介護を受けてくれるのです。
そこで、彼女にアドバイスしました。
1週間だけでいいので、「お舅さんと初めて会った」と思い込んで心の中を空っぽにしてください。
そして、心を込めて、献身的に、笑顔で介護してください。
彼女は最初「そんなことはできません!」と否定的な態度を示していましたが、「1週間で、必ず相手の態度は変わります」と私が断言したのを聞いて、「それなら、なんとかやってみます」と言いました。
1ヵ月後に彼女が来院しました。
陰鬱な表情はどこにもなく、笑顔で言いました。
「おじいちゃんが変わりました!」
数年の介護の結果、悪口や悪態が日常的となり泥沼となった嫁舅関係。
それが、「好意」を持って1週間接しただけで、お舅さんの態度は柔らかになり、悪口や悪態もなくなり、最期には「ありがとう」と感謝の言葉まで口にしたのだそうです。
「好意の返報性」は、非常に普遍的な心理法則ですから、認知症になって理解力の低下した方にも、すべての人に効果があるのです。
重要なのは、最初に「悪意」を引き下げて、「好意」を差し出すのは、自分でなければいけないということです。
言うのは簡単ですが、これはとても難しい。
なぜならば、既に泥沼の関係になっているということは、「悪意」と「悪意」のキャッチボールをしている「悪意の返報性」にすっぽりとはまった状態です。
その状態で、いきなり「好意」を投げるのは、相当の勇気と思い切りが必要となります。
しかし、このように「悪意」を「好意」に変えることによって、人間関係をリセットすることは可能です。
私の経験では、このアドバイスを受けて、きちんと実行した方は、すべて成功しています。
あなたも、泥沼の人間関係を「好意の返報性」によって覆すことが可能なのです。
『「苦しい」が「楽しい」に変わる本 ~ 「つらい」を科学的になくす7つの方法~』あさ出版
本書の中にこんな文章があった。
『映画評論家の淀川長治さんはたくさんの人に映画のおもしろさを伝えた方です。
淀川さんはよく、「私は嫌いな人に会ったことがない」とおっしゃっていました。
私が大学生の頃、この言葉を初めて聞きましたが、「そんなことはないだろう。嫌いな人もいるはず」と思いました。
しかし、私も精神科医になり、人間関係についていろいろと勉強してからは、淀川さんの気持ちが少しわかるようになってきました。
人を嫌いになっても何のメリットもないと気づいたのです。
淀川さんは、出会うすべての人、おつきあいしているすべての人に、自分から先に「好意」のボールを投げていました。
人間は「好意」のボールを投げてくれる人には、「好意」のボールを投げ返してしまいます。
あるいは、最初は「悪意」が返ってきても、「好意」のボールを投げ続ければ、そのうち必ず「好意」のボールが返ってきます。
淀川さんは、その法則を自らの体験から知っていたのでしょう。
ですからいつも笑顔で、朗(ほが)らかに人と接していらした。
常に「好意」のエネルギーを周囲に発散しているから、嫌いな人に出会うことはない、というわけです』
そして、樺沢氏は「人間」は変えられないが、「人間関係」は変えられる、という。
返報性の原理とは、「悪態をつけば、悪態をつかれる」、「優しくすれば、優しくされる」、「大事にすれば、大事にされる」ということ。
これは人間関係だけでなくすべてのことに言えることで、お金を大事にすれば、お金に大事にされるし、健康を大事にすれば、健康に恵まれるということでもある。
好意の返報性によって、人間関係をよくしたい。 |
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