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2018.5.30

もう一度やってみよう


精神科医、斎藤茂太氏の心に響く言葉より…

サーカスの象は、小さい頃に頑丈な鎖でつながれる。

子象は鎖をひっぱって逃げようとするが、まだ小さいので鎖は切れない。

そのうち、逃げられないと観念してあばれるのをやめてしまう。

さて、この子象は年月がたつうちに大人の象になる。

もう、つないでいる鎖など簡単に切れる力をもっている。

ところが、象は決して鎖を切って逃げようとはしない。

象は、鎖が切れなかった経験はあるが、鎖が切れた経験はない。

このため「鎖は切れない」という観念が植えつけられてしまったのである。

人間も、ある部分この象と同じだ。

一度、失敗したことを「これは自分にできないことなのだ」と思い込む。

「苦手意識」を自分で植えつけてしまう。

そして、二度と同じことに挑戦しようとはしなくなる。

しかし、考えてみてほしい。

人間も、子象と同じで、日々成長しているのである。

子どものころやってみてできなかったことでも、今やったら簡単にできることなど、たくさんあるはずなのだ。

いつまでも「これはダメだ」と思っていたら、本当にいつまでもできるようにはならない。

「そこまで」である。

しかし、何度でも挑戦すれば、すこしずつでも状況は変わってくる。

ダメだと思っていたことが、あまりにすんなりできてびっくりすることもあるだろう。

今までの苦手意識が、突然、自信に変わることもあるはずである。

ぜひ、懲(こ)りずに挑戦してほしい。

作家の北杜夫(きたもりお)がこんな話を書いている。

北杜夫は私の弟だ。

まだ、小説家としてデビューする前に自費出版した『幽霊』という作品を、母、輝子が、茂吉の本を出している関係で知り合いの出版社の編集者に見せにいった。

ところが、その人は「優等生の作文。どこといってとりえがない」と突っ返した。

母は「もう小説なんて書くのはやめなさい」と弟に忠告した。

しかし、弟はあきらめなかった。

弟には、どんな優秀な編集者だって、いい悪いの判断は、あとになってみなければわからないという自負があった、という。

結局、弟が信じたとおり、この作品は別の出版社の編集者の目にとまり評価を得た。

そして小説家への道を歩み始めたのである。

今、うまくいかなくても、マイナスの結論を出す必要はない。

できることをまずやって、できなかったことの評価は保留にしておこう。

そしてそのうちに、保留にしておいたことを、もう一度やってみよう。

挑戦すると、きっと何かが変わるのである。

『ほがらかに品よく生きる--モタさんの言葉』新講社


「蚤(のみ)とコップ」という話がある。

蚤は体長2ミリくらいだが、30センチもジャンプすることができる。

自分の身長の約150倍だ。

それほど跳躍力のある蚤を、高さ5、6センチのコップの中に入れてやると、最初はピョンビョンと跳ねて外に出ようとするが、そのたびにガラスの天井(コップ)にぶつかってしまう。

しばらくたって、コップをはずしても、コップの高さより高くジャンプすることができなくなってしまうという。

しかし、その跳べなくなった蚤に、新たな「跳べる蚤」を仲間として加えてやると、それを見てまた跳べるようになるのだそうだ。

「昔やったことがあるができなかった」「前はこういう理由でできなかった」…。

一度や二度失敗したくらいであきらめていたら、世界の発明や発見はこの世に生まれなかった。

まったく同じようなやり方でも、時間や、場所や、器具等、やり方や手順を変えるだけでうまくいくことは多い。

結局はあきらめないことだ。

しつこく、しつこく何度でも鈍(どん)になってバカみたいに挑戦する。

「もう一度やってみよう」

さらにもう一回の挑戦が成功につながる。


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