2018.4.16 |
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親の恩に気づくこと |
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弁護士、西中務氏の心に響く言葉より…
弁護士をしていますと、たくさんの争い事のご相談を受けます。
その大元には恨みの気持ちがあることも多いようです。
恨みというのは厄介で、近しい人ほど恨んでしまう。
ことに、自分の親兄弟のことを、なぜか恨んでいらっしゃる方は珍しくない。
でも、恨みは良くないと思うのです。
なぜなら、恨みは運を遠ざけるからです。
逆に、恨みを消すと、不思議と運が良くなるようです。
例えば、会社の社長さんをしている70代のある依頼者と、商売に関するご相談を終えたあと、ふと、こんな話になりました。
「実は、私は早くに母親を亡くしましてね」
「母親は35歳のまだ若いときに、病気で急に亡くなったんです。
私は12歳でした。
小さい子供でしたからね、本当につらくて…」
親御さんが亡くなったのは、昭和30年(1995年)頃です。
まだ日本は貧しい頃ですし、経済的にさぞ苦労なさったろうと想像できました。
「それから若い頃まで、あまりにつらい時期が続きましてね、私は母を恨むようになったんです。
『こんなにつらい目に遭うのは、母親が親らしいことを何もしてくれなかったからだ』そう思って生きていたんです」
無理もない。
昭和のあの頃を思い出しながら、考えていました。
ところが、その人のつらそうな顔が、ここで変わったのです。
「母の27回忌で、叔母がこんなことを言ったんです。
『私のお姉ちゃん、あんたにはお母さんやな、最期の最期まで、皆に言うてたんやで。
うちの子を頼みます。
自分はもう何も食べれないほど体が弱って、頭かて朦朧(もうろう)としてたはずやのに。
もう自分の横にいるのが誰かもわからん状態やったろうに。
お医者さんやろうが看護婦さんやろうが、私やろうが、もう自分の近くにいる皆に、あんたのことを頼み続けてた。
うちの子を、うちの子を…。
ずっと、何度も何度も、そう言いながら死んだんやで』
それを聞いて、突然わかったんです。
母に死なれて小さな子供だった私は、確かにつらかった。
でも、そんな小さな子供を残して死ななければならなかった母は、私の何十倍も何百倍もつらかったに違いない。
やっと、私は自分の親不孝に気づいて、心から詫びました」
その人は泣いていました。
私も涙が止まりませんでした。
叔母から聞いた話をきっかけにして、母への恨みが消えた後、その人は会社経営を成功させました。
そして、今では幸せな人生を送っているわけです。
母親の恩に気づいたことが、運を変えたのだと私には思えました。
『1万人の人生を見たベテラン弁護士が教える「運の良くなる生き方」』東洋経済新報社
「恨(うら)み」「妬(ねた)み」「憎しみ」「怒り」「復讐(ふくしゅう)」…
そんな感情を抱えていたら運は決して寄ってこない。
運の神様が好きなのは、「恩」「慈しみ」「ゆるし」「よろこび」「機嫌がいい」「明るい」「笑顔」「感謝」。
争いごとは運を遠ざける。
人に喜んでもらうこと、人の役に立つこと、は運が開ける。
親の恩に気づくこと。
運の良くなる生き方をしたい。 |
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