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2018.2.4

「いい人」をやめる


帯津病院名誉医院長、帯津良一氏の心に響く言葉より…

働き盛りの40代、いい人AさんとちょいワルBさんがいたとします。

Aさんは、まじめで努力家なのですが、人間関係を窮屈に考えているところがあります。

そのため、上にも下にも気を遣い、本音を言わず、はめを外すこともありません。

まじめなので健康にも十分に気を遣い、規則正しい生活を送っています。

仕事はできるのですが、主体性をもってやっているわけではなく、上からの命令を忠実にこなしているだけです。

一方、Bさんは、気ままで楽天的、道徳的に見ると不真面目なところもあるのですが、人望が厚く、趣味や遊びにも精通し、懐の深さがあります。

健康には無頓着で、ときにはときめきに任せて好きなものを食べたり、酒を飲んだり、夜更かししたりすることもあります。

Aさん同様、仕事はできるのですが、上からの命令に常に忠実なわけではありません。

ときには信念をもって仕事をしているため、いい結果が出せているのです。

これらのことからもわかるように、ストレスに悩まされることが多いのは、いい人Aさんのほうです。

ストレスがたまってくると免疫力が低下し、病気になりやすくなるのは言うまでもありません。

また、過労から過労死につながる危険性があるのも、Aさんのようなタイプです。

一方、ちょいワルBさんは、仕事もプライベートもときめいているため、ストレスに悩まされることはほとんどありません。

ストレスを感じたとしても人生のスパイスとして捉え、困難を乗り切っていけます。

そのため、過労が続いても過労死につながる危険性はない、といっても過言ではないくらいです。

二人の定年後を見てみると、さらにこの差は開きます。

いい人Aさんは、定年退職してからしばらくは開放感があっていいのですが、友人と会う機会が減っていく一方で、ときめく趣味もなく、時間を持て余してしまいます。

一日中家でゴロゴロしているため、家族からイヤがられるのも、Aさんのようないい人に多いのです。

そんなAさんの最大の関心ごとと言えば、健康法を実践することです。

こうなると、ますますときめくことがなくなってしまいます。

健康法もまじめに取り組みすぎてしまうため、かえってストレスになり、病気になりやすくなってしまうのです。

まじめな人で、定年退職してから7,8年で亡くなる人が多い、と言われているのも頷けます。

一方、ちょいワルBさんは、定年後も情熱をもって働き続け、阿吽(あうん)の呼吸の悪友もたくさんいるため、ときめき続けます。

健康法を熱心に実践するわけではありませんが、ときめくことによって免疫力が高まり、結果的に病気を遠ざけているんです。

そのため、ちょいワルで長生きの人は多いのです。

いい人が悪い、と言っているわけでは、決してありません。

終身雇用、年功序列が崩壊し、成果主義が重視される今、いい人のままでは病気になりやすく、長生きできないのを心配しているのです。

いい人で損をすることほど、損なことはありません。

あってはならないことです。

『「いい人」をやめると病気にならない (SB新書)』SB新書


「いい人」は、人から嫌われることを恐れ、人に自分の意見を合わせてしまう。

「嫌われる勇気」という本があったが、まさに「まわりの人の顔色をうかがうような生き方」をしないことだ。

それは、傍若無人に自分勝手に生きるということではなく、自律して生きよう、ということ。

自律と自立は違う。

「自立」は独り立ちする、独立して生きるというような意味だが、「自律」は自ら規範を決め、自らに従って動くというように、セルフコントロールができるということ。

だから、自分の決めたことによって、嫌われたとしても、仕方ないと諦(あきら)める。

「行蔵(こうぞう)は我に存(そん)す」という勝海舟の言葉がある。

自分の行ったことの責任は自分にある、だからけなしたりほめたりするのは人の勝手である。

どんなふうに言われてもまったく異存はない、と。

これが、自律した人。

ときに、「いい人」をやめることも必要だ。


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