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2017.12.1

「やりたい仕事がみつからない」は図々しい

ビートたけし氏の心に響く言葉より…

リクエストに応えて人生相談にちょっとだけ真面目に答えてみようか。

―「やりたい仕事が見つかりません」

いきなり参っちゃうね。

まあ若い奴なんだろうけど、はっきり言うと、「やりたい仕事が見つからない」ではなくて、やりたくてもそれに見合った実力がないだけ。

おいらも芸人や漫才師が「やりたかった仕事」だったわけじゃない。

たまたま偶然そうなっただけであって、本当はプロ野球選手やノーベル賞を取れるような学者になりたいと思ってた。

けれど、身体が小さかったり、大学行って「研究者は無理だな」なんて悟ったり、自分にその実力がないことはすぐにわかったからやめた。

「やりたい仕事が見つからない」というのは、実は図々しい考え方なんだね。

よくモデルやタレントを募集する時、「あなたが似ていると思う芸能人を書いてください」とか履歴書に書かせるけど、あれと似ている。

昔だったら山口百恵だとか松田聖子だとか書くんだろうけど、そいつの写真を見てみると似ても似つかない。

いかに図々しいというか、身の程を知らないというか。

図体もデカいし足も速くて、そこそこセンスもある。

そういう奴が「将来はプロ野球選手になりたい」と憧れるのは悪いことじゃない。

キャッチボールもまともにできないのに、「野球選手になりたい」というのは正真正銘のバカだけど。

中学、高校ぐらいまで野球を続けていれば、自分にそこまでの能力があるかないかなんて、すぐわかる。

そこで大体、芯から挫折を味わうべきなんだ。

負けることを知らず、現実も見ないで、「やりたい仕事が見つからない」と嘆くなんて図々しいにも程がある。

大体周りの大人もいけない。

「夢をあきらめちゃダメだ。希望を捨てずに努力をすれば、きっと夢は叶う」―なんて、安っぽい曲の歌詞みたいなことばかり言っているからダメなんであって、現実を直視させなきゃいけない。

そんな欺瞞にみちた言葉に騙される奴がたくさんいるから参っちゃう。

金もないのに、宝くじ買うバカも同じ。

「いずれ当たると思って買わないと、当たるものも当たらない」なんてバカ野郎。

そんな非科学的なことを言ってるんだったら、確率論を勉強しろ。

その辺りを歩いて隕石に当たって死ぬ確率よりも低いんだから。

「いいじゃないの。お金じゃなくて夢を買いにいってるんだから、おおきなお世話」

そんな声も聞こえてきそうだけど、結局、厄介なのは「夢がいいものだ」という間違った考え方がはびこっていることだろう。

こういう考え方を広める安っぽいJ−popの歌詞は、早くこの世から消えて欲しいよ。

弱者を救済するふりをして、ちょっとその気にさせてから、いざとなった時に落とす―バカを調子に乗らせて金儲けしようというんだから、一番たちが悪い。

おためごかしで「夢をあきらめないで」「希望を捨てちゃダメだ」「君はもっと強くなれるよ」なんて、甘っちょろいことを歌っている奴を信用しない方がいい。

それを真に受けて社会に出て、すぐに「こんなはずじゃなかった」「やりたい仕事がない」って、本当にバカ野郎だね。

『バカ論 (新潮新書)』


多くの人は、自分のやりたい仕事を探す。

しかし本当は、「やりたい仕事」より、「必要とされる仕事」に就いた方がいい。

「是非、来て下さい」、と頼まれるような仕事だ。

それはおそらく、自分の望んだ仕事とは違うのがほとんど。

しかし、自分が思ってもみなかった仕事だからこそ、そこにチャンスや運が潜んでいる。

なぜなら、「運は自分の予期しない違う方向から飛んでくる」、からだ。

たとえばそれは「幸せは、不幸の顔をしてやってくる」と言い換えられるかもしれない。

予期せぬ偶然の出来事を大事にして、その流れに乗っていくと、いつしか幸運にたどりつく。

そこで大事なのが、予期せぬ出来事にたいして「文句」「グチ」「泣き言」「不平不満」などを言わないこと。

もっと言うなら、機嫌よく、ニコニコしてその仕事に取り組むこと。

やりたい仕事より、必要とされる仕事に。



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