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2017.10.27

つつしみ深く生きる

筑波大学名誉教授、村上和雄氏の心に響く言葉より…

科学用語のひとつに、「最適規模」や「最適値」という言葉があります。

ある環境の中での最適な数や量のことで、長いスパンで見れば、自然界ではきわめて巧妙にこの最適規模、最適値が守られています。

たとえば動物は、置かれた環境の中で数が増えすぎると、その後、逆に減っていきます。

エサとなる食べものが足りなくなったり、過密さからくるストレスが増したりして、集団としての維持が不可能になってくるからです。

植物は大地に根を生やし、成長して実をつけます。

その樹液や花の蜜、木の実などを食べる虫や小動物がそこに寄ってきます。

さらに、それらを捕食する動物がいます。

死んだ動物は土に還り、微生物によって分解され、新たに植物の養分となります。

なんと見事な循環なのでしょう。

このように巧みな循環がなされているからこそ、自然界は過不足なく、最適規模や最適値に保たれるのであり、どこかでその連鎖が断たれたときには大きな問題が生じます。

しかも厄介なことに、短時間では、その連鎖が断たれたことに気づかないのです。

気がついたときには、すでに取り返しがつかない状況に陥っていることもあります。

木を切りすぎると、最初はそこをねぐらにしていた小動物たちが少なくなったと感じる程度ですが、その時点で、すでに負のスパイラルに入っています。

やがて森は荒廃し、むき出しの大地は枯渇し、砂漠化してしまいます。

以前、私は1万個以上の実をつけるトマトの巨木を見たことがあります。

そのトマトは太陽光と水と空気で成長したもので、土とは無縁な環境で育てられたものだといいます。

むしろ土は、トマトが持っている成長能力を抑えるのだそうです。

しかし、普通のトマトでは、1本の木で1万個以上も実をつけることはありえません。

それは生態系全体の中で、適正な成長規模を守っているからだとも考えられます。

遺伝子情報としては、もしかしたら1万個の実をつけさせる能力が書き込まれているのかもしれません。

しかし、生物と自然との関係、さらに生物同士の関係の中で、その能力の発現はある一定のレベルに保たれ、それがフルに発揮されることは通常はありません。

そのようにして生態系という高次なレベルで秩序が保たれていくため、自然界には最適規模や最適値があるのです。

自然界における最適規模や最適値を自然界が意識して保っているかどうかはわかりませんが、それは自然界の「つつしみ」といえるのではないでしょうか。

もちろん、この自然界の中には人類も含まれます。

人類は際限もなく科学・技術を発達させ、過剰に生産の拡大や資本の増強を図り、資源やエネルギーを消尽(しょうじん)しています。

そこには、つつしみのかけらも見られません。

無際限な拡大や限度を超えた消費は人間を幸福にするどころか、むしろこころを虚しく、貧しくしていくのではないでしょうか。

つつしみのこころを持ちなさいと命令口調でいわれても、それで本当につつしみのこころを持つことは難しいでしょう。

そこには前提となるものが必要です。

それは、人間もまた、自然の申し子だということに対する気づきです。

すべての人間は大自然の一部であり、その大自然によって生かされているのであり、自分の力だけで生きている人間はただの一人もいないということを正しく認識することです。

『望みはかなうきっとよくなる』海竜社


ギリシャ神話に「高望みで破滅した人間」の物語がある。

「太陽神アポロンの人間の息子パエトーンは、友人からアポロンの息子であることを疑われたため、それを証明するため父親のアポロンに日輪の馬車を借りたいと願い出た。

日輪の馬車は太陽神が毎日東から西へと運転する太陽の馬車で、これは太陽神以外は天の神々さえも乗りこなすことのできないもの。

太陽神は、望みは何でも叶えるといった手前、しかたなく日輪の馬車を貸したが、案の定、パエトーンは馬車を御すことができず、地上は高熱となり、干(ひ)からび、ありとあらゆるものを焼き尽くし、焼け野原となってしまった。

この事態を見かねた全能の神ゼウスは、雷の矢でパエトーンを打ち落としたという」

これは、山岸凉子氏の「パエトーン」という「原発の危険性」を訴えたマンガでも有名だ。

人は、つつしみを忘れたとき、傲慢となる。

つつしみ深いとは、「足るを知る」とか「分をわきまえる」とか、「身の程を知る」ということでもある。

我々も大自然の一部であることを自覚し、限りある資源を大切に…

つつしみ深く生きたい。



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