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2017.5.14

「損」を恐れるから失敗する


和田秀樹氏の心に響く言葉より…

ウーバーやリフトは便利なサービスですが、日本では規制があってサービスができません。

いわゆる「白タク」扱いになっているからです。

おそらく、タクシー業界の反対などがあって、規制緩和ができないのでしょう。

「得をしたい」という一般大衆の声より、「損をしたくない」という業界団体の声が強いので、現状維持の方向で進んでいきます。

新しいことを始めようとすると、「安全性は大丈夫か?」といった声もあがります。

「利用者に不利益が出るかもしれない。損失を避けたい」という心理から出ていると思われます。

しかし、ウーバーやリフトは、日本より治安の悪いアメリカで成り立っているサービスです。

ウーバーは現金をやりとりするわけではなく、クレジットカード決済で、スマホの中でお金が支払われます。

ですから、現金をやりとりするタクシーより、むしろ安全かもしれません。

民泊の規制を緩和しないのも、既存の事業者が「反対だ」と声を上げ、消費者の中から「心配だ」という人が出てくるからでしょう。

多くの人の「損をしたくない」という気持ちが強すぎて、新しいことは何でも受け入れてもらえない社会になっています。

新しいチャレンジをする事業者は「あぶなっかしい」と見られて、つぶされてしまいます。

それが、20年以上GDPが横ばいという経済停滞の一因になっているのだと思います。

「損をしたくない」人の声が大きいため、新規産業が生まれにくくなっているのです。

また、みなさんは、食事に行くときに、新しい店に入ろうとしますか?

いったんお気に入りの店を見つけると、その店ばかりに行くようになる人もいます。

その店で注文する食べ物も、いつも同じという人もいます。

これは一番損をしない方法です。

行きつけの店で、いつもと同じものを食べれば、ものすごく得をすることはありませんが、損失はほぼゼロに抑えられます。

違う店に入り、食べたことのないものを注文して、「しまった。おいしくない」と後悔するリスクを避けることができます。

その裏返しで、「こんなにおいしいもの、初めて食べた!」と感動するチャンスは失っているかもしれません。

「得」を中心に考える人は、リスクを覚悟して新たなチャレンジをしますが、「損をしたくない」という気持ちの強い人は、リスクを避けて無難なほうを選びます。

人間関係にも当てはまります。

いつもの仲良しメンバーで集まっていれば、安心感があって、損をすることはまずありません。

楽しいときを過ごすことができます。

ただ、毎回同じメンバーだけで固定されて、それ以外のつき合いがなくなってしまうと、新たな人に出会って刺激を受けるチャンスはなくなってしまいます。

損をすることはありませんが、得をすることもなくなってしまいます。

損失回避性は、「現状維持バイアス」とも言われるように、現状志向です。

あまりにも現状維持志向が強すぎると、ワクワクすることがなくなる可能性がありますから、「損」と「得」のバランスをとることも大切です。

人間には「損失を回避したい」という心理特性があります。

しかも、人間は「得」よりも「損」に強く反応してしまい、損失回避性は非常に大きな原動力となります。

損失回避性がうまく生かされればいいのですが、目先の損を回避することばかりに目がいって、長期的な損失を生んでしまうことがあります。

不正会計や数値の改ざんなどの事件は、「いま、損をしたくない」と思いすぎて、間違った行動をとってしまったのでしょう。

すでに損失が出ている損失局面では、何とかして損を回復したいと思うがゆえに、リスキーな選択をし、よけいに損が膨らんでしまうことも起こりがちです。

ギャンブルで負けている人が、一発逆転を狙おうとして非常にリスクの高い勝負に出てしまったり、すでに投資した額を損失にしたくないために追加投資する、コンコルド効果のような例もあります。

「損をしたくない」という気持ちが強すぎると、何事も保守的になって、チャレンジをしなくなるケースもあります。

環境が変わっているのに、現状維持志向で何も新しいチャレンジをしないと、かえって大きな損失を抱える可能性もあります。

損失を避けたいというのは、人間の生来の心理特性ですから、変えようがありません。

しかし、心理特性は変えられなくても、そのことを知っていれば、その心理特性に陥っていないかどうかという自己モニタリングは可能ですし、判断や行動にマイナスの影響が出ないようにすることはできます。

正しい損失回避とは、目先の損失の回避ではなく、長期的な損失を回避するための判断と行動です。

優れたリーダーたちは、人間の心理特性を知り、それを判断や意思決定に生かしています。

『「損」を恐れるから失敗する (PHP新書)』


損したことや失敗したことばかりに焦点(しょうてん)を当てる人は、新たなチャレンジをすることを躊躇(ちゅうちょ)する。

また損(失敗)したらどうしよう、と怖くなってしまうからだ。

楽天的な人は、得することや成功することに焦点を当てる。

楽天的な人の思考は、「肯定的」「前向き」「楽観的」「プラス発想」。

「これが成功したら楽しいだろうなぁ」、とワクワクするから、新たなチャレンジできる。

だから、何度失敗しても、めげずにチャレンジできる。

「私は失敗したことがない。 ただ、1万通りの、 うまく行かない方法を 見つけただけだ」

というトーマス・エジソン の言葉がある。

失敗も損も、勉強の一つ。

失敗や損を恐れず果敢(かかん)にチャレンジできる人でありたい。


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