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2017.3.17

「成長社会」から「成熟社会」へ


教育改革実践家、藤原和博氏の心に響く言葉より…

「今、時代は大きく動いている」と言われますよね。

それは、具体的にはどういうことでしょうか。

ひとことで言えば、20世紀の「成長社会」から「成熟社会」へと急速に変化しています。

つまり、もはや「成長」の時代は終わったということです。

そして、今、ものすごい勢いで、社会の「成熟」度が深まっているのです。

現在は、それぞれ一人一人が自分独自の幸福論を持たないと、幸せになれない時代になりました。

こいういう時代においては、教育も変わらなければなりません。

学校で『走れメロス』を読むという授業がありませんでしたか?

試験では「帰り道のメロスの気持ちに一番近いものはどれですか?次の4つの選択肢から選びなさい」などと問われたはずです。

典型的な4択問題ですね。

つまり、そこには、「与えられた選択肢の中に必ず正解がある」という前提があったわけです。

でももう、そのような時代ではありません。

今、求められるのは、その4つの選択肢を、自分自身で仮説として立てられる人材です。

与えられたものの中から選ぶのではなく、自分で仮説を立て、それを一つ一つ自分で検証し、ときには仮説そのものを修正し、納得できる解を見つけていける人です。

正解が一つの成長社会では、正解を早く正確に言い当てる力、すなわち「情報処理力」がもっとも重要でした。

大学入試の問題が記憶力重視のものになっていたのは、ある意味、当然です。

情報処理力の高い人を選別するのに、それがもっとも効率的だったからです。

しかし、成熟社会に入り、あらゆる場で「正解」がない問題のほうが多くなっている。

ビジネスの世界で、正解が一つで、意思決定はどの経営者がやっても大体同じ、なんてことはないと思います。

学校現場でのいじめの解決でも、介護でも、それは同じです。

それぞれの状況でそれぞれに異なる多様な解が求められている。

状況は常に変化するから、正解は一つではないのです。

こういう時代により重要になるのは、情報を「処理」する能力ではなく、「編集」する能力です。

自分の頭の中で、知識・技術・経験のすべてを組み合わせて、そのときそのときの状況の中でもっとも納得できる「解」を導きだす能力のこと。

自分だけが納得してもダメです。

関わる他者も納得できるものでなければならない。

そうした解を私は「納得解」と呼んでいます。

たった一つの「正解」がなくなった成熟社会では、自分が納得し、かつ関わる他人が納得する「納得解」を、情報を編集する能力を駆使して、どれだけつくり出せるか?

どれだけ紡(つむ)げるか?

それが問われるのです。

これからのビジネスパーソンの成功の鍵は、情報処理力ではありません。

それなら、コンピュータのほうがずっと優秀ですし、実際、現在のホワイトカラーの仕事は、次々にコンピュータに取って代わられつつあります。

それよりも、

●どれぐらいアイデアを出せるか?どれぐらい知恵が出るか?

●どんなふうに仮説を設定し、試行錯誤を繰り返し、問題解決を図っていけるのか?

●どんな世界観で、どんな新規事業を考え出し、どんなイノベーションを起こせるか?

これらが求められているのです。

イノベーションなくして、企業も国も生き残っていけないからです。

『藤原先生、これからの働き方について教えてください。 100万人に1人の存在になる21世紀の働き方 (DISCOVER21世紀の学校)』ディスカヴァー


だがしかし、現在の学校教育で問題なのは、写真やボイスレコーダー的な記憶再生能力が未だに重視されていることだ。

これは大学の入試などで顕著(けんちょ)だ。

Googleで検索すれば出て来るようなことを、試験にするなどあまりに時代とずれている。

なぜなら、現実の会社や社会ではそうなっているからだ。

現代は、記憶再生能力(情報処理力)は、スマホ一つあればこと足りる。

もちろん、基礎や基本を覚えることはとても重要だ。

その基本がなければ、検索することさえかなわない。

『成熟社会に入り、あらゆる場で「正解」がない問題のほうが多くなっている』

編集する力と納得解を身に着けたい。


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