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2017.2.26

強く必要とされる人


日本経営合理化協会理事長、牟田學氏の心に響く言葉より…

テーブルの上に置いてある1個のグラスは、それがどんな形であっても、決して生命体ではない。

しかし、喉がカラカラに渇いた人が、そのグラスに水を汲んで飲む。

そうすると、グラスはその人によって生かされ、生命を持つ。

つまり、生きていることになる。

キェルケゴールは、存在しているものはみんな生きていると説いている。

たとえ、それが生命体であってもなくても、別の個体に強く必要とされるものは、その存在の価値が高くなり、長く生き続けることができると教えている。

この哲学は、実存主義として、フランスのサルトルやボーボワールや、インドのタゴールによって主唱され、21世紀の哲学として資本主義社会の中で生き続けて久しい。

会社はさまざまな商品やサービスを売っているが、1個のグラスと同じようにお客様に「あなたの商品やサービスは素晴らしい。あなたからしか買わない」と言わしめないと強い存在にはなれない。

会社はお客様という別の個体に生かされているのだ。

また、社長という存在は、多くの社員から「あなたがいるから、私たちは食いっぱぐれがない。ありがとう、ありがとう」と言われて強く生きているのだ。

ルールや慣習や、提供している商品やサービスの品質、値段、納期を磨き、どんなライバルよりも高いレベルにあって初めて評価され、強い存在になれる。

一度でも、不正があったり、裏切ったり、嘘や、不便や欠点があれば、別の個体は、即座ににそれを察知し、必要としなくなってしまう。

それが現実であり、そこに実務がある。

会社でも、家庭でも、またどんな集合体でも、男女仲でも、親子でも、上役と部下でも、情が下手だと嫌われ、疎(うと)んじられる。

情が上手だと愛され、好かれる。

また、実社会には、情の外に科学がある。

この二つを処世の哲学として、存在価値を高め良心を養い、新しい秩序をつくることだ。

情とは喜怒哀楽である。

情は社長業の必須の要素である。

強い情は目的を達成するのに大いに役立つ。

しかし、対人関係には反対で、嫌われることが多い。

下手な情だということになる。

情の弾力性は社長にとって大事なことだ。

『社長のいき方』PHP研究所


行徳哲男師にこんな言葉がある(「感奮語録」より)。

「陽明学の教えの中に『天下のこと万変といえども、吾がこれに応ずる所以は喜怒哀楽の四者を出でず』とある。

どんなに世の中が激しく移り変わろうとも、喜怒哀楽の四者を大事にしておけば生きていけるということである。

陽明学は学問、政治すら喜怒哀楽が要(かなめ)であると言っている。

孔子は喜怒哀楽の激しい人だった。

『憤(いきどおり)を発して食を忘れ、楽しみを以(もっ)て憂(うれ)いを忘れ』と『論語』にもあるとおり、弟子の願回が殺されたときには辺りはばからず泣きわめいた。

そのときの様子は『慟哭(どうこく)』という言葉のいわれになっているほどである。

四大聖人の一人と崇(あが)められるほどの孔子ですらこれほど感情を露わにした」

人間にとって一番つらいことは、「お前なんか必要ない」、「出ていけ」、「一緒にいたくない」という存在の否定だ。

まさに、「いじめ」がそれだ。

反対に、「あなたが必要だ」、「是非来てください」、「一緒にいたい」と言われるほどうれしいことはない。

会社も商品も、そして家庭も友人も同じで、人から必要とされなくなったらそれは存在の否定を意味する。

つまり、生きていないのと一緒。

多くの人から強く必要とされる人には、大いなる「魅力」がある。

その「魅力」の源泉は、「喜怒哀楽」。

強く必要とされる人でありたい。


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