2017.2.15 |
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「つかみ」の重要性 |
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百田尚樹氏の心に響く言葉より…
実は話すというのは、書くよりもはるかに難しい技術です。
書くにはある程度時間をかけられるし、後で直すこともできます。
ですが、喋るのはその場での一発勝負です。
推敲(すいこう)はできません。
筋道のある長い話をする場合、初めから頭の中に構成ができていなければ無理です。
あるいは話しながら構成を作っていく能力です。
起承転結を考えて、尚かつ盛り上げにも留意して、最後のオチも決める…これを即興でやるのがトークです。
ですから、昔から文芸の編集者の間では、「話の面白い作家は、書いても面白い」といわれているそうです。
短いセンテンスでギャグを言うのには反射神経とセンスが必要ですが、人が注目して聞く話を5分以上するというのは、話術に加えて構成能力が不可欠です。
構成能力というのは、その話を一つの物語として組み立てる力です。
「起承転結」…これは小説や映画の基本ですが、話も同じです。
まず導入があって(起)、次に物語が動き出し(承)、あっと驚く展開を見せ(転)、オチになります(結)。
もっとも転と結はしばしば同時になることもあります。
「面白い雑談」も基本的にはこの構成になっています。
私は30年以上もテレビ番組の放送作家として生きてきました。
そして「つかみ」の重要性を痛感してきました。
「つかみ」というのはもともと寄席言葉です。
芸人が舞台に出て一発目に放つネタのことです。
これで客の気持ちを掴むと、あとが非常にやりやすい。
逆に失敗すると、その後がずっと大変になるので、「つかみ」は非常に大事なのです。
私はテレビ業界に長くいたので、小説を書く場合にも、「つかみ」にすごく気を付けます。
極端な話、最初の1ページから面白いシーンがないと気に入らないのです。
また、人の興味を惹(ひ)く方法の一つに、質問から入るという方法があります。
人間というものは何かを訊(き)かれると、それに答えようとする性質があります。
そしてその答えがわからなければ、知りたいという興味が湧きます。
ただし、普段全然関心のないものや、身近でないものはダメです。
いつもは何気なく使っている言葉や、知っていると思っていることが、実は全然知らないものであったということに、小さなショックを受け、同時に関心が一気に高まるのです。
たとえば、日常使う言葉に、「試金石(しきんせき)」という言葉があります。
ところが、「試金石って、もともとどういうものなのか知ってる?」と訊かれれば、多くの人はまず答えられません。
これは金がどこまで純度があるかを調べる石のことなのです。
かつては実際に使われていました。
また、意外な導入から入るという手もあります。
人は自分の思っている常識を揺さぶられると動揺します。
すると、その動揺を抑えるために、納得のいく説明を聞きたいと思うものです。
そうなると、話が非常にしやすい環境が整います。
また、他人に面白い話をする時に大事なことは、数字をあやふやにしないことです。
数字というものは、一見無味乾燥なものに見えますが、実はそうではありません。
具体的な数字があることによって、話のリアリティが格段に増すし、話の面白さがぐっと伝わりやすくなるのです。
『雑談力 (PHP新書)』
「人は見た目が9割」という言葉があるように、人は出会った瞬間にその人外見や言葉、態度をみて、好印象かそうでないかを決める。
つまり、「つかみ」で決める。
だから、落語も、話も、小説も、最初が肝心なのだ。
出(で)だしで、面白いかどうかが決まってしまう。
しかし、「話はあまり上手ではないものですから」とか、「諸先輩方の前でお話するのは僭越(せんえつ)ですが」とか、「急に言われたものですから」とかの言い訳を最初にする人は多い。
これは、「つかみ」として失敗だ。
「つかみ」の重要性に気づき、雑談力を磨きたい。 |
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