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2017.1.4

目の前に与えられた仕事


新渡戸稲造氏の心に響く言葉より…

真に偉い人は、自分の地位に応じて相当の仕事をし、 悠々として余力を保っているものである。

小さい仕事であれば小さいなりに仕事をするが、誰が見ても、 そんな仕事をさせるには人物が大きすぎると言われるくらいの人が 偉いのである。

昔、孔子が牧畜の役人になったら家畜が殖(ふ)え、 小さな村の長につくとその村が平和に治まった。

また、豊臣秀吉は草履(ぞうり)取りの卑しい職にあったが、 決して主人に冷たい草履をはかせたことがないし、按摩(あんま) をやらせたら、本職よりも巧妙であった。

二人とも小さな仕事をやらせても完全にそれを成し遂げ、 たとえ余力はあっても、 自分にはものたりない仕事だなどと不平を唱えたりはしなかった。

もし逆に、今の職務をはなはだ不本意に思い、 おれがこの世に生まれた目的はこんなことをするためではないと自負するあまり現在の職務を怠れば、これは取りも直さず、 その人が偉くないことを証明するに過ぎない。

自分の現在の義務を完全に尽くすものが一番偉いと思う。

そして、自分の現在の義務は何であるかをはっきり認め得る人は、 人生の義務と目的とを理解する道に進むであろう。

人生の目的とは何かを理解することは、 自分の生きる目的を理解することと同じである。

そして、ただ、

「おれは偉い」

と思っていては、自分の生涯の目的など判断できるわけがない。

自分の職業や周囲の要求する義務を、それがいかに小さくとも、 いかにつまらなくとも、完全に成し遂げ、 この人がいなくてはできない、この人がいなくては困る、 と言われるほどにならなければ、 自分の天職を全うしたものとは言えない。

そして、 人生の目的は何であるかという問題も解決できるものではないと思 う。

『自分をもっと深く掘れ!―あなたは、自分の人生に心から感謝できるか!人生をもっと大きく、もっと楽しみながら生きる法』三笠書房


西郷隆盛が官を辞して、田舎に帰ったところ、 そこへ村長が訪ねてきた。

村長は、西郷さんに、 村の様々な問題や運営の難しさを切々と訴えた。

ずっと黙って聞いていた西郷さんは、やおら座りなおし、「 そいじゃ、おいどんがやろうか」と本気で言ったという。

政府の参議や総督までやった西郷さんを、 まさか村長に頼むわけにもいかず、 村長は逃げるように帰ったという。

真に優れた人物は、世間的な名誉や地位に拘泥(こうでい) しない。

今、目の前に与えられた仕事を、完全にやり遂げる。

その仕事が自分にとって、小さいとか、 不釣合いだとかは一切言わない。

しかし、往々(おうおう)にして、ある地位まで上り詰めた人は、 その切り換えができない。

まわりからチヤホヤされたり、 立てられることに慣れてしまったからだ。

坂本龍馬は西郷隆盛と初めて会ったときの印象を、 勝海舟に次のように語ったという。

「西郷というやつは、わからぬやつでした。

釣り鐘に例えると、小さく叩けば小さく響き、 大きく叩けば大きく響く。

もし、バカなら大きなバカで、 利口なら大きな利口だろうと思います」

今、目の前に与えられた仕事を、完全にやり遂げる人でありたい。


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