2016.12.10 |
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つかず・離れず・干渉せず |
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精神科医、斎藤茂太氏の心に響く言葉より…
楽しい人生を送るうえで、どうしても欠かせないのが人づき合いです。
毎日をイキイキとした表情で動き回っている人は、あなたの周りにもきっと何人かはいるでしょう。
そんな人は、決まって人づき合いが軽やかではないでしょうか。
ですから、周囲に爽やかな好印象を与えるはずです。
男性なら、気くばりの上手な優しい人柄の持ち主かもしれません。
女性なら、いつもにこにこしていて、笑顔の美しい人かもしれません。
いづれにしても、どちらも人間的魅力に溢(あふ)れた人たちです。
よく観察してみると、他人に対する気遣い・心遣いが堂に入っているのです。
しかも、その振る舞いがっとても自然なのです。
なぜなのでしょうか。
男性にしても、女性にしても、「さりげなく相手との距離感を保っている人」、私はここに楽しい人づき合いのできるポイントがあると判断します。
仕事でも遊びでも、何でもそうですが、べったりとしていないのです。
何でも偏(かたよ)りすぎると、故障が出てくるのは人も機械も同様です。
そこで私は、この楽しい人づき合いのポイントである「適度な距離感」を、すべての人間関係に当てはまるものと強く実感し、このような言葉をつくったのです。
「つかず・離れず・干渉せず」
私の長い人生体験から、自然に紡(つむ)ぎ出されたこの言葉に、いまでは大いに満足しています。
なぜなら、仕事でもプライベートでも、この原則を守っている限り、ほとんど人間関係での躓(つまづ)きがないからです。
私自身の例をひとつだけご紹介しましょう。
驚かれるかもしれませんが、わが斎藤家には「憲法第一条」があるのです。
それが「つかず・離れず・干渉せず」なのです。
この一条だけで、二条以下はありません。
ユーモアや洒落を大事にする私ならではの条文だと、少しばかり照れながら、よく他の著書でも紹介するのです。
わが斎藤家は、全部で五世帯が隣り合って、それぞれに暮らしていますので、決してべったりの関係にならないように、このようなルールを設定したというわけです。
隣の家族のインターホーンは決してむやみと鳴らしませんし、外出する子どもや孫たちに、行き先や同伴者、会う人などを、絶対に尋ねたりはしません。
雨が降っても隣の洗濯物を取り込まない、という徹底ぶりです。
この斎藤家憲法第一条は、現在、全員に支持されて、その効果の恩恵にあずかっています。
適度な距離感とは快適な距離感ということです。
人づき合いのコツは、誰にでもできる簡単なことだということです。
『人生に必要な100の言葉』青春出版社
「淡交(たんこう)」という言葉がある。
中国の荘子の、「君子之交淡若水<君子の交りは淡(あわ)きこと水の若(ごと)し>」からきた言葉だ。
そのあとに、「小人之交甘如醴<小人の交わりは甘きこと醴(れい)の如し>」と続く。
「醴」は甘酒のようなもので、甘くてベタベタしている。
まさに、自律(じりつ)した大人のつき合い方がこの「淡交」。
大人になりきれない子どもは、群れたり、つるんだりする。
一人では何もできないくせに、人数が多くなると、乱暴になったり強がりを言ったりする。
「つかず・離れず・干渉せず」
長く付き合うには、淡交が必要だ。 |
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