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2016.11.15

白か黒かで割り切ってこなかった日本人

筑波大学名誉教授、村上和雄氏の心に響く言葉より…

最近、日本民族の特徴がDNAレベルで解明されつつあります。

それによると、日本民族はハイブリッド(雑種)な民族だといいます。

北方系と南方系のいわゆる混血なのですが、しかもその混血ぶりが著しく、DNAのバリエーションがきわめて豊富なのだそうです。

決して単一民族ではありません。

その理由のひとつは、先住民族と新参民族の間で殺し合いが起こらなかったことです。

一般的には征服民族が被征服民族を殺すことは珍しいことではなく、それによって混血の程度は薄くなるのですが、日本列島では民族の殺し合いというものはあまりみられなかったようです。

そのために、混血が進んだとも思われます。

多種多様な民族が、四季に恵まれた環境の中で、共存共栄しながら生きてきたのです。

「和をもって貴しとなす」精神文化も、このような背景のもとに培われたのかもしれません。

現在、多様性の重要さがいわれていますが、日本人はもともと多様であることをよしとして生きてきた民族だったと思います。

日本人はあいまいだと非難されることがありますが、そのあいまいさこそが多様性を生んでいるという側面もあります。

日本人は善か悪か、正か邪かという二元論でものごとを割り切ってこなかった民族です。

白か、黒かだけでなく、グレーの大切さも認めてきたのです。

ハイブリットなDNAを反映しているからかどうかはわかりませんが、私たちが使っている日本語もきわめてバリエーションに富んだものです。

漢字、ひらがな、カタカナと書き文字だけで3種類も保持しています。

人を呼ぶ人称も、数を数える数詞も、相手によって使い分ける敬語も、日本語特有のものがあります。

そもそも言葉に魂が宿るという「言霊信仰」も、日本人に特有なものだと思います。

こうしたことは、おそらく日本人を深い部分で規定しているはずです。

宗教にも、感性的な宗教と理性的な宗教があるように思います。

神道も、日本流にアレンジされた仏教も、感性的な宗教だといえるでしょう。

「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」という言葉に象徴されるように、すべてのものにいのちの宿りを感じるのが感性的な宗教です。

『望みはかなうきっとよくなる』海竜社


「大人になるということは、あいまいさを受け入れる能力を持つということである」(フロイト・精神分析学者)

社会があいまいさを受け入れなくなったとき、それは寛容性がなくなったということであり、社会が幼児化しているということ。

トゲの多い門松を何度もくぐり、酸いも甘いもかみわけた大人は、あいまいさや多様性を受け入れることができる。

右か左かではなく、右も左も。

右の道を行っても、左の道を行っても、いつか同じところにたどり着くかもしれない。

正しいか正しくないかを追求し、正しさを押しつける人は窮屈で、重苦しい。

あいまいさには、余白があり、余裕がある。

あいまいさを受け入れられる大人でありたい。



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