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2016.10.3

引き算する勇気

静岡県立大学教授、岩崎邦彦氏の心に響く言葉より…

「日本の国旗」を頭に思い浮かべてみよう。

さて、日本国旗の赤い丸の面積は、全体の何パーセント程度だろうか。

想像してみてほしい。

実際に、全国1000人の消費者に、自由に数字を答えてもらった。

結果はどうだったか。

もっとも多くの人が答えた数字は、「30%」である。

「40%」と答えた人も2割弱、「50%」と答えた人も全体の1割いる。

1000人の消費者が入れた数字の平均値は、31.6%だ。

では、実際には赤色の面積は何パーセントだろう?

実は、意外に小さい。

日本国旗の赤の面積はわずか18.8%だ。

つまり、全体の80%以上が空白なのである。

この簡単な調査結果から示唆されるのは、何か。

そう、“シンプルだと、小さくても、力強くなる”ということだ。

日本はもともと「引き算」の国である。

簡素さに美しさを見出す「禅」や「茶道」。

四畳半の「茶室」や枯山水の「日本庭園」は何とシンプルだろう。

わずか17文字からなる世界で一番短い文学「俳句」。

余分なものを加えず、素材そのものを活かす「和食」など、いずれも引くことによって、人の「心」に訴えてくる。

「引く力」は日本人が伝統的に持つ強みでもある。

伝統の中にこそ、成功の基盤があるはずだ。

だが、今の日本経済はどうだろう。

たとえば、日本の家電業界。

はじめに「技術ありき」で、新商品の開発、新機能や機能の多さを競っているようにも見える。

日本製品の国際競争力の低下は、機能や商品ラインナップを促すことで価値を生み出そうという、「足し算的な発想」がひとつの要因ではないか。

商品や機能などを「これでもか」と足し算し続けている。

過度なハイスペックで、汎用性が失われ、ガラパゴス化してしまう。

「余白」があるから力強くなるのに、それを埋めようと「足し算の競争」を繰り広げている。

創造の源泉となる「余白」が減少し、豊かさの源となる「ゆとり」が失われている。

『引き算する勇気 ―会社を強くする逆転発想』日本経済新聞出版社


岩崎氏は「アップルも、スターバックスも、グーグルも、無印良品も、みんな『引き算企業』だ」という。

特に、IT企業は何かに特化した引き算企業が多い。

あれもこれもと「何でも屋」になると、特徴が薄れ、ぼやけてしまう。

「一寸法師(いっすんぼうし)」という、日本のおとぎ話がある。

小さな一寸法師が、鬼と戦って勝つ物語だ。

小さな針で、鬼を刺し、鬼を退治した。

小さな針でチクチクと刺せば、どんなに強い鬼もたまらない。

つまり、「一点突破」という、一点に集中して力を注げば、そこから活路が開ける、ということ。

引き算も一点突破と似ている。

「シンプルだと、小さくても、力強くなる」

引き算する勇気を持ちたい。



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