2016.8.7 |
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悩むより楽しもう |
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前刀禎明(さきとうよしあき)氏の心に響く言葉より…
僕の元部下で、ベンチャー経営をしている男がいます。
あるとき取引先にトラブルがあり、入ってくるべきお金が入らず、彼は窮地に追い込まれました。
社員は全員退職。
「また一人でやることになりました」というので一緒に食事をしました。
翌日、彼からのメールにはこう書いてあった。
「ずっと沈みがちでしたが、前刀さんと話したら、またやる気になりました、ありがとうございました」
僕が彼に話したのは、こんなことです。
「お前、これで『あのとき大変だったよね〜』といえるようになったんだぞ。いい思い出になるから。今を楽しんでおけ」
「俺なんて、窮地を楽しむ達人なんだからな。いつでも話を聞きにこいよ」
掛け値なしの、本心から出た言葉です。
僕は失敗だらけ、欠陥だらけ、おまけに周囲の人が期待するような財産もない(というか、みすみす逃した)大バカ者です。
それでも楽しく生きている、そういう人間がここにいるんだと、彼に伝えたかったのです。
何でもかんでも楽しいばかりなんて、そんな虫のいい話はないわけです。
辛いことも不本意なことも楽しめるようになりましょう、というのがポイントです。
よくいわれるのは「前刀さんはいつも楽しそうですね」。
実際、毎日楽しくてヘラヘラ生きているのですが、「本当はちゃんと考えているんですよ」といいたいところもあります。
じゃあ今が楽なのかといったら、全然違う。
いまだにピンチだらけです。
ベンチャー経営者というものは、日々ピンチ。
アップルを退職した後、僕はリアルディアという自分の会社を立ち上げました。
自分のやりたいようにやりたいから、出資を受けていません。
自己資本を元手に経営しています。
露骨にいえば、自分のお金を切り崩しているわけです。
会社経営をしていると、売上げがあろうとなかろうと、毎月出ていくお金があります。
ときには「このままだと破産かも」「アップルで10億円くらい儲けてから起業すればよかった」「惜しいことをした」と、思う日もあるわけです。
ベンチャーがピンチに陥ると、最悪の場合、社長が自殺します。
これは冗談抜きで、そういう人を僕は何人も知っている。
でも、そこで死んだら悔しいじゃないですか。
それに、大変なときにいかにも大変な顔で物事を取り組んでいると、どんどん追い詰められてしまう。
だったら思い切り楽しんでやれ、と思います。
若い後輩たちに伝えているのは、「俺みたいなにはならなくていいけど、俺みたいに人生楽しんだほうがいいよ」ということ。
小さくまとまりそうになったら、日々綱渡りながも楽しく生きている自分の姿を思い出してほしいと思っています。
『5年先のことなど考えるな (PHPビジネス新書)』
前刀氏はソニー、ディズニー、AOLをわたり歩き、アップル本社副社長を務めるも、あっさり辞めて自分の会社を立ち上げた。
前刀氏はこう語る(本書より)
■悩むより楽しもう。
将来をいたずらに憂うよりも、その瞬間、心が喜ぶことをしよう。そのような決断の点と点が、いつか繋がるときがやってきます。
■考えるようも感じよう。
日本人には素晴らしい感性が備わっています。頭で考えて答えが出ないなら、その感性に、自分を委ねてみましょう。
■溜めずに捨てよう。
やりたくないことは捨てる。できないことは諦める。ストレスフリーな生き方はそこから始まります。
■嘆くよりも変えてしまおう。
イノベーションを生み出し、世界を変える人間は何を考え、どう行動するか。
■自分の体感を信じよう。
デジタルよりもアナログ、データよりも体感。心が喜ぶ生き方、あるいはイノベーションを起こすための、キーワードです。
中村天風師はこう語る。
「たとえば時候のようなものも、暑いときでも『暑いなあ、やりきれないな あ』これがいけない。
暑い寒いは感覚だからそれはいって悪いとはいわない。
『暑いなあ』といったなら、あとにもっと積極的なことをいったらよいではな いか。
『暑いなあ、余計元気が出るなあ』と。
『丸い卵も切りようじゃ四角、 ものもいいようじゃ角が立つ』というではないか。
ところがあなた方は『もの いえば唇さむし秋の風』で、いっているそばから自分を傷つけ、人を傷つけて いる。
気がつかないからいっているんだろう」
人生を楽しめる人は、まさに、『暑いなあ、余計元気が出るなあ』と言える人。
嫌なことや困難なことの中にも、楽しみや面白味を見つけ出せる人。
そして、自分を客観視できる人。
人生は面白い、と思ってながめれば、面白い人生がおくれる。
人生は辛い、と思って生きていけば、辛い人生が待っている。
悩むより楽しむ人生をおくりたい。 |
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