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2016.6.22

良き正直者であれ

田中真澄氏の心に響く言葉より…

世の中には、「見栄を張る」「格好をつける」風潮をよそに、正直を旨として、地道に仕事に打ち込み、世のため人のために真面目に生きている人も大勢います。

その人たちは、不思議にも、同類項の人たちとのおつき合いを広め、人間力を高めています。

昔から「徳は孤ならず、必ず隣あり」と言うではありませんか。

この言葉は、良い正直の徳を持つ人に、周りから人が寄ってくることを示唆しています。

正直な人は信用ができ、心優しい面がありますから、そういう人とネットワークを組めば、仕事の面でも、家庭生活の面でも、お互いに誠心誠意助け合うという関係が生じます。

そのことは、生きていく上でどれだけ有利であるか計り知れないものがあります。

現に、私の独立以来31年間を振り返ってみても、その間の仕事は、すべて人様からのご支持・ご支援の賜物であったことを実感しています。

いや、私だけではありません。

独立後、途中で廃業することなく事業を継続している人は、誰もがそう感じているものです。

ところが残念ながら、多くのサラリーマンは、生活の糧は勤め先から支給されることから、自分が世間の支持のおかげで生かされていることを自覚する機会に恵まれていません。

その結果、どうしても自分中心の発想、すなわち利己主義で生きてしまう道をたどり、良くない正直者となり、「正直者は馬鹿を見る」と言いたくなる人間になりやすいのです。

こういう人は、自分の間違い・至らなさを反省することなく、何か問題が起きれば、ひたすら他人のせいにしてしまう傾向があります。

良い正直者はそういう人をすぐに見抜きます。

そして、その人から遠ざかっていきます。

世間を見ていると、一見、真面目そうな正直者でありながら、仲間がいない、人が寄りつかない、といった孤独な人をよく見かけますが、その人は、周りの人から敬遠されているのです。

そういう人でも、組織のメンバーである限りは、職務上の人間関係があることから、孤独感に陥ることはないかもしれませんが、定年やリストラなどで組織を離れた時、嫌というほど世間から無視されることを感じさせられるものです。

会社や団体のような組織というのは、組織のメンバーでなくなった人に対しては、本来どこでも疎遠になっていくものです。

どんな組織にもそうした性質が備わっています。

そのことを常に覚悟しておかないと、何らかの事情で組織を離れた時、再び元の勤め先を訪ねてみると、何か冷たく感じるので、そうなるとつい元の会社を悪く言うようになります。

悪口を言われた会社の人たちは不愉快に思い、悪口を言った人を嫌いになるはずです。

そう感じた私は、退社した後、講演の中でも拙著の中でも、20年間お世話になった日経の悪口だけは絶対に言うまいと心に決めていました。

辞めて数年間、日経の仲間たちは私の言動をじっと注視していたようです。

そして次第に私を支援してくれるようになりました。

この事実は、良い正直者であり続けていると、必ず周りに協力者が集まってくることを意味していると言えます。

『田中真澄の実践的人間力講座』ぱるす出版


自分がかつて勤めていた会社や、卒業した学校、あるいは以前住んでいた場所の悪口を言う人がいる。

その会社や学校やその地域には、今でも勤めている人や、通っている人や、住んでいる人がいる。

その人たちの耳に、その悪口が聞こえたら、誰もがその人に良い印象を持つ人はいない。

ましてや昨今はネットなどで、今勤めている会社や通っている学校の悪口を言う人までいる。

生きていくということは、自分の応援者や協力者を一人でも多く作り、反対に、自分の足を引っ張る人を一人でも少なくするということなのに、それができないと、友人や協力者はどんどん少なくなり、最後は孤独になっていく。

「徳は孤ならず、必ず隣あり」

徳ある者は決して孤立することなく、助けてくれる人や協力者が必ず現れるものだ。

良き正直者でありたい。



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