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2016.4.7

エレベーターのドアの閉まる時間


ノートルダム清心学園理事長、渡辺和子氏の心に響く言葉より…

エレベーターというものは、乗り込んで目的の階のボタンを押しますと、いつかは自然に閉まるものです。

ところが、私たちは知らず知らずのうちに、自分の目的の回数を押しましたら、すぐ隣の指で「閉」と書いたボタンを押しています。

私も自分自身がそうしているのに気がつきまして、持ち前の好奇心から、あるとき、秒針のついたデジタルの時計を持ち込んで測ってみました。

乗り込んでから階数のボタンを押して秒針をじっと見ていますと、私どもの建物のエレベーターは閉まるまでに4秒かかりました。

病院のエレベーターなどは、もっとゆっくりかもしれません。

いずれにしても、私はどうしてこの4秒が待てないのだろうと考えさせられました。

どれほど忙しくても、4秒が待てないほどの仕事はめったにありません。

そして、少しウロウロしておりますと、4秒なんてすぐ経ってしまうわけです。

その日から一つの小さな決心をいたしまして、もちろん、ほかの方とご一緒の場合とか、ホテルのエレベーターとか、よその建物の場合は別ですが、私どもの大学の構内の、そのエレベーターに乗るときだけは閉まるまで待とうと思いました。

これが案外難しいのです。

乗り込んだら、すぐ閉めたくなる。

その閉めたいと思う自分に言い聞かせて、決心を守らせる。

私はその4秒というものを、イライラする気持ちを抑えて、自分を見つめる時間にしようと思いました。

4秒も待てない私でいたらば、自分が学長室にいても、話をしにくる人の話をゆっくり聞いてあげることができなくなってしまう、と。

「4秒」が問題ではないのです。

「4秒が待てない自分」が問題だと思いました。

ですから、4秒が待てない自分と闘って、待てる自分に変えていくこと。

それが、結局は、交通渋滞の中でイライラしないですむ自分と無関係ではないし、はかどらない仕事にイライラしたりセカセカしないですむ自分と無関係ではない、ということに気づきました。

エレベーターのドアが閉まる4秒を節約する。

そのためにかえって忙しい自分になっていないだろうか。

いつもセカセカし、いつもイライラし、いつもソワソワしている自分になっているとしたら、節約したはずの、浮かしたはずのその数秒は、自分の生活を豊かにしているどころか、むしろ貧しくしているのではないだろうか、ということに気づくようになりました。

一日のうちに本当に数秒でよいから、自分を取り戻す時間、見つめる時間、自分と闘う時間が必要なのではないだろうか、ということを考えています。

『現代の忘れもの (Nature of Nursing)』日本看護協会出版会


我々は普段、何秒という時間が待てなくてイライラすることは多い。

パソコンやスマホの立ち上がりが遅かった時、スーパーの早いと思って並んだレジが遅かった時、ゆっくり走っている車の後ろについてしまった時、等々。

教育においても、仕事においても、現代は、すぐに結果を求める傾向がある。

本当は、種をまいて、水や肥料をやって、芽が出て、花が咲く、というプロセスが必要なのに、花を咲かすという結果だけを早急に求めてしまう。

特に、自分は一切しゃべらずに、人の話をじっくり聞く、という傾聴の姿勢には忍耐がいる。

ちょっとした時間が待てなくて、すぐイライラしてしまう人は、この他人の話を聴くことが苦手だ。

デジタル社会の現代は、一分一秒を争うスピードの時代でもある。

だからこそ、待てない人がどんどん増えてしまう。

エレベーターのドアの閉まる時間を、イライラしないで待てる人でありたい。


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