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2016.1.10

ミネルバの梟(ふくろう)


横田尚哉氏の心に響く言葉より…

「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。唯一生き残るのは、変化に適合できる種たちである」

これは、チャールズ・ダーウィン氏の言葉です。

生物界では、生き残る=弱肉強食ではないということです。

その環境に適合できるように進化したものたちが、生き残っていくのです。

企業にとって、利益を上げることも大切ですが、それ以上に生き残ることも大切です。

生き残ることができないと、利益を上げ続けることはできません。

時代は常に変化しています。

経済の変化、消費者の変化、テクノロジーの変化です。

その変化が、これまでの手段を窮屈なものにし始めた時、進化の必要性が生まれるのです。

ポラロイドカメラは、1937年に科学者であったエドウィン・ハーバード・ランド氏が創立しました。

撮影に関するいろいろな製品を生み出していました。

その後、「撮影した写真をその場で見たい」という要求に応え、1947年にその技術を開発し、公表しました。

そして、1965年に発売を開始した「ポラロイド・スウィンガー・カメラ」が大ヒットし、インスタントカメラの代名詞となる地位を築きました。

まさに、時代の環境に適合することに成功したのです。

当時、写真フィルムの老舗メーカーの「コダック」はさぞ、脅威に感じたことでしょう。

ポラロイドは、方向性をもって積極的な進化をしたから、繁栄できたのだと言えます。

しかし、1988年には、デジタルカメラが商品として一般販売されるようになり、その市場と技術は一気に加速しました。

1995年には、デジタルカメラでヒット商品が生まれ、時代はデジタルカメラに移行しました。

そして、とうとうデジタルカメラ市場の波に乗りきれず、2001年にポラロイドは経営破綻したのです。

生物であれ、企業であれ、進化できたものが生存し続け、進化できなかったものが途絶えていくのです。

たとえ、その時代に一番強いものであったとしても、次の時代には退場せざるを得ないでしょう。

いくら頑張っても、この原理は、変わりません。

経済産業省の資料をもとに計算してみますと、企業の平均寿命は、10.7歳となりました。

設立して5年以上存在している企業は41.8%、10年以上だと26.1%、20年で11.1%、50年以上に至っては0.9%です。

つまり、設立時のビジネスモデルを進化させることのできなかった企業がどれほど多いかということです。

どれほど素晴らしいタイミングで設立したとしても、3年たてば環境も変化し始めるということです。

企業の経営者は、ビジネス環境が設立時から変わっていることに気づいたか、気づいた時に進化させることができたかです。

『第三世代の経営力』致知出版社


デジタルカメラを世界で最初に開発し、「フィルムの巨人」として君臨していたコダックが2012年に経営破綻した。

片や、富士フィルムは、売上の6割、利益の3分の2を占めていたカラーフィルムを捨て、医療や化粧品、情報など、「総合ヘルスケア企業」に生まれ変わり、2015年3月期の最終利益は46.4%増の1185億円と、過去最高となった。

2006年4月に開所した富士フィルム先進研究所には、一つのシンボルがある。

それが、「ミネルバ」という女神と梟(ふくろう)だ。

「哲学者ヘーゲルは『法の哲学』の序文で、『ミネルバの梟は黄昏(たそがれ)に飛び立つ』という有名な言葉を記している。

ローマ神話の女神ミネルバは、技術や戦の神であり、知性の擬人化と見なされた。

梟はこの女神の聖鳥である。

一つの文明、一つの時代が終わるとき、ミネルバは梟を飛ばした。

それまでの時代がどういう世界であったのか、どうして終わってしまったのか、梟の大きな目で見させて総括させたのだ。

そして、その時代はこういう時代だったから、次の時代はこういうふうに備えよう、と考えた」(『魂の経営』東洋経済新報社)より

進化しなければ、生物も企業も生き残れない。

進化することを恐れない人でありたい。


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