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2015.11.10

景色の中に美しいものを見つける


安泰寺住職、ネルケ無方氏の心に響く言葉より…

《春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷(すず)しかりけり》(道元)

「人生は春夏秋冬を経て、やがて終わりを迎える」

一見、仏教とはなんの関係もないように思えるこの句が、仏の教えを見事に表している。

春の訪れを知らせてくれる花。

夏にしか聞こえないホトトギスの声。

秋を感じさせてくれる名月。

そして身を切るほど寒い冬に降る真っ白な雪。

冬が過ぎて、再び春の花が咲く…。

春、夏、秋、冬にはそれぞれかけがえのない美しさがある。

その時、その時の美しさを手で掴むことはできない。

そして春の花は、やがて散る。

だからこそ、いまここに咲いている花の命が尊く感じられるのだろう。

春夏秋冬の移り変わりは、そのまま人間の真実を語っている。

この世に生まれ、成長し、大きな働きをする人間。

恋もすれば、酔いもする人間。

やがて力衰えていく人間。

死に向かっていく人間。

いまここに生きている私も、あなたも、いずれは死ぬ運命にあるが、死ねば新たな命も芽吹くであろう。

お釈迦さまが説いた「生老病死」も、人生の春夏秋冬としてそのまま受け入れてはいかがだろうか。

「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけるんだ」(ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ)

『ドイツ人禅僧の心に響く仏教の金言100』宝島社


お釈迦様は、人は苦を背負って生まれ、そして死への道を一歩一歩進んでいく、といった。

それが、四苦という「生・老・病・死」。

誰もが、この世に生をうけたからには、老いること、病にかかること、そして死ぬことからは逃れられない。

良寛禅師が71歳のとき、友人に送った有名な見舞状がある。

「災難に逢う時節には災難に逢(あ)うがよく候(そうろう) 死ぬる時節には死ぬがよく候 是(これ)はこれ災難をのがるる妙法にて候」

災難にあってしまったらジタバタせずに災難にあい、死ぬと決まったら粛々(しゅくしゅく)と死を受け入れるしかない。

これが災難をのがれるもっともよい方法だ、という。

まさに、この「四苦」も同じ。

いいときもあれば、悪い時もある。

それを淡々と受け入れていくこと。

そして、美しい景色を探すのではなく、景色の中に美しいものを見つける努力をすること。

どんなときもその中に、美しいもの、明るいこと、善きことを見つけられる人でありたい。


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