2015.10.6 |
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準備とリハーサル |
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内藤誼人氏の心に響く言葉より…
初対面のクライアントなどと会わなければならない場合、どうしてもあれこれと思い悩んでしまうものだ。
「自分にとってくみしやすい人物なのか」「失礼なことをいって、相手を不愉快にしないか」「自分の話を喜んで聞いてくれるだろうか」などと、心配しようとすればいくらでも心配のタネはつきない。
しかし、そういう心配事の多くは、単純に「準備」と「リハーサル」で75%もカットできるという。
これは、アメリカの心理学者ウォルターズ博士の推定によるものだ。
準備とは何か。
それは普段から発声の練習をしたり、体調を整えたり、説明すべき商品について調べたり、ジョークを仕入れたりすることだ。
やるべきことをきちんとやっていれば、それが自信につながるので心配のタネも消えていく。
ようするに、すべての準備をあらかじめやっておくのである。
リハーサルとは何か。
それは、原稿を何度も声に出して読むことであり、鏡の前に立ってプレゼンの練習をすることであり、家族や同僚に自分のしぐさを見せて、どこが悪いのかの批評をしてもらうことである。
「準備」がビジネスに直結しない行動を含むのに対して、「リハーサル」のほうは、より実践的な訓練であると思っておけばよいだろう。
経験が豊富な人ほど、何もやっていないように見えて、準備とリハーサル(彼らは頭の中で、だいたいのシナリオを考えるというリハーサルを頻繁に行っている)をやっていることを忘れてはならない。
中学や高校時代、一生懸命に勉強をしているにもかかわらず「いやぁ、昨日はテレビを見て寝ちゃったよ」とウソをつく人が必ずいたものだが、経験豊富な人もこれに似ている。
彼らは実力をひけらかすのがイヤなのが、後輩や同僚の前では「自分は特別に何もしていないよ」といいながら、陰ではいろいろな努力をしているものなのである。
バカ正直な人が「何もしていない」という彼らの言葉を真に受けて、準備とリハーサルをしないでビジネスをしようとするのは無謀きわまりない。
第2時世界大戦のときにイギリスを率いたチャーチル首相は、どんな場合にも必ず原稿を書き、それを頭の中に叩き込んでから演説したという。
しっかりと原稿の準備をし、それを鏡の前で読み上げるリハーサルを何度も行い、その上で国民の前に立って話をした。
彼はもともと心配症の人間だったが、徹底的な準備とリハーサルでそういう心配のタネを摘み取っていたのである。
では、準備とリハーサルによって心配事の75%がカットできるといっても、残りの25%はどうすれば消せるのだろうか。
同じくウォルターズ博士の著書によれば、そのうちの15%は深呼吸によって解消することができ、最後の10%はメンタル・コントロールで心配事を完全に打ち消せるという。
これで心配のタネが100%なくなるというわけだ。
『パワーマインド 自分を高め 交渉に勝つ 悪魔の心理術 (ソフトバンク文庫)』
元アップル・ジャパン社長、山元賢治氏はこう語っている。
「あの天才スティーブでも、実は膨大な練習をこなしてプレゼンに挑んでいたのです。
プレゼンの価値を誰よりも理解していた彼は、公開されていない秘密の場所で練習を繰り返しており、まさにマイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」の世界そのものだったと思われます。
スティーブは舞台俳優からその話し方を学んでいると言われていました。
俳優が驚く場面だったり、感動する場面でいかに話すかや、ドラマ性を生み出す話し方を勉強していたのかもしれません」(「これからの世界」で働く君たちへ・ダイヤモンド社)
プレゼンテーションの天才と言われたのが、スティーブ・ジョブズ。
そのジョブズでさえ、陰では練習をくり返していた。
スラスラとセリフをしゃべる俳優も、堂々としたスピーチをする政治家や企業のトップも、陰では相当な準備とリハーサルを重ねている。
「準備」と「リハーサル」を侮(あなど)ってはいけない。 |
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