2015.8.5 |
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食べられなかった美味しいお饅頭 |
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北川八郎氏の心に響く言葉より…
経営が順調になると、野心家や欲の深い人は、すぐに会社を拡大したがります。
しかし、拡大よりも充実させることが先でしょう。
どんどん拡大して2店目、3店目、あっという間に10店目となると、急成長のための人材不足と借金と社会の動向の変化に追いつけなくなります。
先見性のない拡大の先には、あっという間に会社が潰れてしまうという結果が待っているでしょう。
拡大することがほんとうに社会奉仕へとつながるのか、なぜ拡大が必要なのか、それは自分の野望に過ぎないのではないかと落ち着いて考えてみることです。
人材の充実と社内の安定、そして設備とサービスの改善を図ること。
コミュニケーションの充実と社内教育体制の充実、技術能力の育成、製造能力の向上など、あらゆることを先に充実させて安定することが大切なのです。
そして確実に信用が得られたときには、自然と少しずつ拡大していくでしょう。
人々の役に立つために支店を増やしていくのはかまいませんが、知名度と利益に目がくらみ、ただ拡大を先に目指した会社に未来はありません。
数年前、私が体験した出来事です。
まだ午前中にもかかわらず、いつも人が並んでいる人気の饅頭屋(まんじゅうや)さんが広島にありました。
ある日、思わず並んでいる方に聞いてみました。
「どうしてこんなにいつも並んでいるのですか?」
「ここのお店の饅頭は、あんがとても美味しくて、そのうえできたてを並べるので、すぐに行列ができて売り切れるのです」
おばあちゃんがった一人でつくっていると聞きました。
理由を知った翌日、ふたたび昼過ぎに行ってみると「今日は売り切れました」とすでに看板が下がっていました。
それから3年ほど経ってから、ふたたびお店の前を通ってみると、シャッターは閉まっていました。
「あれっ?」と思って通りがかりの人に聞いてみました。
「このお饅頭屋さん、閉じたのですか?」
「はい、2年ほど前に息子さんが帰ってこられたのですが、こんなに人が並ぶなら少ししかつくらないのはもったいないと、たくさんつくるようにして、どんどん売れて、その後すぐに繁華街に別の支店を出すなどしてお店を大きくしました。ところが、そのうちパッタリ売れなくなりまして、間もなく両方のお店がダメになったのです」
「ええ!?どうしてでしょうか。美味しくなくなったのですか?」
「どんどん売れるからと大量につくることで味が変わって、しかも支店用に冷凍商品も開発されたのです」
「あ〜ぁ、おばあちゃんは買っていただくという感謝の心を持っていたけど、息子さんは売りたい、儲けたい心に負けて、おばあちゃんの温かい心を饅頭から取り除いてしまったんでしょうね。冷凍商品となると、温かい心や食べてくれてありがとうという感謝の心がお饅頭からなくなったんですね」
「そうです。あっと言いう間に両方がダメになりましたから」
「売り切れごめん…って、続ける欲のコントロールが難しいですね」
「当たり前ですが、嘘のない感謝がつくる商品は人々から歓迎されますよ。大切なのは自分が何をしたいかではなく、人々が何を求めているかに目覚めることでしょう」
私が美味しい饅頭を食べられるチャンスは二度となくなりました。
『無敵の経営』サンマーク出版
どうにもこうにもツイてないような谷間の底にいるときにしなければならないことは、動き回らずじっとして、地道にコツコツと自分の実力を磨くこと、と言われる。
そんなとき、あせって、一発逆転を狙い、新しいことにチャレンジしたりすると、大失敗になることが多い。
釈迦も、キリストも、世界中を回ったわけではなく、生まれた町から何キロ四方を出たことがなかったという。
それなのに、2000年以上経った現在も脈々として伝わる、偉大な教えを残した。
つまり大事なことは、「広さではなく深さ」だということ。
世界中を駈けずり回らなくとも、深ければ、自然にまわりに伝わる。
我々はどうしても広さという、表面的な名声のような我欲を求めてしまいがちだ。
そうではなく…
自分を磨いて磨き抜き、真の深さを身につけたい。 |
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