2015.7.14 |
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教えてくれた大切なこと |
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『涙がとまらないすてきな物語』の中から、心に響く言葉より…
職場より、バスで帰っていた夕暮れのある日のこと。
私も、乗車しているお客さんもみんな、1日の疲れが出た表情でバスにゆられていた。
あるバス停で、部活帰りだろうか、乗っていた小学5年生くらいの少年がバスを降りようとした。
そのとき、少年は運転手さんに向かい、大きなハキハキとした声で、
「ありがとうございました」
とあいさつして降りた。
ボーっとバスにゆられていた私は、少々びっくりして乗降口に目を向けた。
「あぁ、あの子は礼儀正しいなぁ。偉いなぁ」と感心していた。
すると、少年はバスを降りてからもなお、くるりとこちらを向き、一段と大きな声で、
「ありがとうございました!」
と再度、深々と頭を下げたのだった。
正直驚いた。
バスのお客さんもみんな、少年を見た。
運転手さんも思わずニッコリし、
「ありがとう、暗いから気をつけて帰りぃよ」
と、マイクで返事をされた。
運転手さんは、すごく嬉しそうな表情だ。
その瞬間、疲れた表情のみんなの顔がニッコリ和いだ。
どんよりと疲れが充満していたバスの中が、一瞬で温かな気持ちに包まれたのが感じられた。
本当に数秒の出来事。
しかし私は、少年にすごく元気をもらったとともに、日頃忘れていた純粋さ、感謝の気持ちを思い知らされた。
「あいさつ」は大事だ、「感謝」は大事だと、何百回、何千回と聞かされてきた。
でも、「あいさつ」や「感謝」が、ここまでキラキラ輝くような力をもっていることを新鮮に実感できたのは、もしかしたら初めてだったかもしれない。
名も知らぬ少年が、とても大切なことを教えてくれた。
ほんとうにありがとう。
《熊本県 川崎梓(25歳)》
『涙がとまらないすてきな物語: あのときは、ありがとう――』河出書房新社
「挨拶」「感謝」あるいは「思いやり」という、人の心を温かくする言葉が大事なことは誰も知っている。
しかし、「誰もが知っている大切なこと」、であっても、それを実践できているかというと、耳が痛い人は多い。
知っていることと、それができる、ということは天と地ほど差がある。
誰もが知っている簡単なことであっても、それを実行し、継続できる人は少ないからだ。
本当に大切なことは、実はごくシンプル。
そのシンプルなことの実践によって、まわりに笑顔が広がり、自分も豊かになれる。
「挨拶」や「感謝」の実践者でありたい。 |
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