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2015.6.26

人は軽きがよし

五木寛之氏の心に響く言葉より…

十五世紀の宗教家に、蓮如(れんにょ)という人がいました。

宗門のなかでは親鸞とならぶほど大事にされているのですが、学者や評論家にはめっぽう評判がわるい。

その功罪はともかくとして、蓮如はおもしろいことを言う人でした。

「人は慣れると手ですることを足でするようになる」

などという言葉には、思わず笑ってしまいます。

私はサル年で、足が器用なものですから、つい足をつかう。

床に落ちている十円玉を足指でつまみあげるのは、今でも得意です。

しかし、蓮如の言葉を知ってから、なんとなく躊躇(ちゅうちょ)するところがある。

「人は軽(かろ)きがよき」

などという文句は、この国でそうざらに耳にすることのできる文句ではないと思います。

蓮如はまた、

「しゃべれ、しゃべれ」

と、人びとにすすめている。

地主も、武士も、農夫も、関係ない。

集まってどんどん議論せよ、と言うのです。

「しゃべらぬ者は、おそろしき」

とさえ言っている。

政治家も、学者も、作家も、俳優も、アスリートも、みんな軽くなった、と嘆く人がいます。

軽佻浮薄(けいちょうふはく)の世の中、などといわれながらも、実際には軽いことはマイナス評価なのです。

私は軽く年をとっていきたいと、かねがね考えてきました。

まあ、軽薄な老人、というのは、あまり格好のいいものではありません。

ときには、周囲をうんざりさせる存在かもしれない。

しかし、これから「団塊の世代」が雪崩(なだれ)をうって高齢化していくのです。

国民総高齢化の時代とは、この国がいまだに体験したことのない未知の世界です。

いま五十歳のビジネスマンは、あと五十年生きなければならないかもしれない。

その後半戦をどう生き抜いていくか。

長く生きるということは、一つの重圧でもあります。

経済と体力と、両方の面でさまざまな困難とむきあうことになる。

しかし、できれば沈鬱(ちんうつ)に老いていくことはさけたいと思う。

『好運の条件 生き抜くヒント! (新潮新書)』


「真剣と深刻とは違う。

悲劇の主人公のような生き方は真剣とは言わない。

真剣というのは、もっと軽いものである。

真剣になればなるほど軽くなれる。

『軽さ』の頭に「あ」をつければ「明るさ」になる。

真剣な人は「明るい人」である。

眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せて深刻に生きている人は、実は一番真剣に生きていないのではないか」

(感奮語録・行徳哲男)より

軽く、明るく生きている人は、実は真剣に生きている。

眉間に皺を寄せ、深刻そうに生きている人は、嘘っぽい。

困難であればあるほど、難しければ難しいほど…

かろやかに、明るく、そして、「軽く」生きてゆきたい。



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