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2015.5.25

しなやかな強さを身につける

メンタルトレーナー、金森秀晃氏の心に響く言葉より…

想像してもらいたい。

「どんな刺激にも耐えうる防弾壁」と「どんな刺激も吸収し、エネルギーに変える発電ボード」、どちらが本当の意味で「強い」だろうか。

現在の日本では、前者的な強さを求められるケースが少なくない。

「我慢強いこと」が美徳とされる文化のせいだろうか。

ただ、人間は誰しもそんなに強くない。

その上、どんな刺激にもたえうる防弾壁であったとしても、老朽化してストレスを溜めこんだらある日突然崩壊するかもしれない。

だから、今こそ“しなやかさ”が必要なのだ。

一方で、後者はどうだろう。

後者の強さのポイントは、発電ボードそのものの強さではなく、刺激を吸収しエネルギーに変える“しなやかさ”にある。

前者が刺激で身を亡ぼしていくのに対して、後者は刺激をプラスに転用しエネルギーに変えていくのである。

実はこれが、「レジリエンス」の本当の力なのだ。

レジリエンスは一般に「復元力」「回復力」などと訳される。

特に最近では、「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」「逆境をはね返す力」などという意味で使われるケースが増えてきている。

普段、企業のトップや管理者に対するメンタルトレーニングや研修をやっていると、一部上場企業の役員の方々、業界のトップセールスの方々、日本代表のプロサッカー選手、プロ格闘家など、様々な領域で「一流」の活躍をしている方々と接する機会をいただく。

一方で、心理カウンセラーとして、仕事を辞めたくなった方、あるいは人生すらもやめたくなってしまった方と接することもある。

両者を比較すると、実は、家柄、能力、容姿にそんなに差はない。

また、その人に降りかかる困難や逆境も時期は違えど平等だとも感じている。

「そんなことない」という声も聞こえてきそうだが、延べ1万5000人以上のカウンセリングを通じて私が感じた実体験としての話である。

では、両者の間の違いはどのようなところにあるのか。

実は、たった一つ、決定的に違うことがある。

それは、「困難や失敗の捉え方」である。

前者は「困難」や「失敗」を成長の糧として解釈し、能力として蓄積していきながら、行動を起こし続け、さらなる『失敗』や『逆境』を求めて、その過程をどこかで楽しんでいる。

後者は、「失敗」や「変化」を恐れる。

変化していくことを極力避け、傷つくことなく、できれば平穏に生きたいという気持ちが強い方が多い。

ただ、現実的な話をすると、環境は絶えず変化しているのに、自分だけが変化しないというのは初めから無理な話なのだ。

結果、皮肉なことに、変化を避ける姿勢そのものが困難や逆境を招き寄せることになる。

しかも、ストレスに慣れていないので、その困難や逆境がとてつもなく障害に感じてしまう。

ただ、「『困難や失敗の捉え方』を変えるといっても、困難や失敗が起こってしまったときに感じてしまう『絶望感』はどうしようもないじゃないか」とお思いの方もいるかもしれない。

しかし、実は社会的に活躍している方々もそうした「絶望感」は私たちと同じように感じているのだ。

でも、そこからが違う。

彼らは絶望している自分を客観視して俯瞰(ふかん)で見ることができる。

いや、できるようにした、と言ってもいい。

『凹んだ数だけ強くなれる29の法則』SOGO HOREI


「風疎竹(かぜそちく)に来る 風過ぎて竹に声を留(とど)めず」

という菜根譚(さいこんたん)の中の言葉がある。

竹林に一陣の風が吹くと、竹がザワザワと音をたてる。

しかし、その風が過ぎてしまえば、竹林は何事もなかったように静まりかえる。

一流の人間は、何か事が起きたとき、一時(いっとき)は心が動くが、それが終わってしまえば、何事もなかったように穏やかに過ごすことができる。

いつまでもこだわらない、気にしすぎないで淡々と過ごす、ということ。

自分を客観視して俯瞰して見ることができる人だ。

「その人に降りかかる困難や逆境も時期は違えど、すべての人が平等」

変化をどう捉えるかで、その対応は変わってくる。

変化を避(さ)けて逃げまくるのか、変化に対しそれを楽しみ、しなやかに、柳に風と受け流すのか。

しかし、変化は避けて逃げれば逃げるほど、追いかけてくる。

「しなやかさ」とは、「柳に風」のように、風に逆らわず、さらりと受け流すことができること。

しなやかな強さを身につけたい。



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