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2015.5.3

美点凝視

社会教育家、田中真澄氏の心に響く言葉より…

普段、私たちは「言葉」という概念を「話し言葉」「聞き言葉」「書き言葉」として受け止めています。

しかし実際の人と人とのコミュニケーションでは、こうした言葉の他に「表情」「動作」「姿勢」「汗」「涙」といった振りの動作を伴いながら自分の気持ちを相手に伝える手段があります。

この振りも広い意味での言葉であると言えます。

そこで私は振りの動作を「体語」と表現し、この体語と従来からのいわゆる言語とあわせたものを「ことば」と表現しているのです。

「ことば」をそのように理解できると人との対話法の幅が広がり、コミュニケーションを行ううえで、相手への感情移入をぐんと高めることができます。

京セラの創業者・稲盛和夫氏は「大事なことは、最初の段階では理性で考え、実際の対応においては、情をつけることだ」と語っていますが、これは対話のうえでも言えることです。

同じ話でも、理性的に淡々と語る場合と、話に情熱を注ぎ熱情的に語る場合とは、受け手の反応が全然違います。

後者の場合は、聞き手の感情も高まり、やる気に満ちてくるものです。

私の講演は熱誠講演と言われるように、最初から最後まで情熱を込めて話し、吹き出てくる汗をぬぐいながら、また時には、背広を脱いで、汗までびっしょりのワイシャツ姿を聴講者にさらしながら、一所懸命の姿で話すことにしています。

この必死の姿が聴講者の心を動かすのだと思います。

「生き様(ざま)が人を動かす」と言いますが、この生き様とは物事に真剣に打ち込む姿勢を指しているのです。

人間は何事でも、目の前の仕事に命懸けと思えるほど情熱を込めて打ち込んでいると、それが人の心を打ち、人を動かすことにつながるのです。

よく講演の中で引用する社会教育家の後藤静香氏の詩「本気」の中の一節「本気でしていると、誰かが助けてくれる」は、本当にそうだと実感します。

以上のことからも分かるように、「体語」は、いわゆる言葉よりも影響力は大きいと言えるでしょう。

しかしながら、どんなに体語を磨いても、話す・書くの言語がより良い言葉でなければ、人を前向きにすることはできません。

そのより良い言葉とは、相手を賞賛し、祝福し、感謝し、激励するといった肯定語のことです。

人は肯定語を耳にすれば心が前向きになり、明るくなっていきます。

自分に向けられた肯定語は何度聞いても聞き飽きることはありません。

これらの体語と肯定語の活用に加えて、常に心がけておきたいことは、「話3分(ぶ)に聴7分」と言われているように、人との対話では、相手の話を聞くことに70%の時間配分を、自分が話すのは30%の時間に留めておくぐらいの気持ちでいると、相手の気持ちが好意的になり、会話が弾むことになります。

それほど、本来、人は話すことが聴くことよりも好きなのです。

ですから、聞き上手と言われる人のほうが、話し上手な人よりも好かれるのです。

このことが分かっていると、できるだけ相手に話す時間を与えるためにも、自分が話す時は、短い時間で肯定語中心にするのです。

ところが多くの場合、この逆をやっています。

相手の美点を讃えることが下手なのです。

それは普段、相手の美点をよく見ていないで、欠点ばかり見ているために、相手を褒めることができないのです。

「美点凝視(びてんぎょうし)」という言葉は、もっと相手の美点に注意を注ぎ、それを言葉にせよと言っているのです。

短い時間の話はそれにつきます。

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人と相対したとき、「美点」から先に見るクセがあるのか、「欠点」から先に見るクセがあるのかで、人間関係は大きく変わってくる。

「美点」から先に見ることができる人は、人から好かれるほめ上手で魅力的な人になるが、「欠点」から見る人は、不平不満の多い皮肉屋で、人から嫌われるイヤな奴になる。

人間関係を素晴らしいものとするには…

「話3分(ぶ)に聴7分」と「体語」と「美点凝視」を身につけること。

美点凝視の人でありたい。



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